2013年10月11日金曜日

柏崎刈羽原発の審査保留を検討 規制委

 福島原発で、単純ミスなどで毎日のようにトラブルを繰り返していることに関して、原子力規制委の田中委員長は9日、柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働に向けた安全審査について「まずトラブルが相次ぐ福島原発の状況を見極める」と述べ、審査入りが遅れる可能性を示唆しました

 福島原発では9日にも6人の作業員が濃厚な汚染水を浴びるなど、この2週間で単純ミスが5回も続いています。
 単純ミスによるトラブルは先月19日に安倍首相が福島原発を視察した後に集中していて、現場では「国からの命令だからとにかく急げ」との指示が飛んでいるため、必要以上の重圧が現場の判断力を鈍らせている可能性もあるということです
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原子力規制委員長:柏崎刈羽の審査保留を検討 
毎日新聞 2013年10月10日
◇汚染水「見極め必要」
 原子力規制委員会の田中俊一委員長は9日、毎日新聞のインタビューに応じた。東京電力柏崎刈羽原発6、7号機(新潟県)の再稼働に向けた安全審査について「まず(汚染水漏れなどトラブルが相次ぐ)福島第1原発の状況を見極める」と述べ、審査入りが遅れる可能性を示唆した。

 規制委は4日、東電に対し、汚染水対策と、再稼働を目指す柏崎刈羽原発で安全管理を適切に行えるかを文書で報告するよう指示した。東電は週内に規制委に報告書を提出する予定だ。
 田中委員長は9日に起きた福島原発での淡水化装置の汚染水漏れも念頭に、「トラブルが毎日のように起こっている。この状況が落ち着いて、きちんと(管理が)できるようになるまで見極めないといけない。(東電が提出する)報告書に書いてあることが実際に行われているかを見る」と強調した。

 その上で、「福島原発の作業環境がかなり劣悪だ。厳しい仕事の場合には、プロパー(東電社員)が先頭に立つべきだが、現場はどうだったのか。東電は下請け(協力企業)を使う体質があり、自分たちが前に出ていない可能性がある」と指摘した。報告書は1カ月程度かけて精査し、妥当性を判断するという。現在、規制委に安全審査を申請しているのは、5電力の7原発14基。このうち、9月27日に申請された柏崎刈羽6、7号機の審査入りについて保留することへの明言は避けつつも、「(審査が進んでいる)他原発のように、とんとんやるペースではいけない。国民も許さないだろう」と述べた。

 また、安全審査に臨む電力各社の姿勢について、「一部でレジスタンス(抵抗)がみられる。審査が遅れて損するのは、電力会社だ。遅れたからといっても審査を甘くすることはない」と語った。特に関西電力の大飯3、4号機と高浜3、4号機(いずれも福井県)の安全審査で、関電が両原発周辺の三つの活断層の連動を否定しているが、「ああいうことをやっているから、(審査が)なかなか先にいかない」と批判した。【岡田英、中西拓司】


単純ミス2週間で5回 福島第一
東京新聞 2013年10月10日
 東京電力福島第一原発で、放射性セシウムを除去した処理水から塩分を除去する装置で水が漏れた問題で、東電は九日、現場にいた下請け企業の作業員十一人のうち六人が処理水をかぶっていたと発表した。 
 漏れた水には、一リットル当たり三四〇〇万ベクレルと放出が許される濃度の数十万倍の放射性ストロンチウムなどが含まれていた。ストロンチウムなどが発する放射線は遮蔽(しゃへい)が容易だが、処理水に直接触れたり、体内に取り込んだりすると、やけどや長期の内部被ばくにつながる。

 作業員は厚手のかっぱを着用しており、処理水がついたのは、胸や脚に限られ、やけどなどの症状もなかったという。被ばく線量も作業前に予想した線量の半分以下で、六人とも水を拭き取るなどして帰宅した。念のため、十日に体内への取り込みを詳しく調べる。
 水漏れが起きたのは当初の発表より三十分ほど早い午前九時三十五分。作業員十人が装置近くで配管作業をした際、誤って外してはいけない配管を外してしまった。一人の応援が駆け付け、配管をつなぎ直すなどして約一時間十五分後にようやく漏れが止まったが、この間に七トンが漏れたと推定されている。

◆現場疲弊士気も低下
 東京電力福島第一原発でこの二週間、単純ミスによるトラブルが五件も相次いでいる。誤って原子炉を冷やす注水ポンプを止めてしまったり、移送先を間違えて汚れた雨水をあふれさせたりした。原因は不注意など単純なだけに、逆に対処が難しい。現場の疲弊や士気の低下が指摘されるが、こんな状況では、無用のトラブルが続きかねない。
 「規制して直るレベルではなく、作業環境を改善し、士気を保つようにしないといけない」。原子力規制委員会の田中俊一委員長は九日の記者会見で、福島第一の現状について苦言を呈した。

 処理水から塩分を除去する装置からの水漏れトラブルも、給水系統と排水系統を間違えて配管を外してしまう通常は起こり得ないミスで起きた。
 この塩分除去装置に限らず、事故発生から間もない時期に設置された設備は、どれも急造されたため、配管を色などで識別する配慮はほとんどされていないという。
 東電の尾野昌之原子力・立地本部長代理は「(識別票をつけるなど)そうした作業をできる状況にない」と語った。ということは、今後も作業の安全は、現場の注意力に左右されることになる。

 本紙は二週間以上前のトラブル事例も調べたが、単純ミスによるものはわずか。仮設配電盤のショートや、ボルト締め型タンクや地下貯水池からの水漏れなどは、どれも急造された設備類の構造的な問題が原因だ。
 偶然かもしれないが、トラブルは先月十九日に福島第一を視察した安倍晋三首相が「しっかり期限を決めて汚染水を浄化すること」などの指示を出して以降に集中している。
 七日の汚染水問題をめぐる参院の閉会中審査では、現場の意欲低下、疲弊がミスを誘発していると指摘され、広瀬直己(なおみ)社長は「下請け企業を含めて作業環境の改善を一生懸命進めたい」と述べた。
 だが、作業員たちの話では、現場では「国からの命令だからとにかく急げ」との指示が飛んでいる。必要以上の重圧が現場の判断力を鈍らせている可能性もある。 (原発取材班)