2023年7月17日月曜日

原発汚染水放出 宮城の漁民も許していない 「説明会一度もない」(しんぶん赤旗)

 宮城県三陸金華山沖漁場「世界三大漁場」の一つです。
 しんぶん赤旗日曜版7月16日号に、岸田政権が夏ごろまでに福島第1原発の「アルプス処理水」の海洋放出をはじめようとしていることに対する、宮城県の漁業関係者の声が載りました。
 ワカメとカキを養殖している阿部泰正さん(66)は「震災、原発事故を何とか乗りこえてきた先に、今度は処理水です。風評被害は必ず起きる。もうたくさんです。賠償、補償に関して、われわれ漁業者を集めた説明会も回も関かれていない」と怒りを口にしました。
 水産物加工などを手がける株式会社「布施商店」社長の布施太一さん(39)は「(風評被害は)出ると思うし、もう出ている」水産加工秦者のいちぱん怖いところは資金繰りです。売りが立たなくなると、お金が回らなくなる。それが街全体で起き、会社がつぶれていくことが怖い」と指摘します。
 カキ養殖している江剌みゆきさん(81)は、「海はつながっています。福島だけの問題ではありません。近隣の漁業者の声もしっかり聞いてください。海に流すことだけは絶対に反対です。東電は(汚染水対策でも補償でも)お金のかかることはしたくないのでしょうか。決まったことだからというのでなく、海洋放出以外の方法を真剣に考えてほしい」とかたります

 共産党宮城県議団長三浦一敏さんは「『処理水を海に流すことは根本的な問題解決になりません。まず増え続ける汚染水の発生を止めるため、あらゆる手だてをとるべきです」と述べ、共産党志位委員長6日の記者会見で「一番大事なのは、政府と束電が『関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない』と約束していることであり、理解」を得られていないのは明白なの放出は中止すべきである」と訴えるとともに、「広域遮氷壁」を作るなどの「汚染氷を止めるための真剣な取り組みが必要だと力説しました。
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原発汚染水放出 宮城の漁民も許していない
          「説明会一度もない」 「すでに風評被害
                   しんぶん赤旗日曜版 2023年7月16日号
 「世界三大漁場」の一つ、三陸金華山沖漁場が目の前に広がり、全国屈指の水産県である宮城県。岸田政権が夏ごろまでに東京電力福島第1原発の「アルプス処理水」の海洋放出をはじめようとしていることに、同県石巻市の漁業者、水産関連業者から「現場の声を聞け」と、怒りや懸念の声があがっています。           中川亮記者

アルプス処理水 福島第1原発では、事故で溶けた核燃料に冷却水をかけ続け、地
水や雨も流れ込むため放射能は多核種除去設備(ALPS=アルプス)で、国の放
基準値未満に低減できるとされますが、トリチウムは除去できませんしかも「処
水」の66がセシウムなどの放射性物質の規制基準を超えています(3月末)。
と東電は、高濃度のトリチウムを含む汚染水を、基準を下回る濃度に薄めて海に放
する方針です。

 ワカメとカキを養殖している県漁協表浜支所運営委員長の阿部泰正さん(66)は「漁師ですから反対です」ときっぱり言いきります。「震災、原発事故を何とか乗りこえてきた先に、今度は処理水です。風評被害は必ず起きる。もうたくさんです。賠償、補償に関して、われわれ漁業者を集めた説明会も回も関かれていない」と怒りを口にしました。
 県漁協は海洋放出に一貫して反対の立場を示し、宮城県議会は4日、海洋放出に反対する意見書を全会一致で可決しました。
 定置網漁をしている平塚仁太郎さん(81)は「水温が上がり、海に異変が起きている。サケはほとんどとれない。補償なんかいらないから、海に流さないでほしい」と訴えました。

水産加工業者も
 海洋放出への懸念が国内外で高まる中、水産物加工などを手がける株式会社「布施商店」社長の布施太一さん(39)は「(風評被害は)出ると思うし、もう出ている」と指摘します。
 東京の商社に勤めていた布施さん。5年前に地元石巻に戻り、父・三郎さんと業績回復に努めてきました。「5年たってようやく安定してきた。(海洋放出で)僕ら水産加工秦者のいちぱん怖いところは資金繰りです。売りが立たなくなると、お金が回らなくなる。それが街全体で起き、会社がつぶれていくことが怖い

増え続ける汚染水止める策を
             日本共産党宮城県議団長 三浦一敏さん
 漁業者、水産関連業者は震災や原発事故、新型コロナと大きな困難に直面し、事業を立て直すために今も必死で頑張っています。場の声を聞かずに一方的に流すことは許されません。
「処理水」を海に流すことは根本的な問題解決になりません。まず増え続ける汚染水の発生を止めるため、あらゆる手だてをとるべきです。海洋放出を中止させ、復興を前に進めるために力を尽くします。

近隣県の声もしっかり聞いて
      元宮城県漁協女性部連絡協議会会長、カキ養殖 江剌みゆきさん(81)
 海はつながっています。福島だけの問題ではありません。近隣の漁業者の声もしっかり聞いてください。海に流すことだけは絶対に反対です。「安全」をいったい誰が保証できるでしょうか。水産物が売れなくなって価格が下がることが十分に考えられます。
 震災では自宅も船、漁具も全て流されました。船を買い直し、借金の返済もようやく終わりました。最近は、カキ養殖に使うロープをはじめとした資材の値段が上がり、大変な状況は続いています。
 東電は(汚染水対策でも補償でも)お金のかかることはしたくないのでしょうか。「決まったことだから」というのでなく、海洋放出以外の方法を真剣に考えてほしい

中止を求める 一番大事なのは「関係者との約束」 日本共産党 志位委員長

 東京電力福島第1原発事故に伴い発生している「アルプス処理水」の海洋放出について、岸田文雄首相は、夏ごろまでとしていた方針に「変更はない」(7日)と、あくまで強行しようとしています。
 日本共産党の志位和央委員長は記者会見(6日)で「一番大事なのは、政府と束電が『関係者の理解なしには、いかなる処分も行わない』と約束していることであり、この約束に背く行動をとらないことだ」とのべ、放出中止を訴えました。
 全国漁業協同組合連合会は6月22日に海洋放出反対の決議をあげ、福島県漁連は30日、「反対であることはいささかも変わらない」とする4度目の特別決議を採択しました。「関係者の理解」を得られていないのは明白です。
 海洋放出をめぐり国際原子刀機関(IAEA)は包括報告書(4日)で「国際的な安全基準に合致する」などとしたものの、「海洋放出の方針を推奨するものでも、支持するものでもない」と留保をつけました。
 志位氏は「IAEAを使って放出を合理化することはできない。あくまで関係者との合意を大事にすべきだ」と強調しました。
 原子炉建屋周囲の土壌を凍らせて地下水流入を止める「凍土壁」では効果が上がらず汚染水が増え続けています。専門家グループは長期対策として「広域遮氷壁」などを提案していますが、政府・東電は安上がりの海洋放出に固執しています。

 志位氏は専門家の提案は道理があるとのべ、汚染氷を止めるための真剣な取り組みが必要だと力説しました。