女川原発2号機の再稼働を巡り、宮城県は地元住民らを対象とした説明会を1日に女川町の女川高等学園で、2日には石巻市牡鹿中で開きました。
女川町では177人が参加し、「豪雨災害で孤立した地域もある。計画通りに避難できるのか」、5~30キロ圏は5キロ圏の住民が避難後に移動を開始することに「より早く圏外に逃げたいというのが人間の心理だ」など疑問の声が出されました。
石巻市牡では44人が参加し、「移動手段のバスや運転手を本当に確保できるのか」、「机上で作った計画にみえる」といった対策の不十分さを指摘する声が相次ぎました。
宮城県は原発から30キロ圏内の住民避難に最大67時間かかるという試算をしています。そうであれば住民が相当の被曝をすることを前提にした避難計画ということになります。
説明会は19日まで断続的に6カ所で開かれます。
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原子力規制庁、安全「適合」を強調 女川原発2号機再稼働巡り住民説明会
河北新報 2020年8月2日
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働を巡り、宮城県は1日、地元住民らを対象とした説明会を女川町で始めた。再稼働に事実上必要な知事と立地市町長による同意手続きの一環。2号機の新規制基準への適合を認めた原子力規制委員会の審査や重大事故時の広域避難計画について、国や東北電が説明した。
初の住民説明会は県支援学校女川高等学園が会場で、原発30キロ圏内の79人を含む計177人が参加した。
規制委事務局の原子力規制庁は、正式合格した今年2月まで6年余りを要した審査結果を提示。東北電が基準津波(最大想定の津波23.1メートル)を考慮した防潮堤整備などの安全対策を評価した。
重大事故対応では、外部電源の喪失時にガスタービン発電機を積んだ車両を活用する例を挙げ、「設備も整え(基準に)適合している」と強調した。
東北電の増子次郎副社長は2022年度の完了を目指す安全対策工事に言及。「再稼働には地域の理解が重要。安全性の向上に引き続き取り組む」と語った。
内閣府の担当者は、30キロ圏内の住民約20万人を対象にした避難計画を紹介。事故直後、5~30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)では、まず屋内退避し、事態の悪化に応じて段階的に避難する行動を求めた。
参加者からは「豪雨災害で孤立した地域もある。計画通りに避難できるのか」「より早く(圏外に逃げたい)というのが人間の心理だ」など疑問の声も出た。
村井嘉浩知事は終了後、「再稼働ありきではない」と述べた上で「住民の声を重く受け止める。県として対策を考え、国に物申すことも大切だ」と語った。
須田善明女川町長は「(再稼働に向けた)経緯や課題への取り組みが示された。(賛成反対の)立場があると思うが理解が図られる機会になった」と話した。
説明会は2~19日、30キロ圏内6カ所でも開かれる。
「水害のたび道路浸水」避難計画に批判集中 女川原発再稼働説明会
河北新報 2020年8月3日
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、宮城県石巻市)の再稼働を巡り、宮城県は2日、地元住民らを対象にした第2回説明会を石巻市牡鹿中で開いた。事故発生後、原発5キロ圏内の予防的防護措置区域(PAZ)と同様に即時避難が求められる「準PAZ」での開催。参加者からは、広域避難計画の実効性に対して批判が集中した。
募集定員200人に対し、原発30キロ圏内の15人を含む計44人が参加。計画を策定した内閣府が、石巻市の牡鹿半島南部や女川、石巻両市町の離島からは陸路や海路の位置関係上、原発に近づく形で避難せざるを得ないことに理解を求めた。
半島南西部の行政区長を務める大沢俊雄さん(69)は、重大事故と台風などが重なる複合災害時の危険性を訴える。「水害のたびに道路が浸水する。(災害の影響を受けない)避難道路の整備を早急に進めてほしい」と要望した。
会場からは「移動手段のバスや運転手を本当に確保できるのか」「机上で作った計画にみえる」といった対策の不十分さを指摘する声が相次いだ。内閣府の担当者は「準PAZは地形の複雑さに加え、経路設定の難しさもある。海路や空路も選択できるように態勢を整えたい」と、改善策を検討する考えを示した。
東日本大震災で津波が襲った港は、がれきで埋め尽くされた。準PAZに住む女性は終了後、「どうやって船を出すのか。震災の教訓が忘れ去られている」と憤った。
説明会に初めて出席した石巻市の亀山紘市長は「避難計画を不安に思う市民が多かった。訓練を通して(国や県とともに)実効性を高めたい」と述べた。
次回説明会は8日、同市総合体育館で開かれる。