2013年5月27日月曜日

東海村被曝事故(続報)

 
 東海村被曝事故ではその後被曝者は6人となりました(被曝1.60.6ミリシーベルト)。その他に被曝可能性のある人が24いるということです。(25日現在)
 茨城県が25立ち入り調査した結果、事故当初、実験装置の異常安全装置が働きいったん実験装置停止しましが、安全装置作動の原因が不明なまま警報をリセットし実験を再開したこと、その後施設内放射線量が上昇したので再び運転を停止したものの、その後排気ファンを作動させ施設内の線量げて運転を再開していたことなどが分かりました
 現場では国に報告すべきだとの声もあったのですが、施設長らが「通報に該当する事象ではない」と判断したため報告遅れにつながりました
 県の担当者は「排気ファンに放射性物質を吸着するフィルターが付けられていないのは驚き。外部に漏れたのは重大だ」と指摘しました

 要するに実験を行っていた高エネルギー加速器研究機構(KEK)は、「今回のように放射能が大量に装置外に漏出する事態は考えていなかった」ということで、事故対応のマニュアルもなく、放射性物質を施設の外には放出しないという意識もなかったということです。1999に起きた「東海村JCO臨海事故」のときの、作業従事者の意識を想起させるものがあります。
「東海村JCO臨界事故」:非正規の容器を用いてウラン溶液を濃縮する作業を行い、ウラン溶液が臨界状態に達して青い光を発したのに、3人の作業従事者には臨界の知識がなかったために至近距離で中性子線を浴び続け、2名が死亡1名が重症となった事故。事故が明らかになってから周辺の住民を避難させるなどしました。

 以下に東京新聞の記事を紹介します。
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東海村事故 換気扇回し実験継続
東京新聞 2013年5月26日
 茨城県東海村の日本原子力研究開発機構(原子力機構)の敷地内にある加速器実験施設「J-PARC」の放射性物質漏れ事故で、事故当初、実験装置の異常を検知して安全装置が働き、警報音が鳴ったにもかかわらず、担当者が警報をリセットして実験を続けていたことが二十五日、分かった。 
 新たに二十三歳と四十五歳の男性二人の被ばくが確認され、事故当時、施設に出入りしていた五十五人のうち被ばくしたのは実験装置の付近で準備をしていた二十二~四十五歳の男性六人となった。被ばく線量は一・六~〇・六ミリシーベルトだった。ほかに二十四人が被ばくした可能性があり、機構が精密測定を進めている。十四人は被ばくしていないと判明、十一人はまだ検査を受けていない。茨城県は二十五日、原因や経緯を確認するため施設内を立ち入り調査した。調査には県のほか、東海村、水戸市など周辺市町の職員も参加した。
 実験を実施していた高エネルギー加速器研究機構(KEK、同県つくば市)によると、二十三日午前十一時五十五分、J-PARC内の原子核素粒子実験設備で金に陽子ビームを当てて素粒子を発生させる実験中、異常を検知して安全装置が作動、警報音が鳴ったため、いったん実験装置を停止した。
 担当者は安全装置作動の原因が分からないまま午後零時八分に警報をリセットし、実験を再開した。その後、施設内で放射線量が上昇し再び運転を停止。午後三時十五分ごろ、排気ファンを作動させて施設内の線量が下がったため、また運転を再開していた。
 
◆報告進言も…却下 事故マニュアルなし
 放射性物質漏れ事故を起こした茨城県東海村の加速器実験施設「J-PARC」は、放射性物質を取り扱う施設でありながら、漏えいを想定した十分な対策が取られていなかった。放射性物質を確信的に外部に放出して実験を続けるなど、研究者たちの安全意識の薄さも浮き彫りになった。
 施設は原子力機構とKEKが共同運営している。事故発生時、研究者たちは放射線量が通常時の十倍の毎時四マイクロシーベルトまで上がったのが分かると、施設内の線量を下げるため、換気扇を二度にわたって運転した。
 KEKは「大気に出ても迷惑はかからない数値だと思った」と説明。研究者たちが放射性物質の外部漏出を確認したのは、換気扇を回して二十六時間もたってからだった。
 現場では速やかに国に報告すべきだとの声も一部であったという。だが、原子力機構出身の池田裕二郎J-PARCセンター長らが「通報に該当する事象ではない」と判断。報告遅れにつながった。KEKの研究者は「センター長らの指示に従った」と語った。
 装置では実験時に素粒子とともに放射性物質が発生する。だが、KEKは「今回の事故のように大量に装置外に漏出する事態は考えていなかった」と釈明。施設の三十二カ所にある換気扇に、放射性物質を吸着するフィルターは取り付けられていない。事故を想定した運用マニュアルも用意していなかった。
 現地調査に当たった茨城県原子力安全対策課の担当者は「フィルターが付けられていないのは驚き。外部に漏れたのは重大だ」と指摘した。 (永山陽平)