2018年9月3日月曜日

元原発技術者 トリチウム水の海洋放出案を批判し 解決案を提示

 29日、元東芝・原発技術者の後藤政志氏が「基準値以下」のトリチウム水を流す米国イリノイ州では、原発周辺に暮らす住民の脳腫瘍や白血病が30%以上増え、小児がんは約2倍に増えたとの報告があることを紹介し、トリチウム水の海洋放出の危険性を指摘するとともに、「線量が1000分の1に減衰するまでトリチウム汚染水を大型タンクに123年備蓄するのが現実的」と訴えました。半減期(123年)の10倍の期間保管すれば線量は1024分の1に減衰するためです。
 
 東電は、トリチウム水を保管するタンクエリアが間もなく満杯になるからと強調しますが、保菅タンク容量の容量を現行の100倍の10万トン(キロℓ)にしてそれを11基作ることにすれば、現在の敷地内に収まるし、もしも不足であれば78号機建設予定地もあるので、東電の主張は成り立ちません。
 そもそも海洋放出は放射性物質による汚染から海洋環境を守るとしたロンドン条約」に違反するし、トリチウムの総量1000兆ベクレルを海洋に放出するなどは犯罪です。
 ハーバー ビジネス オンラインの記事を紹介します。
 
追記)今後も延々とトリチウム水が発生するのは、先に完成させた凍土遮水壁が止水機能が不全で、日量(乾季でも)150トンほども地下水が格納容器内に侵入するためなので、完全に止水できるコンクリート製で遮水壁を作り直すしかありません。
  凍土式であれば国費が使えるからと飛びついて、300億円以上を全く無駄にした責任は当然追及されるべきです。
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元原発技術者が「放射性トリチウム汚染水を薄めて海洋放出する」方針を批判
中山貴久子 ハーバー ビジネス オンライン 2018年9月2日
 東京電力福島第1原発でたまり続けている放射性トリチウムなどを含んだ大量の汚染水。原子力規制委員会は、この汚染水を「海洋放出が唯一の選択肢」として、年内放出への決断を迫っている。
 8月30日に開催された福島県富岡町の公聴会では、漁業関係者を中心に「福島県の漁業に壊滅的な打撃を与える」などと海洋放出に反対する声が相次いだ。
 その公聴会の前日に行われた緊急学習会では、元東芝・原発技術者の後藤政志氏が「トリチウム汚染水を大型タンクに100年以上備蓄し、線量が減衰するまで保管する方法が現実的だ」と訴えた。低線量であっても危険性の高いのが、トリチウムという放射性物質だ。
 しかしこの大型タンク案に対し、東京電力は「汚染水を貯蔵する敷地が足りなくなる」とも主張、検討するにも至っていない。
 
「基準値以下」のトリチウム水を流す米国イリノイ州では、原発周辺に暮らす住民の脳腫瘍や白血病が30%以上増え、小児がんは約2倍に増えたとの報告がある。それでも経済産業省は「トリチウムは人体への影響がセシウムの700分の1で、海外でも放出しており安全」だとし、原子力規制員会は「薄めて告示濃度以下にすれば放出できる」という立場をとっている。
 
「置き場がなく、海洋放出しかない」と急ぐ政府
 汚染水水質グラフ(添付省略)
 
 後藤氏は、この見解について異を唱える。
「トリチウムの安全性はまだ確認できていません。光合成によって有機結合型トリチウムになるとさらに危険性が高まります。さらに放射性物質による汚染から海洋環境を守るとした『ロンドン条約』違反でもあります。
 いくら薄めた(基準値以下にした)としても、日常的に放出される分に加えて備蓄された1000兆ベクレルが海へ投棄されるとなると、総量の問題も出てきます。
 そのため放射線量が1000分の1に減衰する123年間、大型タンクに保管しておくのが妥当。その大型タンクの技術はすでにある。2021年までの133万トンは、原発敷地のスペースで全て保管することも可能です」(後藤氏)
 
 容量10万キロリットル級のタンクを、予備タンク1基を含めて11基建設する。漏えい対策に145メートル四方で高さ5メートルの堰を設ける。スペース的にも効率が良く、原発敷地内にある既存の1000キロリットル級タンクの敷設内に収まるという。
 
薄めて海洋投棄するよりも良い方法があるのに……
 後藤氏はもともと、タンカーなど船舶・海洋構造物の設計技師で、石油備蓄タンクでの実績をもとに検討した。
足りなければ、7号機8号機建設予定地もある。洋上タンク方式をとれば133万トンの容量は大した量ではない。確かに予算的には海洋放出が34億円と最も安価ですが、他の地下埋設2500億円といった経産省案と比べると、大型タンク案は330億円と妥当な額です。これを無視して海洋放出するなどあり得ない」(後藤氏)
 漁業関係者が海洋放出に反対、漁業に対する風評被害が広がることは避けられない。そんな状況で「薄めさえすれば流せる」と、これ以上のトリチウム汚染水を海洋放出させてよいものだろうか? <文・写真/中山貴久子>