2019年2月17日日曜日

女川原発避難計画 実効性は依然曖昧なまま と

 河北新報が、先月末に行われた女川原発避難訓練の結果に基づいて、「女川原発避難計画/実効性は依然曖昧なままだ」とする社説を出しました。
 避難訓練はこれまで年1回のペースで行われてきたようですが、「相変わらず課題が多く、実効性に数々の疑問符が付く」としています。
 
 今回初めて行われた「スクリーニング」⇒「除染」では、参加者から「時間が掛かり過ぎる」と指摘されたようです。宮城県では13カ所で行う予定ということですが、他所の例では、スクリーニングが終了するまでに「数十時間」が掛かるという計算が出ていました。
 バス調達の問題もそうですが、避難計画は時間的要素を含めるのは勿論、一つひとつ綿密に詰めておくことが不可欠です。
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社説 女川原発避難計画/実効性は依然曖昧なままだ
河北新報 2019年02月16日
 東京電力福島第1原発事故のような原子力災害から、住民をどう守ればいいのか。決して事故が起きないような仕組みをつくることができればそれに越したことはないが、現実には難しい。
 結局、起きた場合を想定した防災計画が極めて重要になる。言うまでもなく単なる机上のプランに終わらせず、避難対象になっている原発周辺の住民が納得できるような高い実効性を確保しなければならない。
 東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)の30キロ圏内の7市町が先月末、宮城県と共同で原子力防災訓練を行った。これまで年1回のペースで行われているが、相変わらず課題が多く、実効性に数々の疑問符が付く
 
 訓練では、原発周辺から避難して来た住民の放射能汚染の有無の検査(スクリーニング)と除染、負傷者の病院への搬送、避難先の自治体の受け入れなどが実施された。
 いずれも初めての取り組みだったが、放射能汚染検査では参加者から「除染作業が遅い」といった意見が出た。
 放射性物質の放出を伴うような事故の場合、避難経路のどこかで人や車の汚染調査が必要になる。もし汚染されていれば、洗浄などで取り除かなければならない。そのまま通過させてしまうと、付着した放射性物質が拡散することにもなりかねないからだ。
 女川原発で事故があれば、宮城県は県内13カ所でスクリーニングを行う計画で、予定地の一つの東松島市の運動公園で訓練を行った。初めてとあって時間がかかったのは仕方ない面があるにしても、緊急時にはかなり効率よくこなさなければ、避難そのものの遅れをもたらしてしまう。
 さらに、各自治体による避難者の受け入れ訓練も行われたが、参加者はわずか130人だった。30キロ圏内に暮らす住民は21万人にもなる。0.1%にも満たない数では、そもそも実効性があるかどうかの判断すら難しい。
 女川原発の場合、「県内避難」を基本にしたため、避難自治体が受け入れも行うという奇妙な内容になってしまった。登米市や美里町は避難者を抱えているのに、石巻市民の避難先にもなっている。14万人もの避難対象者がいる石巻市は、県内27市町村に分散させるという。
 21万人をスムーズに避難させるのはそもそも至難の業。8年前の福島第1原発事故を検証すれば、どれほど大変な作業かすぐに分かるが、それだけに計画策定には細心の注意を払う必要がある。
 宮城県と7市町、国は今後、事故時の「緊急時対応」をまとめる予定だが、実効性を徹底的に追求しなければならないし、必要なら避難計画を再検討すべきだ。土台の計画に無理があったのでは、いざという時に全く役に立たないばかりか、かえって避難の障害になりかねない。