2019年5月14日火曜日

福島原発 トリチウム水の長期保管も選択肢に 政府

 いまさらですが、政府は福島原発のトリチウム含有処理水の長期保管を新たに検討することになりました。昨年のトリチウム含有水の処理に関する公聴会で長期保管を望む意見が多数寄せられたことを考慮したものです。とはいえ政府も規制委も一貫してトリチウムの危険性は小さいので海洋放流は可能という見解だったので、「最終的には政府として決定する方針」としている点には大いに不安を禁じ得ません。
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 関連して、西尾正道・北海道がんセンター名誉医院長が、以前の公聴会でトリチウムの危険性について述べていますので併せて紹介します。
 西尾氏は、トリチウム水は放射線レベルだけで論じるべきではないとして、トリチウムは水素としてDNAの構成元素になるので、そこでベータ崩壊を起こすとDNAが破壊されるので非常に危険だと強調しています。
 トリチウムは電子を放出(ベータ崩壊)してヘリウムに変わり、その半減期は123年です。これは全体の半数がヘリウムに変わるのに123年掛かるということで、崩壊自体はトリチウムが生成したときから連続的に生じます。
 トリチウムは化学的には水素と変わらないのでDNAを構成する水素と区別されません。
 従ってDNAを構成したのちにベーター崩壊を起こしてヘリウムに変わると、もはや水素としての特性(結合力)を失うのでDNAは壊れることになります。
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福島第1原発処理水、長期保管も選択肢 政府、処分法検討
毎日新聞 2019年5月13日 06時30分
 事故を起こした東京電力福島第1原発でたまり続ける汚染を浄化した処理水の処分方法について、政府は、タンクでの長期保管を新たに検討する。これまで「海洋放出」など五つの処分案を検討してきたが、国民の間には外部への放出を懸念する声が強く、実現性を議論する必要があると判断した。経済産業省の有識者小委員会が来月にも、長期保管を含む六つの方法から絞り込む議論を始める。 
 
 政府関係者への取材で判明した。処分方法は有識者小委の検討を踏まえ、最終的には政府として決定する方針だ。 
 ただし処分方法については有識者の間でも意見が分かれる。また政府内には、2020年の東京五輪・パラリンピックを前に処理水の行方に注目が集まり、風評被害が顕在化することへの懸念もある。このため、政府がどの案を選択するか現時点では見通せない。 
 
 事故で発生した汚染水に含まれる放射性物質のうち、放射性トリチウムを取り除くことは技術的に難しい。処理水の処分では風評被害も懸念され、小委で16年から具体的な方法を検討してきた。 
 政府関係者によると昨年の公聴会で長期保管を望む意見が多数寄せられ、「タンクでの長期保管」を選択肢に加えることになった。 
 
 国の計画では、処理水の処分を含む廃炉完了は11年の事故から40年後の51年で、長期保管案では保管できる期間や量、放射線量の低減効果を議論する。一方、タンクは20年までしか増設予定がなく、容量の限界に近づけば汚染度の低い処理水から、少量ずつの処分も検討するとみられる。 
 経産省幹部は「タンク容量にも限度がある」と有識者小委の議論を加速させたい考えだが、政府内からは「官邸内部ですら処分方法の賛否が分かれる問題だ」との声も上がっている。 
 
 処理水処分を巡っては昨年、ストロンチウム90など浄化装置で除去可能な一部の放射性物質が国の排水基準値を上回って残留していることが発覚。「議論の前提が崩れた」と国民から批判が相次ぎ、小委の議論が長期化していた。
 
 
西尾正道北海道がんセンター名誉医院長の意見陳述(要旨)
(「多核種除去設備等処理水の取扱いに係る説明・公聴会」(2018/8/31 イイノホール)における意見陳述を、魑魅魍魎男氏が文字起こしされたものです。
 事務局が抜粋要約しました)
 
西尾と申します。私は、北海道がんセンターを肩書きとした名誉医院長です。
40年間放射線治療をやってまいりました。日本で一番放射線治療の患者さんを扱い、おそらく日本で一番被ばくしている医者の一人です。
 
放射線治療の歴史というのはがんにだけどうやって絞ってかけるかの歴史なんですよ。
放射線の影響というのは放射線が当たったところにしか影響はないんです。
それを変な換算係数でシーベルトに換算したって全く意味ない。僕はういう人たち眼を覚ましてほしいと公述人に応募しました。そうしたら何と5分しかしゃべれない。
医学的なことだけ言いますトリチウムがなぜ悪いか。
2003年にノーベル賞をとった小柴さんが当時の小泉首相に、トリチウムが出て危険だから核融合をやめろと嘆願書を出しています。そのぐらい猛毒なんです。
 
放射線が当たると当たった量に応じてある確率で障害が出る。トリチウム放射線エネルギーが低いから安全だというのは大ウソです。トリチウムはDNAに取り込まれるから危険なのです。
 
細胞核の中に遺伝子をつくるDNAの二重らせん構造4つの塩基が組み合わさってできています。の4つの塩基を結びつけているのは水素結合なんです。その水素がトリチウムの3重水素で置換されるとやがてヘリウムに変わります。ヘリウムに変換したら水素結合力がなくなりますから、4つの基本になる塩基の結びつきがダメになります。
ということは遺伝子をつくっている4つの塩基そのものが、すべて化学構造式が変わるので健康障害が出るんです。だから放射線だけじゃないんです
 
有機結合型トリチウム化学構造式を変えてしまう。遺伝子をつくっている塩基そのものの化学構造式を変える。しかも塩基結びつけている水素結合力もなくなる。
これが根幹なんです。だからトリチウムをたくさん出すカナダの原子炉で、とんでもない、実害が出ているわけです。
風評被害じゃなくて実害が出るのです。ただ遅れて出てくるだけなんです。今日明日出てこないだけの話なんです。
それは人類に対する殺人行為です。緩慢な殺人行為です。そういう認識をもってください。
 
放流規制値を1リットル当たり6万ベクレルにした根拠は、沸騰水型原子炉が年間20兆ベクレル出してるだから22兆ベクレルまでいいと勝手に決めたんです。それが今の基準で、何も科学的医学的根拠なんてないんです
加圧水型原子炉は10倍から20倍のトリチウムを出すから、玄海原発にしても泊原発にしても、とんでもない健康被害が出ているんです。健康被害がないなんていうのは大ウソです