2020年8月23日日曜日

核ごみ埋設処分に根強い抵抗感、九州では「拒否」条例化

 原発から出る高レベル放射性廃棄物の埋設処分場の候補地選定を巡り、北海道寿都町が文献調査への応募を検討していることが北海道で問題視されていますが、児島県南さつま市で今年2月、本坊輝雄市長が処分場の立地拒否を掲げた新しい条例案を提案し、市議会で賛成多数で可決されました。
 同市に合併前の旧笠沙町では2005年当時の町長が処分場の誘致構想を表明しましたが、住民が猛反発したため3日後に構想を撤回し、その後、町は原子力関連施設の立地を拒否する条例を制定し、合併した南さつま市にも暫定的に引き継いでいたものです。
 同様の条例を定め、処分場の受け入れを拒む自治体は、全国で少なくとも20以上あるということです

 そもそも「火山・地震地帯の日本には、数万年以上安定な地層は存在しない」というのが地層学会の結論だったのですが、それが突然安倍内閣になって「適地がある」という評価に変わりました。学会など権威あるところが承認しているのか疑わしい話です。
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核ごみ処分根強い抵抗感、九州では「拒否」条例化
西日本新聞 2020/8/23
原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の候補地選定を巡って今月、北海道寿都(すっつ)町が文献調査への応募を検討していることが表面化した。梶山弘志経済産業相は他にも複数の自治体が関心を示しているとして、膠着(こうちゃく)状態の打開につながることを期待する。ただ、過去に調査を検討した自治体はいずれも住民などの反対で実現せず、九州でも「受け入れ拒否」を条例化する動きが出ている。処分地選定への道筋はなお見通せない。

薩摩半島の南西部。東シナ海に面した鹿児島県南さつま市で今年、核のごみを巡る議論が巻き起こった。
「恵まれた自然環境を守り、安心して住み続けられる地域づくりが行政の責務だ」。本坊輝雄市長が2月、処分場の立地拒否を掲げた新しい条例案を提案。市議会では、誘致に伴う経済効果を訴える声が一部で上がったものの、条例案は賛成多数で可決された。

合併前の旧笠沙町では2005年1月、当時の町長が処分場の誘致構想を表明。しかし、住民が猛反発し、町長は3日後に構想を撤回した。その後、町は原子力関連施設の立地を拒否する条例を制定し、合併した南さつま市にも暫定的に引き継いでいた。
市は、国が17年に処分の適地を示した「科学的特性マップ」で、四つの区分の中で最も適地とされる「好ましい地域」に分類されている。市議の一人は、改めて条例が制定された理由について「誘致の話が再燃したら困る。くぎを刺す意味があった」と説明する。

同様の条例を定め、処分場の受け入れを拒む自治体は、全国で少なくとも20以上ある。条例に限らず、議決を通じて反対の意思を示す地方議会もある。

早稲田大の黒川哲志教授(環境法)によると、安全性が懸念される施設を造る際に障壁となりがちなのが、近場での建設は避けたいとの市民感情。処分には数万年と途方もなく長い期間を要することへの不安も根強い。黒川教授は「反対する住民には、将来の世代に対して環境を守ろうという気持ちもあるのではないか」と推察する。

ただ、国内で商用原発が稼働して半世紀以上がたち、核のごみは既に地中に埋める「ガラス固化体」換算で約2万6千本分が発生、大半が原発内で保管されている。黒川教授は「廃棄物の保管リスクを原発立地自治体に押し付けており、公平ではない」と指摘する。
核のごみの地層処分を定めた特定放射性廃棄物最終処分法の成立から今年で20年。処分の事業主体となる原子力発電環境整備機構(NUMO)は各地で説明会を重ねている。担当者は「課題を広く知ってもらい、少しずつ前進している」と成果を強調する。
だが、過去に処分場選定の入り口となる文献調査への応募は07年の高知県東洋町のみ。東京電機大の寿楽浩太准教授(科学技術社会学)は「そもそも地層処分という方法の妥当性や処分地選定の進め方について、社会の共通認識が形成されていない」と指摘。核のごみ問題に対する社会の関心は高まっておらず「現時点で国内に処分地を探すのが最善」との考え方も十分に支持されていないとみる。
そうした中で浮かんだ今回の寿都町の動き。北海道や周辺町村などからは既に反対の声が相次いでおり、片岡春雄町長の判断は予断を許さない。寿楽准教授は「社会全体で地層処分の議論を深めるきっかけにしてほしい」と語る。 (山下真)

【ワードBOX】核のごみの最終処分
原発の使用済み核燃料を再処理した後に残る廃液は、高レベル放射性廃棄物(核のごみ)と呼ばれる。国は2000年、核のごみの地層処分を定めた「特定放射性廃棄物最終処分法」を制定。地下300メートルより深くに埋設し、数万年から約10万年にわたって生活環境から隔離する「地層処分」を採用した。処分場の選定は、自治体から応募があった場合に文献調査、概要調査、精密調査の3段階の調査を計約20年かけて行う。自治体は文献調査に応じるだけで、最大20億円が交付される。