2013年10月18日金曜日

泉田知事 再稼働容認ではない

 フリージャーナリストの田中龍作氏が、16日の泉田知事とのメディア懇談会の際に行った質疑応答を、「田中龍作ジャーナル」で公開しています。

 それによると一部のメディアが、泉田知事が再稼働を容認したかのような印象を与える報道をしたことに対して、知事の真意はそうではないとしています。
 (同じ懇談会に出たIWJメンバーも、新規制基準 適合性審査承認後も、これまで東電や規制委員会に対して指摘してきた知事の主張に変わりはないことが、改めて確認されたとしています)

 また知事によれば、「進められているベント工事あくまで東京電力のリスクでやってものであり、これから立ち上げる『フィルターベント調査チーム』の調査結果によっては現行仕様を認めないことはある」ということです。

 フィルターベントの性能が住民を有害に被曝させないものであることは当然ですが、その他のリスクについても十分に考慮して進めて欲しいものです。

 以下に田中龍作氏のブログを紹介します。

(追記) 「フィルターベント」と「ベントフィルター」の両者が使われることがありますが、直訳するとフィルターベントは「ろ過器付き排気設備」であり、ベントフィルターは「排気設備用ろ過器」です。
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【新潟発】 報道とは裏腹、泉田知事の真意 
        「再稼働に向けてGOとはとれない」
田中龍作ジャーナル 2013年10月16日
 柏崎刈羽原発再稼働の前提となる新安全基準を満たすため東電の廣瀬直己社長は先月25日、新潟県を訪れ泉田裕彦知事にベントフィルター設置の事前了解(※)を求めた。泉田知事は、翌日、条件付きで設置を了解した。
 社長訪問の後のぶら下がり会見で泉田知事は、「預かる」を繰り返したため、記者団も、まさかその翌日に了承するとは予想できなかった。その衝撃は大きかった。原発推進派のメディアを中心に、あたかも泉田知事が再稼働を容認したかのような印象を与える報道をした。だが知事の真意はそうではなかった。

 世界最大級の発電能力を持つ柏崎刈羽原発の再稼働は、赤字に苦しむ東電の財務状況を改善させることが見込まれる。
 東電の大株主であるメガバンクの思惑もあり、まるで柏崎刈羽再稼働が決まったかのような動きがある。銀行団が東電の800億円の借り換えに応じることを明らかにしたことだ。借り換えは再稼働が前提と見られているからである。

 きょう(10月16日)開かれたメディア懇談会で筆者は次のように質問した。「財務省つまり政府が再稼働に向けてGOサインを出したともとれるが、知事はどう思うか?」

 泉田知事は以下のように答えた―
 「私はとれないと思う。なぜならば今回条件が付いているんです。それが何かと言うと、これから技術委員会の中のフィルターベントの調査チームを動かすという説明をしましたが、これは健康に影響がある被曝をしうるという時には当然差し替え有りですよ」。
 「(ベント)工事を今進めていますけれどあくまで東京電力のリスクでやってわけで、さらに避難が不可能ということになれば、いわゆる仮了承については無効という条件が入ってるわけです。これは住民に累(被害)が及ぶということになればそもそもフィルターベントは使用できない設備ということです」。

 メディア懇談会の後、筆者は事務方の説明を受けた。推進派のメディアが再稼働に向けて動き出したかのように報道したことについて、事務方も困惑している様子だった。
 事務方は「ベントに条件をつけたことで再稼働に向けてはむしろハードルが高くなった」と話した。

 マスコミは東電が原子力規制委員会に安全審査申請を出しただけで再稼働が決まったような報道ぶりだ。だが、規制委員会が設備上ゴーサインを出したところで、住民の安全が十分に担保できなければ新潟県は簡単に再稼働を認めないスタンスに変わりはない。
 泉田知事は今日の記者会見で新潟県の「安全管理に関する技術委員会」の中に「フィルターベント調査チーム」を設置することを明らかにした。チームは新潟県、柏崎市、刈羽村に東電も入る。
 泉田知事は住民の避難計画とベントの整合性が取れなければ再稼働は認めない姿勢だ。
    
(※)
 東電は新潟県と「原子力安全協定」を結んでおり、設備の変更などがある場合は新潟県の了解を得なければならない(協定第3条)。新安全基準を満たすためのベントフィルターの設置がこれにあたる。