2023年7月31日月曜日

川内原発「運転延長」へ地ならし着々 反対派は県民投票求める

 九電川内原発の40年超運転延長のための地元同意形成に向け、鹿児島県が“地ならし”を進めています。運転延長の可否は原子力規制委が審査中ですが、県の設置した専門委員会分科会は、九電が実施した特別点検を「適正」と発表しました。

 審議の過程では九電が行った特別点検は調査すべき全対象を網羅していない」とい厳しい意見も目立ちましたが、結局は多数決で「適正」であると押し切られました。要するに「60年間運転しても安全」の具体的根拠が示されないまま、「適正」という結論だけが先行したのでした。
 塩田康一知事は28九電を訪れ、川内原発の運転延長に関して安全性の確保のために厳正に対応するよう要請したものの、知事選で公約した延長の賛否を問う県民投票見送りました。
 一方市民団体の署名活動は6月1日に始まり、1カ月で約1万7千人分を集めました。7月末までに有効署名が約2万7千人分を超えれば、延長の可否について県民投票を行う条例案が提出されます
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川内原発「延長」へ地ならし着々 地元同意目指す鹿児島県 反対派は県民投票求める
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 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の運転延長のための地元同意形成に向け、同県が“地ならし”を進めている。延長の可否は国の原子力規制委員会が審査中だが、県の設置した専門委員会分科会は、九電が延長を見据えて実施した特別点検を「適正」と発表。塩田康一知事は知事選で「必要に応じて実施する」と公約した延長の賛否を問う県民投票も見送った。一方、市民団体は県民投票の条例制定を求める署名集めに取り組んでおり、知事の思惑通りに県民の理解が得られるかは不透明だ。

「疲労による割れなどが問題になる可能性は低い」「劣化や腐食がないことを継続的に確認すること」…。6月14日夜、薩摩川内市で県が開いた運転延長の安全性に関する住民説明会。分科会の座長らは「一定の安全性を確認した」とする検証結果や、それを踏まえた九電への注文内容を報告した。「検証した割に当たり前の内容ばかり。『安全』を強調しすぎてはいないか」。傍聴した70代男性は疑問を口にした
 川内原発1、2号機は2024~25年、福島第1原発事故後に運転期限として設定された40年の節目を迎える。以降も運転するには、規制委の審査をクリアしなければならない。九電は昨年10月に審査を申請した。規制委は今秋にも結論を出すとみられている。

 県の専門委は前知事が設置。塩田知事は運転延長にテーマを絞った分科会を置き、専門家らが昨年1月から12回議論し、九電から特別点検の内容や、経年劣化の評価について聞き取りを重ねた。塩田知事は原発に批判的な識者も委員に選び、会合では「特別点検は調査すべき全対象を網羅していない」といった九電への厳しい意見も目立った。
 だが、分科会は4月、特別点検を「適正」とする報告書をまとめ、「議論は不十分」とする一部委員の意見を押し切る形で検証を打ち切った。これを受け、塩田知事は県民投票を実施しない意向を表明。延長を事実上、容認したとの受け止めが広がった。
 塩田知事はさらに、規制委と九電に出す要請書に反映させる意見を県民から募集。99件が集まり、規制委の事務局になっている原子力規制庁の片山啓長官に26日、手渡した。「数えてはいないが、不安の声が多かった」。21日の記者会見でそう明かしていた塩田知事は、片山氏に「厳格な審査を行い、県民への分かりやすい説明に努めてほしい」と要請。終了後の取材に「要請をしっかりと受け止めていただいた」と語ったが、県民の声を伝える“セレモニー”を踏むことで、市や議会の同意を円滑に取り付けたい意図が透けた。28日には九州電力の池辺和弘社長にも要請書を渡す。
 市民団体の署名活動は6月1日に始まり、1カ月で約1万7千人分を集めた。7月末までに有効署名が約2万7千人分を超えれば、県議会に条例案が提出される。市民団体の向原祥隆事務局長(66)は「延長を懸念する県民は多いと実感している。知事は県民の立場に立ってほしい」と訴えた。(内田完爾、高田佳典)