女川原発2号機の再稼働を巡り、女川町議会原発対策特別委員会は19日、再稼働を求める陳情を7対3の賛成多数で採択しました(反対の請願は同じく7対3で否決)。
町議会には今年2月以降、再稼働に賛成する陳情4件と反対の請願2件が提出され、特別委に付託されていました。
町民の声を併せて紹介します。
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女川再稼働、町議会「同意」 特別委が賛成陳情採択
河北新報 2020年08月20日
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、宮城県石巻市)の再稼働を巡り、女川町議会原発対策特別委員会は19日、再稼働を求める陳情を賛成多数で採択した。女川原発の立地自治体や議会の手続きで再稼働に向けて「同意」が示されたのは初めて。
特別委は議長を除く全議員11人で構成。9月3日開会予定の定例会の本会議でも賛成の陳情を採択し、町議会として正式に再稼働への同意を表すことが濃厚になった。須田善明町長は取材に「(原発と共存してきた)町の歩みが反映されたのだろう。本会議での答えをしっかり受け止めて判断したい」と話した。
町議会の意思表明は、賛否双方の団体から提出された陳情と請願計2件を審議中の石巻市議会や亀山紘市長、県議会や最終的に可否を決める村井嘉浩知事の判断にも影響を与えるとみられる。
町議会には今年2月以降、再稼働に賛成する陳情4件と反対の請願2件が提出され、特別委に付託された。19日は委員長以外の10人で起立採決し、賛成の陳情にはそれぞれ7人が賛成、3人が反対した。反対の請願はいずれも賛成3人、反対7人で不採択だった。
採決前の討論では、再稼働の反対派委員が「新規制基準に合格しても絶対的に安全ではない」と主張。賛成派委員は「原発は地元経済の維持発展に不可欠」などと述べた。
特別委は3月に陳情と請願の審議を開始。重大事故時の広域避難計画について内閣府から意見を聴くなど議論を進めた。宮元潔委員長は取材に「立地自治体だからこそ早く意思を示すことで(議論の)流れを作りたかった」と語った。
東北電は「再稼働を求める地元の声をしっかりと受け止め、引き続き安全性向上に全力で取り組む」との談話を出した。
2号機は2月、原子力規制委員会の審査に合格した。東北電は安全対策工事を終える2022年度以降の再稼働を目指している。
女川再稼働、町議会「同意」 リスクと恩恵のはざまで揺れる港町
河北新報 2020年08月20日
宮城県女川町議会の原発対策特別委員会が19日、東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働を事実上、容認した。一方で、いまだ再稼働に不安を抱く住民の声もくすぶる。1984年の1号機稼働から36年、原発と共存してきた港町。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故を経て、リスクと恩恵のはざまで揺れている。
「丁寧に議論する努力をしていない。残念だ」。再稼働に反対する請願を提出していた前町議の高野博さん(77)が、唇をかむ。
女川町はほぼ全域が原発から10キロ圏に入り、主な避難ルートは国道398号に絞られる。内閣府などが策定した広域避難計画は重大事故時、原発5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)の住民をいち早く避難させる一方、5~30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)の住民にはいったん、屋内退避を求める。
原発が目と鼻の先にある小屋取地区の男性(70)は「地区は高齢者が多く、事故時の避難に不安がある。再稼働するにしても、訓練を重ねて避難計画の改善を続けてほしい」と複雑な胸の内を明かす。高野さんは「(計画は)『多少被ばくするのは仕方がない』という姿勢だ。根本から直す必要がある」と指摘する。
震災から9年5カ月。町人口は約6300で震災前より4割近く減った。復興需要がピークを過ぎる中、再び原発関連の収入を頼みの綱とする商工関係者は少なくない。
原発から日用品や食事などの発注を受ける女川商工事業協同組合の木村征一理事長は「町議会の議論が大きく前進し、ほっとした。活発な取引を取り戻したい」と期待する。女川町商工会の高橋正典会長も「東北電が町の経済を支えている部分もある。多岐にわたり工事を進め、安全性も信頼している」と語る。
再稼働を巡る論戦は今後、石巻市議会や宮城県議会でも本格化する。
避難計画に実効性がないとして、再稼働の実質的な条件となる「地元同意」の差し止めを求めた仮処分で、仙台高裁に即時抗告している石巻市の原伸雄さん(78)は「再稼働に向けた検討は不十分だ。これで終わりにはさせられない」と徹底した議論の必要性を訴える。