2019年2月21日木曜日

原発事故避難 国にも5度目の賠償命令 横浜地裁

 福島原発事故の影響で福島県から神奈川県などに避難している60世帯175人が、国と東電にふるさとでの生活を奪われた慰謝料など約54億円を求めた訴訟の判決で、横浜地裁は20日、国と東電の責任を認め、152人に対する約42千万円の支払いを命じまし(参考までに一人当たりの平均賠償額は276万円となります)。
 全国の集団訴訟で8例目の判決で、国が被告となった6件のうち責任を認めたのは5件目です
 注目された自主避難者への賠償では、原告の状況に応じて慰謝料を支払うのが妥当だとしました。
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原発事故避難 国に5度目賠償命令 横浜地裁 東電の責任も認定
東京新聞 2019年2月20日
 東京電力福島第一原発事故の影響で福島県から神奈川県などに避難している六十世帯百七十五人が、国と東電にふるさとでの生活を奪われた慰謝料など約五十四億円を求めた訴訟の判決で、横浜地裁(中平健裁判長)は二十日、両者の責任を認め、百五十二人に対する約四億二千万円の支払いを命じた
 全国で約三十の同種の集団訴訟で八例目の判決。国が被告となった六件のうち責任を認めたのは五件目。
 
 訴訟では、原発事故を引き起こした巨大津波を国と東電が予見して対策を取ることが可能だったかや、避難区域外からの自主避難者への賠償が妥当かどうかが主な争点だった。
 中平裁判長は判決理由で、二〇〇九年の報告で敷地高を超える津波の到来を予見できたと指摘。非常電源設備を移設していれば、1号機の水素爆発は回避できたとし、「国はただちに行政上の手続きに着手すべきで、遅くとも一〇年には実現が可能だった」とした。
 自主避難については、原告の状況に応じて慰謝料を支払うのが妥当だとした。
 
 閉廷後、村田弘原告団長は「国の責任を認める司法判断が下されたのは大きい。賠償も大筋で認められ、全体では八分咲きという印象。事故は国と東電の人災。ただちに避難者の救済に責任を持って取り組んでほしい」と述べた。原告団事務局長の黒沢知弘弁護士は「今までの賠償額より前進しており、実質的な勝訴。国の責任が五回も断罪された。これ以上争うなと言いたい」と話した。
 
 <東京電力ホールディングスのコメント>事故により、福島県民の皆さまをはじめ、広く社会の皆さまに大変なご迷惑とご心配をお掛けしていることを改めて心からおわび申し上げる。横浜地裁の判決については、内容を精査し、対応を検討していく。
 
 <原子力規制庁のコメント>国の主張について裁判所の十分な理解が得られなかったと考えている。原子力規制庁としては引き続き適切な規制を行っていきたい。
 
原発避難訴訟 各地の判決
裁判所
判決日
責任の有無
賠償命令(100万
円未満切)
原告数
(一人当り)
東電
前橋地裁
2017/3/17
3800万円
62人
61
万円
千葉地裁
2017/9/22
×
3億7500万円
42人
893
万円
福島地裁
2017/10/10
4億9700万円
290人
171
万円
東京地裁
2018/2/ 7
 
10億9500万円
318人
344
万円
京都地裁
2018/3/15
1億1000万円
110人
100
万円
東京地裁
2018/3/16
6000万円
42人
142
万円
福島いわき支部
2018/3/22
 
6億1200万円
213人
287
万円
         ※責任欄 〇⇒認める ×⇒認めず 空欄⇒被告に含めず
          (一人当たり)の欄は当事務局が勝手に追加しました
 
原発避難者訴訟 区域外避難を認められ評価も 今後に不安
毎日新聞 2019年2月20日
 東京電力福島第1原発事故を巡る避難者の集団訴訟で、国や東電の責任を指摘した20日の横浜地裁判決。長引く避難生活、見通せない将来——。事故から8年近くなる今も安定しない生活を続ける原告らは、判決を好意的に評価する一方、今後への不安も口にした。
 
 地裁前には100人以上の支援者らが集まり、スピーチなどをしながら判決を待った。午前10時半ごろ、原告弁護団が「勝訴 国の責任5度断罪! 賠償水準大きく前進」などと書かれた幕を掲げると、歓声と拍手が起こった。
 原告の40代男性は、避難指示区域外の福島県いわき市から横浜市磯子区に、子供3人を含む家族5人で自主避難した。判決で区域外避難も認められ、「子供の健康を第一に考え、避難した。報われた」と胸をなで下ろした。
 
 他の原告たちも国と東電の責任を認めた判決を評価したが、福島県富岡町から神奈川県葉山町に避難している小畑茂さん(59)は「東電と国がきちんと謝罪をしてくれるのか。津波への対策をしてくれれば、自分の家を失わずに済んだ」と複雑な心境も吐露した。富岡町から埼玉県に避難している70代男性は「国と東電はすべての被害者にきちんと賠償してほしいし、もっと早く判決を出してほしかった。原発がある限り同じような事故は繰り返されるはずなので、原発をなくすべきだ」と訴えた。【石塚淳子、中村紬葵】