2020年8月15日土曜日

核のごみ最終処分場、北海道寿都町が調査応募検討に驚きと不安

 高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の文献調査に寿都町が応募を検討していることを巡り、地域に驚きと不安が広がりました。
 北海道は14日、片岡春雄町長に応募を控えるよう要請しました。
 共同通信が同最終処分場の受け入れに関し、都道府県にアンケートを取ったところ、23道府県が拒否か否定的な考えであり、前向きな意向を表明した自治体はありませんでした。

 北海道新聞は14日社説で取り上げ、寿都町の応募に疑問を呈し、町内だけでなく幅広い道民の意見を聴いた上で判断するのが筋ではないかと述べました

 5つの記事を紹介します。
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核のごみ、驚きと不安 最終処分場、寿都町が調査応募検討に
北海道新聞 2020/08/14
 原発から出る高レベル放射性廃棄物の最終処分場選定の第1段階となる文献調査に寿都町が応募を検討していることが分かり、地域に驚きと不安が広がった。「核のごみ」の引き受けにつながる今回の動きは、1次産業や観光業を基幹とする後志管内にどのような影響を及ぼすのか。人口2900人の町の選択を全国が注視する。

■町内や隣接自治体「イメージ低下も」
 文献調査は原子力発電環境整備機構(NUMO)が過去の地震の有無などを約2年かけて調べるもので、問題ないと判断されればボーリングなどの作業を伴う「概要調査」(約4年間)、岩盤などを詳しく調べる「精密調査」(約14年間)に進む。片岡春雄町長は今月26日に開く町民との意見交換会を踏まえて9月にも方針を決めるとし、応募やその先の工程への進行には地域の合意が欠かせないと強調する。
(以下は有料記事のため非公開 残り:543文字/全文:897文字)


寿都町「核のごみ」文献調査応募検討 「悪影響あるのでは」 町内外に驚きと波紋
毎日新聞 2020年8月14日
 原発の使用済み核燃料から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定の文献調査に、北海道寿都町が応募を検討していることが表面化した13日、町内外に驚きと波紋が広がった。片岡春雄町長(71)は「町民の理解がなければ調査は受け入れない」としており、町は今月26日から来月中旬にかけて地元町民らと意見交換を行う。【山下智恵、高橋由衣】

 「子どもや若い人にどんな影響があるか分からない。自分が育った町に、よく分からないものが来るのは誰だって嫌だ」。同町の無職の女性(85)は、否定的な考えを示した。
 寿都町の実家に帰省中の札幌市の男性会社員(63)も「驚いた。風評被害で漁業や観光にも悪影響が出るのではないか。万が一事故があったらどう対処するのか。町長にしっかり説明してほしい」と戸惑いを隠せない様子だ。
 町の文献調査への応募検討のニュースは北海道新聞が13日付朝刊で報じ、波紋は町外にも広がった。
 同町に隣接する蘭越町の幹部は「町民の安全・安心に関わるのであれば今後、さまざまな場で寿都町と協議をしていきたい」と語った。
 寿都町と同じ後志管内で、国内外からの観光客が訪れるニセコ町の職員は「うちの町のイメージを含め、どんな影響があるのか分からない。今後具体的な動きになるのか、見守りたい」と話した。
 こうした中、道環境エネルギー課の担当者は「道の基本姿勢は条例。まずは町の考えや検討の状況を聞いて対応したい」と語った。

 その条例とは、道が2000年10月に制定した全国で唯一の「核抜き条例」だ。核燃料サイクル開発機構(現在は日本原子力研究開発機構)が01年、核のごみの地層処分の技術的検討を行うため「幌延深地層研究センター」(幌延町)を設置する際、制定された。
 条例は核のごみについて「持込みは慎重に対処すべきであり、受け入れがたい」と明記。同センターで放射性廃棄物を持ち込んだ実験や、実験場が処分場になることを防ぐ狙いがあった。そうした動きに連動し、道内の自治体でも独自の「核抜き条例」を制定する動きが広まった。
 しかし、最終処分場の選定を進める国は、「核抜き条例」を持つ道内も候補地から除外せず、候補地公募に向けた自治体向けの説明会を開催してきた。


北海道、寿都町に「応募控えて」 核ごみ処分場の選定調査で要請
共同通信 2020/8/14
 北海道寿都町が、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査への応募検討を明らかにしたことを受け、道が14日、片岡春雄町長に応募を控えるよう要請したことが町への取材で分かった。
 町によると、土屋俊亮副知事らが同町を訪れ片岡町長と約1時間会談。副知事は核のごみについて「持ち込みは慎重に対処すべきであり、受け入れがたい」とする道条例を挙げ「分かっていますよね」「応募を控えるように」と述べた。

 町長は「新型コロナで町の産業が影響を受けた。将来の厳しい財政状況を考えると応募は選択肢の一つ」との立場を伝え、検討を続ける考えを示した。


核ごみ最終処分場、半数が否定的 都道府県アンケート、前向きなし
共同通信 2020/8/14
 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の受け入れに関し、23道府県が拒否か否定的な考えであることが14日、共同通信の都道府県アンケートで分かった。前向きな自治体はなかった。特定放射性廃棄物最終処分法が2000年に成立して20年。北海道寿都町が処分場選定に向けた調査に応募を検討しているのが明らかになったものの、選定の困難さが浮き彫りになった。

 処分場受け入れの検討可否を聞いた設問は16県が「拒否する」と回答。ほとんどは「その他」や「どちらとも言えない」と方針を示さなかった。うち自由記述や取材に否定的な考えを示したのが7道府県あった。


社説 核のごみ処分場 疑問多い調査応募検討
北海道新聞 2020/08/14
 後志管内寿都町の片岡春雄町長が、原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分地選定の第1段階となる文献調査への応募を検討すると表明した。
 調査に応じると国から多額の交付金が支給されるため、町長は「将来の町財政を見据えた」と説明する。
 厳しい財政事情は道内をはじめ全国の小規模自治体に共通する。これまで応募する自治体がなかったのは、毒性の強い核のごみを地中深く埋める地層処分への不信があるからだ。
 万年単位で厳重な保管が必要になる核のごみを、地震が多発する日本で地層処分できるのかという議論もある。地域の住民が不安に思うのは当然である。
 財政と引き換えに、安全性が疑問視される処分場の誘致に動くのは安易に過ぎないか。町長はその重みをしっかりと認識し、いま一度熟慮すべきだ。
 候補地選定の調査を受け入れた自治体には文献調査で最大20億円、第2段階の概要調査に進めば、さらに最大70億円が支給される。
 寿都町は国が2017年に処分地の適性を示した「科学的特性マップ」で「適地」とされた。
 町長は「反対であれば次の調査に進まないと説明を受けている」と言うが、いったん交付金をもらってしまえば、処分場建設へ国の働きかけが強まるだろう。
 町は19年度から国のエネルギー政策に関する勉強会を始め、本年度は地層処分をテーマにし、理解を広げてきたという。
 今月26日には町議や関係団体との意見交換会を開き、9月にも方針を決める段取りを描く。
 しかし、推進の立場からの一方的な勉強会では不十分だ。反対の知見と突き合わせ、ゼロから議論しなければならない

 都道府県で唯一、核のごみの持ち込みは「受け入れがたい」と宣言した条例を持つ道との調整も欠かせない。風評被害を懸念する周辺町村との協議も必要になる。
 寿都町内にとどまらず、幅広い道民の意見を聴いた上で判断するのが筋ではないか
 処分場を巡っては高知県東洋町が07年に候補地に応募したが、町を二分する町長選で反対派が当選して撤回した。
 道内では宗谷管内幌延町が誘致した地層処分の研究施設が最終処分場になるのではないかとの疑念を持たれ、論争が続く。
 同じような政治的紛争や混乱を繰り返してはならない。