2025年8月7日木曜日

原発に「ドローン」 空からの侵入対策強めよ (西日本新聞 社説)

 7月26日夜、玄海原発上空に三つドローン様の飛行体が約2時間にわたり侵入したことを受けて、西日本新聞が掲題の社説を出しました。
 ウクライナ戦争では爆弾を積んだドローンが攻撃用武器として使われているので、現行の対策を検証し上空の防護策を強固にする必要があると指摘し、電力会社だけでは限界があるので、国や警察と連携し実効性の高い対策を検討してもらいたいと述べています。
 国は早急に検討すべきです。
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【社説】原発に「ドローン」 空からの侵入対策強めよ
                           西日本新聞 2025/8/7
 原発への不法侵入を許せば重大な事態につながる恐れがある。電力会社と国は、上空の警戒態勢や侵入対策を強化すべきだ
 九州電力玄海原発(佐賀県玄海町)で7月26日夜、上空に浮かぶ三つの光を警備員が確認した。独立して発光し、モーター音が聞こえたため、九電は3機のドローンだったとの見方を強めている。
 少なくとも2時間近く、周辺を飛行した可能性がある。原発と周辺地域の上空でドローンを飛ばすことは法律で禁止されており、佐賀県警が捜査している。
 原発がテロや攻撃を受けると、電力供給に支障が出るほか、放射性物質が漏れる危険性もある。原子力規制委員会は電力会社に原発構内への侵入や破壊行為を防ぐ対策を課している。
 今回の事案で再認識させられたのは、上空からの侵入に対する防護の難しさだ。
 国内で販売されているドローンの多くは、原発を含む飛行制限区域を飛べないように設定されている。それでも内蔵されたプログラムを書き換えたり、飛行制限を設定していない機体を使ったりすれば侵入は可能だ。
 玄海原発には佐賀県警の原発特別警備部隊が、ドローンを捕獲する資機材を備えて常駐している。とはいえ、広い敷地の上空にまで監視の目を広げるのは容易でない。夜間はより困難だろう
 原発は有事の際に攻撃対象になるため、防護策は国際的な課題である。ロシアがウクライナに侵攻し、ザポリージャ原発を占拠したのは象徴的だ。原発へのドローン侵入はフランスや米国などでも起こっている。
 電力会社はテロや攻撃の対策として、航空機が衝突しても安全を維持するための施設を整備している。海外でドローンが軍事作戦に使われている現状を考えると、現行の対策を検証し、上空の防護策を強固にする必要がある
 玄海原発の関係自治体などでつくる佐賀県原子力環境安全連絡協議会では、上空も見張れるように監視カメラの改善を求める意見が出た。
 電力会社だけでは限界がある。国や警察と連携し、実効性の高い対策を検討してもらいたい
 情報提供でも改善点が浮き彫りになった。九電は正体不明の光を確認すると、原発の運転に影響を及ぼす可能性があるとみて原子力規制庁に通報した。玄海原発から半径30キロ圏の自治体には自動音声電話などで連絡した。規定に沿った対応だった。
 しかし自治体から住民への周知は不十分だった。翌朝の報道を見て、初めて原発への侵入を知った人もいた。
 原子力規制委はホームページで公開した九電の通報内容を2度にわたり訂正した。
 原発上空への侵入に多数の人が不安を抱いただろう。正確な情報が速やかに共有できる仕組みが欠かせない。


急がれる「空からの攻撃への備え」玄海原発に“謎の物体”飛来【佐賀県】
                           サガテレビ 2025/8/4
7月26日の夜、玄海町の玄海原発で“ドローンと思われる3つの光”とされる不審な飛行物体が目撃されました。原発の安全は確認されたものの、正体や飛来の目的はわかっておらず専門家は空の警備を強化するよう警鐘を鳴らします。
【玄海町民】
「ドローンらしきものということで何の目的でそういうことをするのかなと」
「えたいがしれないから怖い」
7月26日、玄海町の玄海原発に突如現れた“ドローンと思われる3つの光”。
【玄海町防災安全課 日高大助課長】
「核物質防護事案が発生しましたということで連絡が入った。何が起きたんだろうというのが第一印象」
九州電力は「原子力施設の運転に影響を及ぼすおそれがある」として「核物質防護情報」の通報を初めて行なう異例の事態となりました。

「ドローンと思われる3つの光は最初あちらの正門付近で確認されたということです」
午後9時ごろ警備員4人が目撃し、その後常駐している警察の部隊も確認。
少なくとも2時間は原発の構内などを飛行していたとみられ、発電所の南側で確認されたのを最後に行方がわからなくなったということです。
ドローンを取り扱う事業者は「謎の光」についてこう分析します。
【アイテムドローン事業部 山本祐也部長】
「ドローンの場合は灯火がついている場合がほとんど。あとはモーター音がした、そういった話から察するに、ドローンの可能性は非常に高いんじゃないかなと」
2時間とされる飛行時間についてはー。
【アイテムドローン事業部 山本祐也部長】
「一般的に流通しているものでも大体最大50分〜1時間未満ぐらいの機体の方が多いので、一般人が買えるようなドローンではないのは事実かなと思う」
さらに、原発は国が法律で飛行を禁止しているエリア。
一般に広く流通している大手メーカーのものであればメーカーが制限をかけ飛ばせない仕組みになっています。
しかし今回飛行していることなどを踏まえると、謎の光がドローンだとしたら自作や規制外のものである可能性もあるといいます。
【アイテムドローン事業部 山本祐也部長】
「今回はかなり法に触れている感じはする。非常に多くの航空法違反の可能性というのはあるかなと」
全容は明らかになっていないものの、設備に異常はなく安全性に問題はないとする九州電力。
立地する玄海町は原発構内に落下物や不審物はなかったことに安堵する一方で、今回の事態に危機感を覚えています。
【玄海町防災安全課 日高大助課長】
陸上からの侵入は厳重に警戒されているが、上空からの飛来という対策が不足しているのかなと感じている。電力事業者・国など、そういうふうな対策もしっかり考えていただきたいなと思っているところ」
光る物体の飛来による被害は今のところ確認されていませんが、危機管理に詳しい専門家は今後、同様の事態が起こる可能性はあるとして、重要施設における“空の警備”の強化が喫緊の課題だと指摘します。
【日本大学危機管理学部 福田充教授】
「ドローンなどを監視したり撃ち落としたり捕まえるというような措置ができる体制は、まだ日本では整っていない。今回の事例がドローンであったかどうかは別にしても、空からの脅威に対して日本の危機管理を構築していくことは重要
玄海原発への“ドローンと思われる3つの光”の飛来で露呈した「空からの攻撃に対する脆弱さ」。
財政面や法整備などさまざまな壁はありますが、電力会社だけでなく国や自治体なども巻き込んだ対策への早急な着手が求められます。