2016年8月3日水曜日

原発事故時に住民は安全に避難できない

 1日と2日の「女性自身メルマガ」に、高浜原発、伊方原発、川内原発が過酷事故を起こした場合に住民がスムーズに避難できるの問題に関する記事が載りました
 
 “原発銀座”と呼ばれる福井県には高浜原発のほかに大飯、美浜、敦賀などの原発がありますが、それらを含む若狭湾一帯は活断層銀座でもあり、大地震でブロック状になっている地盤が陥没したり隆起したりすればほぼ同時に急激な津波に襲われて大惨事を起こします。
 
 伊方原発は、佐多岬半島という日本一細長い半島の付け根にあるので、半島の住民(4,906人)は原発事故が起きたら原発の前を通って東に避難するか、あるいはフェリーで大分県に避難すしかありません。しかし狭い半島の片側一車線の道路を通って安全に避難することは困難で、放射能が漏れているときに本当に半島にバスを回せるのか、あるいは津波の恐れがあるときにフェリーを回せるのかも大問題です。
 
 アメリカでは、現実的な避難経路が確立されていない原発は即廃炉だということです。住民を被曝させないというのが原発規制基準の目的ですから、それが極めて当然のことなのに日本ではそうなっていません。
 逆に、現実的な避難計画が立てられないことを見越して、日本の新規制基準には住民の避難に関する項目(深層防護 第5層)がすっぽりと抜けています。
 日本で原発を運転しようという発想がそもそも無理だということの証明です。
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高浜原発のトラブル対策に380億円、それでも避難パニックが
 女性自身メルマガ 2016年08月01日
 取材・文/和田秀子
 再稼働にむけた原発のトラブルが相次いでいる。7月末に再稼働が予定されていた伊方原発3号機で17日、原子炉の冷却水を循環させるポンプから水が漏れ出るトラブルがあり、再稼働が8月以降に延期。高浜原発4号機でも、今年2月に再稼働した直後、変圧器周辺でトラブルが起き、原子炉が自動停止。
 「そもそも、5年以上停止させている原発を動かすこと自体が大きなリスク。どんな機械でも、しばらく使っていないものを動かせば不具合が生じる。原発みたいに複雑なシステムなら、なおさらです」
 と話すのは、東芝で原子力プラントの設計をしていた後藤政志さん。リスクのある原発の安全対策はどうなっているのか――。現場を取材した。
 
 高浜原発正門前では、土ぼこりをあげながら、工事車両が行き交っていた。原発事故時に車両がスムーズに通行できるようにと、山をくりぬき“原子力災害制圧道路”を作っているのだ。総工費は、なんと約380億円。財源はすべて国の交付金だ。そんな大金をかけて整備しないといけないほど、再稼働は危険なのか。
 「ここ若狭湾は、地震が起きると同時に津波が襲う可能性があるんです」
 そう語るのは、京都大学名誉教授で地質学者の志岐常正さん。地震と津波のメカニズムを、次のように説明する。
 「高浜原発が立地している若狭湾周辺には、大小さまざまな断層が網の目のように走っています。地震が起きると断層に囲まれてブロック状になっている地盤が陥没したり隆起したりして、地震とほぼ同時に急激な津波を起こす可能性があるんです。リアス式海岸なので、海水の動きは複雑で予測は困難。局所的に水面が異常に高くなることも考えられます」
 地震と同時に津波がおそえば、原発の命綱と言われる冷却用の電源ケーブルもやられてしまう可能性が。“原発銀座”と呼ばれる福井県には大飯、美浜、敦賀などの原発もあり、複合災害になれば大惨事は免れない。高浜原発には、さらに心配な要素がある。
 
 「40年の寿命を越えてなお、再稼働させようとしている老朽原発の1~2号機です」
 と話すのは、記者を高浜原発に案内してくれた敦賀市在住の山本雅彦さん。原発の設計にも携わっていた技術者だ。
 圧力容器(原子炉)に中性子線が当たり続けると、金属がもろくなって低い温度への耐久性が弱くなります。高浜原発1、2号機の場合、注水して原子炉を冷やさなければならないような過酷事故が起きても水を入れられない。圧力容器が冷却水の温度に耐えられず割れる可能性があるんです」
 こうした危険な状況で老朽原発が再稼働されることを、立地自治体の住民はどう思っているのだろうか。
 「お父さんは原発で働いているから、仕事がなくなったら困る。でも自信満々に“安全です”と言えるようになるまで動かさないでほしい!」
 と正直に思いを語ってくれたくれたのは、高浜中学の男子生徒たち。これに対し、地元のオトナたちは口が重く、「そういう質問には答えられません」と足早に立ち去る人がほとんどだった。
 
 しかし原発事故が起きて被害をこうむるのは、立地自治体だけではない。高浜原発の場合、避難計画の作成が義務づけられている原発から30km圏内の人口は、約18万人。うち福井県が約5万4千人なのに対し、京都府はなんと約12万5千人と、圧倒的に多いのだ。肝心の避難計画の中身はどうなのか。
 「原発から5km圏内の住民は、原発で事故が起きたらただちに避難できることになっています。でも10km~30km圏内の住民は、空間線量が毎時500マイクロシーベルトにならないと、ただちに避難できない。甲状腺を被ばくさせないためのヨウ素剤も、事前に配布されていません」
 そう訴えるのは、市の一部が30km圏内に含まれる京都府南丹市の児玉正人さん。彼の言う「毎時500マイクロシーベルト」とは、ICRP(国際放射線防護委員会)が定めた一般公衆の被ばく限度量である「年間1ミリシーベルト」にたった2時間で達するほど高い値だ。
 「つまり、被ばくすることが前提に作られた避難計画なんです! 福島原発事故のときも、第一原発から約40km離れた飯館村に高濃度の放射性物質が飛んできて全村避難になりましたよね。高浜原発で事故が起きたら、京都の歴史的建造物も琵琶湖の水源も汚染されてしまいます。なのに再稼働に際して、近隣自治体には何も説明がないんです」
 
 さらに児玉さんは、内閣府や自治体が定めた避難計画の無謀さを、こう指摘する。
 「南丹市の避難計画では、30km圏内の住民は大型バスで避難することになってます。でも福井からの避難者約3万6千人(内閣府試算)も南丹市の避難者と同じルートを通って自家用車で避難するので、道は大渋滞になるはず」
 しかも、福井からの避難者が放射能測定を受ける場所と、南丹市の地域住民の避難場所が同じ公園に指定されているため、汚染が拡大し、混乱を招くおそれがある。問題の測定と避難場所のひとつ「長谷運動広場」(京都府南丹市)は、山間にある緑に囲まれた美しい公園だ。入り口の道は狭く、一車線しかない。乗用車が2台通るのもやっとで、大型バスが行き交うのは不可能だ。公園のすぐ近くには、重さ9トンまでの車両しか通行できない、通称「9トン橋」がかかっていた。
 「内閣府の官僚は、『大型バスが来たら、9トン橋は通れないので引き返してもらう』って言うんですが、一車線しかない道で避難する乗用車がどんどんやってくるのに、引き返せるのか!」
 国の無責任ぶりに、児玉さんは怒りを露わにしていた。
 
 
 「事故起きたら死ぬ」伊方&川内原発のお粗末すぎる避難計画
 女性自身メルマガ 2016年08月02日
 取材・文/和田秀子
 「ここでの暮らしは、つねに不安がつきまとう。原発で事故が起きたら、逃げ場がありませんから」
 と話すのは、佐多岬半島(愛媛県伊方町)の先端近くに住む平岡綾子さん(仮名・43)。伊方原発は、すぐそばを国内最大級の中央構造線断層帯(活断層)が通っている。4月に起きた熊本地震に誘発されて、伊方付近の断層が動く可能性も指摘されている。また南にある南海トラフで地震が起きると、最大で43万人以上の死者数になる可能性も……(内閣府試算)。
 
 伊方原発は、佐多岬半島という日本一細長い半島の付け根にあるんです。だから、伊方原発から西に住む半島の住民(4,906人)は、原発事故が起きたら原発の前を通って東に避難するしかありません。でも放射能漏れしている原発の前を通って逃げるなんて不可能です」
 と平岡さん。しかし避難経路になっているのは片側一車線の道が多く、なかにはがけ崩れが修復されず、そのままになっているところもあった。政府は、放射能漏れがひどく原発の前を通って逃げられない場合は、佐多岬半島の港からフェリーで大分県に避難する計画も立てている。
 「訓練のときは、迎えのバスが来て港まで連れて行ってくれました。でも地震でガケくずれが起きたら、すぐに道がふさがれてしまう。第一、放射能漏れしているのにバスやフェリーを出してくれる民間会社なんてあるんでしょうか」(平岡さん)
 避難訓練にも参加した国道九四フェリーの広報担当者にも尋ねた。
 「放射能漏れがなければフェリーは出せますけどね。当社も、船員の人命を守らねばなりませんから、(放射能漏れが)あった場合は対応できるかむずかしいですね」
 昨年の避難訓練では、ヘリを導入することも予定されていたが、天候不良で中止になるというお粗末さ。事故がおきれば、逃げ道をふさがれた住民の命は切り捨てられる。
 
 現在、日本で唯一稼働している鹿児島県の川内原発。そこから50kmには桜島がある。桜島は姶良カルデラという巨大火山帯の一部で、これが巨大噴火を起こせば川内原発も破壊的なダメージを受ける可能性がある。
 九電は「敷地周辺のカルデラが、巨大噴火する可能性は十分に小さい。原発の運用期間中は、火山活動のモニタリングを続ける」と説明する。多くの火山学者は「火山噴火の予知は不可能」と批判している。しかし、原子力規制庁も九電の言い分を認めて再稼働に至っている。避難計画も穴だらけだ。介護が必要な高齢者や障害者の避難計画はないに等しい。
 「県や市は、避難計画を各施設に丸投げです。原発事故が起きたら、施設に通う高齢者は自宅に帰せと言うが、ひとり暮らしで認知症がある高齢者も少なくないのに、帰せるわけがありません」
 そう話すのは、川内原発から約17kmにある、いちき串木野市で「デイサービス蓮華」を営む江藤卓郎さん。原発から5~30km圏内の要介護者は“屋内退避”が原則だが、避難が必要になった場合に施設の利用者を受け入れてくれる先は決まっていない。
 市の担当者は「風向きによって避難する方角が変わるので、事前に避難先を決めておいてもあまり意味がない。避難の必要性が生じたら、鹿児島県が予め整備した原子力防災・避難施設等調整システムによって都度、避難先を選定する」と話す。
 「風向きを読むことは、もちろん大事です。でも、事故が起きてから高齢者をいきなり知らない施設に避難させることは不可能です」
 と江藤さん。事前に利用者の家族にアンケート調査を実施し、避難の意向を確認。独自に原発から30km離れた知人の介護施設に受け入れてもらえるよう手はずを整えた。施設に通う80代の女性は、ポツリとこうもらした。
 「原発事故が起きたら、逃げられやせん。もう、ここで死ぬだけよ」
 前出の後藤さんもこう語る。
 アメリカでは、現実的な避難経路が確立されていない原発は即廃炉です。でも日本の場合、避難計画は原子力規制委員会が原発再稼働を進めるために新たにつくった新規制基準の対象外なんです。だったらなおさら、安全がきっちり確認できない原発は再稼働を認めない、という厳しい姿勢で臨まなければ」
 
 今回の取材で出会った、福島県南相馬市から京都府綾部市に避難中の女性も、次のように訴える。
 「福島では、事故のときに逃げ遅れたり、放射能の方向に避難してしまったりして被ばくした人がたくさんいます。その教訓がまるで活かされていない。事故が起きたら、国の言うことを信じずに、逃げられる人はすぐに逃げてほしい。国の指示を待っていたら被ばくするだけです」

03- 原発事故屋内退避の指標を

 滋賀県、国に明確化要望
東京新聞 2016年8月2日
 滋賀県は2日、県の原子力防災専門会議で、原発からおおむね30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の住民は原則的に屋内退避するという国の原子力災害対策指針に関し、退避期間や退避解除の指標を明確化するよう国に求めるとの意見案を明らかにした。
 4月の熊本地震で連続して大きな地震が発生し家屋が倒壊した事態を受けたもので、県は「地震と原発事故の複合災害の際、屋内退避が最適なのか考えるべきだ」としている。
 今後、専門会議の有識者の指摘を踏まえ正式に意見をまとめる。各地の原発についても同様の懸念があるとみられ、注目されそうだ。(共同)

2016年8月2日火曜日

02- 伊方原発運転差し止め訴訟

伊方原発運転差し止め訴訟 原告数100人超え 
大分合同新聞 2016年8月1日 
 (大分)県内の住民が今夏をめどに大分地裁に起こす予定の「伊方原発運転差し止め訴訟」は、原告数が当初の目標としていた100人を超えた。訴訟の準備を進めている市民団体「伊方原発をとめる大分裁判の会」は「今後も200人、300人と、どんどん輪を広げていきたい」としている。
 
 伊方原発をとめる大分裁判の会は7月29日に大分市内で事務局会議を開き、弁護士に訴訟手続きを依頼する委任状を出した原告が112人になったことを確認した。男女別では女性の方が多く、「関心の高さが伝わってくる」という。さらに参加者を募った上で、9月までに提訴する方針。
 伊方原発は四国電力の原発。大分県から最短45キロ先の愛媛県伊方町に立地し、3号機が8月中旬にも再稼働する見込み。原発近くの海域には国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が走っており、同会は「大地震が起きて重大事故に至る可能性が高く、対岸の大分県にも放射能被害が及ぶ」と訴えている。
 同会は訴訟に先行し、既にメンバー4人が伊方3号機の運転差し止めを求める仮処分を大分地裁に申し立てた。仮処分は緊急に申請したため4人に絞ったが、訴訟は「多くの県民の参加を」と呼び掛けている。原告の参加には訴訟費用などで1万円が必要。
 伊方原発を巡っては、松山、広島両地裁でも差し止め訴訟が起き、仮処分も申し立てられている。四国電は松山、広島両地裁で「安全性は十分確保されている」と主張しており、大分でも全面的に争うとみられる。
 原告への参加などの問い合わせは同会の小坂正則事務局長(TEL090・1348・0373)。

2016年8月1日月曜日

核の悲劇 次世代に渡せぬ 原爆投下71年 伊方原発

 広島と長崎に原爆が投下されてから8月で71年になりますが、大分合同新聞が広島県の被爆者たちが今年、瀬戸内海を挟んだ愛媛県伊方原発の運転差し止めを求める訴訟と仮処分の申し立てを広島地裁に起こしたことを伝えました。大分県でも豊後水道を挟んだ伊方原発の運転差し止め訴訟を起こしています。
 同原発で重大事故が起きれば広島も大分も「被害だけ地元(交付金等はない)」になり、生活基盤の破壊などで人格権を侵害される危険があると主張しています
 被爆者たちは「核の恐ろしさを体験した者として、原発は次の世代に渡せない」と訴えています
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核、次世代に渡せぬ 原爆投下71年 伊方原発 
大分合同新聞 2016年7月31日
 【大分合同・愛媛伊方特別支局】 広島と長崎に原爆が投下されてから、8月で71年になる。広島では今年、被爆者たちが瀬戸内海を挟んだ四国電力伊方原発(愛媛県伊方町)の運転差し止めを求める訴訟を広島地裁に起こし、仮処分も申し立てた。同原発で重大事故が起きれば広島も「被害だけ地元」になり、生活基盤の破壊などで人格権を侵害される危険があると主張している。被爆者たちは「核の恐ろしさを体験した者として、原発は次の世代に渡せない」と訴える。
 
 広島県は中国電力の営業エリアだが、広島市から最も近い原発は同社の島根原発(島根県)ではなく、対岸の伊方原発。その関係は、一番近い原発が九州電力の玄海原発(佐賀県)でも川内原発(鹿児島県)でもなく、佐賀関半島から45キロの伊方原発―という大分県と共通している。
 提訴は東日本大震災から5年となった3月11日付。原告は広島など9都府県の男女67人。うち広島原爆の被爆者が16人、長崎原爆の被爆者も2人参加し、伊方1~3号機の差し止めを求めた。一部の原告は、8月11日にも動きだす見込みの伊方3号機の再稼働禁止を求める仮処分も申し立てた。8月3日には約70人が追加提訴する予定だ。
 市民団体「広島市民の生存権を守るために伊方原発に反対する1万人委員会」が昨年11月に提訴方針を決定したのが始まり。原告を募ったところ、賛同する被爆者らが集まった。伊方原発近くの海域には国内最大級の活断層「中央構造線断層帯」が走っており、地震の危険性などを主張している。一方、四国電は「安全性は十分確保されている」などと全面的に争う構えを見せている。
 伊方原発を巡っては、松山地裁でも差し止め訴訟が起き、仮処分も申し立てられている。大分地裁でも大分県内の住民4人が仮処分を申し立て、8月をめどに訴訟も起こす方針。 

高浜原発(1,2号機)の過酷事故対策はなってない

 老朽原発の運転延長で最も懸念されるのは原子炉圧力容器の中性子照射による脆化ですが、実は規制基準に盛り込まれている過酷事故対策自体が有効なのかという問題があり、新規制基準は「すでに存在する原発を再稼働できるように配慮したもの」になっているのではないかと疑われるということです。実際、これまでの規制委の姿勢や言動を見ているとそう考えることで納得がいきます。
 
 東洋経済の記者が、旧原子力安全委員会事務局で技術参与を務め、現在は「原子力市民委員会」のメンバーとして市民の立場で審査内容を検証している滝谷紘一氏にインタビューしました。
 
 滝谷氏は、一例として過酷事故での水素爆発対策を取り上げるとして、規制基準上、様々な問題があることを明らかにしました。
 原子炉が過酷事故を起こして核燃料鞘管の材料であるジルコニウムが1200℃に達すると水素を発生して水素爆発に繋がりますが、そのとき水素濃度が13%を超えると「爆轟(ばくごう:爆発燃焼時の膨張速度が音速を超え衝撃波を伴う現象)」が起きて最大の被害が生じます。
 その対策として各電力会社は水素濃度がそこに達しないように、「イグナイタ」という装置で水素を燃焼させる方法を採ろうとしているそうですが、それ自体爆発の点火源とるという矛盾があるし、当然労働安全衛生規則で禁じられています。
 政府は原子炉や格納容器内は適用範囲外だと説明していますが、格納容器外であってもその近くで作業している労働者にとっては大変な脅威であることは明らかです。
 また、高浜1、2号機では、審査ガイドに従って原子炉圧力容器が破損するまでに全ジルコニウム量合計約82%の反応による水素発生量を求め13%に達しないから安全だと評価し、規制委もそれを認めていますが、川内原発1、2号機の審査では九州電力ジルコニウムの100%が燃焼するとして水素発生量を評価しているので、矛盾しているとしています。
 
 インタビューは専門的で分かりにくい内容ですが、こうした根本的な点でもゴマカシに近いことが行われているということが分かります。
 以下に東洋経済オンラインの記事を紹介します。
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"老朽"高浜原発の過酷事故対策はなってない 
「再稼働のための審査」と専門家が告発
岡田 広行 東洋経済オンライン 2016年07月30日
関西電力・高浜原子力発電所1、2号機の40年を超す運転延長が、6月20日、認められた。福島原発事故後に制定された新たなルールのもとで、原子力規制委員会が40年を超える老朽原発の運転延長を認めたのは初めてのことだ。
 
だが、同原発に関しては原子炉圧力容器の中性子照射脆化など老朽化による安全性低下に懸念が持たれているほか、炉心溶融などシビアアクシデント(過酷事故)対策についても疑問を抱く専門家がいる。旧原子力安全委員会事務局で技術参与を務め、現在は「原子力市民委員会」のメンバーとして市民の立場で審査内容を検証している滝谷紘一氏に、過酷事故時の対策を中心に新規制基準の内容や同基準に基づく審査プロセスの問題点について聞いた。
 
――滝谷さんは福島原発事故以前に原子力の規制当局で原発の安全規制に関わってこられました。
滝谷 私はもともと川崎重工業に研究者として勤務していたが、2000~08年の8年間にわたって、当時の原子力安全委員会事務局に在籍し、主に原子力安全・保安院(当時)が実施した安全規制をチェックする部署で技術専門職として仕事をしてきた。実務としては、保安院による工事計画認可や保安検査、使用前検査などの後続規制の検証を担当した。中部電力・浜岡原発1号機で高圧注水系分岐蒸気配管のギロチン破断事故が起きた際には、原子力安全委員会が設けた事故調査検討会に参加した。
 
再稼働を取り計らう審査ではないのか
――滝谷さんはこれまで岩波書店の月刊誌『科学』への投稿などを通じて、原発の過酷事故対策に問題ありとして警鐘を鳴らしてこられました。関電・高浜原発1、2号機を例に、具体的にどのような点に問題があるとお考えでしょうか。
滝谷 2013年7月に施行された、原発再稼働の必要条件となる新規制基準については、原発の立地評価外しに始まって、地震動・津波評価、プラントの設計評価から防災対策に至るまでさまざまな問題点がある。それらを貫いている根本的な疑問として、「原発の過酷事故対策は住民の安全を守るうえで果たして有効なのか」という問題がある。突きつめて言うと、新規制基準のそれぞれの項目について、すでに存在する原発を再稼働できるように取り計らった規則や審査ガイドになっているのではないかということだ。
一例として、過酷事故での水素爆発対策を取り上げたい。福島原発事故では炉心の溶融を通じて大量の水素が発生し、原子炉格納容器内から建屋に漏れ出したところで酸素と反応して大爆発が起きた。原子炉建屋の上部が吹き飛んだ瞬間のテレビ映像は、多くの国民の脳裏に焼き付いている。
 
「現状の過酷事故対策は、安全対策になっているどころか危険性を増すものが入っている」と滝谷氏は指摘する
新規制基準では、過酷事故時にこれから述べるような水素爆発を防止するための対策を電力会社に求めているが、うまく機能するとは思えない。
まず過酷事故の代表的な想定シナリオとして、原子炉に直結している大口径の配管が破断し、かつすべての交流電源が喪失する場合を取り上げる。
そうなると、冷却水が失われ、電動ポンプのある緊急炉心冷却装置も格納容器スプレイ装置も動かない。こうした場合にはわずか20分ほどで原子炉の炉心が溶融し始める。そこで問題になってくるのが大量の水素の発生だ。
ジルコニウム合金を材料とする燃料被覆管が1200℃を超す高温状態で水と接触すると、急激な化学反応を起こして水素が発生する。また、溶融した炉心が原子炉圧力容器の底部を破損させて格納容器の床のコンクリートに接触すると、「溶融炉心・コンクリート相互作用(MCCI)」により、コンクリートが熱分解されて炭酸ガスと水蒸気が生じ、溶融炉心に残っているジルコニウムと水との反応によってここでも多量の水素が発生する。
原子炉格納容器内の水素濃度が高まると爆轟(ばくごう=爆発現象の最も厳しい形態で、衝撃圧が発生)防止の判断基準値13%を超える可能性がある。そのため、新規制基準の審査ガイドでは13%以下になるように格納容器破損防止対策を求めている。問題はその対策に実効性があるのか、また、水素発生の評価が妥当なのかだ。
 
水素爆発を防ぐとされる「イグナイタ」の危険性
――具体的にはどのようなことでしょうか。
滝谷 水素爆発を防止するための対策として、高浜1、2号機も含めて加圧水型原子炉(PWR)では「イグナイタ」(ヒーティングコイルに通電して加熱し、水素を燃焼させる装置)の設置を各電力会社が打ち出している。だが、この対策には問題がある
労働安全衛生規則(厚生労働省令)第279条では「危険物等がある場所における火気等の使用禁止」が定められている。水素ガスを意図的に燃焼させて濃度を下げることにより水素爆発を防ぐというイグナイタは、爆発の点火源となるおそれがあり、その使用は危険性が高い。原発で働く労働者の安全を脅かすことはもちろん、格納容器の破損により周辺の住民に甚大な放射線災害を与えると言わざるをえない。
――関西電力にコメントを求めたところ、原子炉格納容器内の水素濃度の高まりを抑えるためにイグナイタを使用する際には、格納容器内に労働者がいないことを確認するので、労働者の安全は確保できているということを理由に、労働安全衛生規則には抵触しないと回答しています。
滝谷 格納容器内に労働者がいなければ規則に抵触しないという考え方はおかしい。その理由は、格納容器内での水素爆発により格納容器破損個所から流出する放射能、熱風・高温水蒸気、瓦礫などにより格納容器外にいる運転員、作業員の安全が脅かされるからである。
福島原発事故では、格納容器が破損してそこから原子炉建屋内に流出した水素が爆発した。その際、屋外で注水作業に従事していた作業員が負傷し、消防車が破損する事故も起きている。
 
関電による水素発生量の評価は妥当でない
――厚生労働省によれば、労働安全衛生規則第279条は可燃性ガスに関する規制であり、原子力施設では常時水素を扱っているわけではないという理由から、この条文は適用されないと説明しています。
滝谷 これも理が通らない説明だ。なぜなら、一般産業施設においても水素爆発が問題になるのは常時ではなく、原子力施設と同じ様に設備機器の故障や人為ミスによる事故時である。事故時に生じるおそれのある水素爆発から労働者の安全を守る必要があることは、水素を常時扱っているかどうかには何ら関係しない。
――関電による計算結果についてはどう思われますか。
滝谷 炉心溶融が起きても格納容器内の水素濃度が13%以下に収まるという計算結果も信頼性が乏しい。具体的には高浜1、2号機では水素濃度が計算モデルや計算条件の不確かさを考慮に入れて最大約11.1%であり、爆轟防止基準を下回ることを確認していると規制委の審査書は記しているが、過小評価だと思われる。
 
関電は審査ガイドに従って、原子炉圧力容器が破損するまでに全ジルコニウム量の75%が水と反応することに加えて、前述の溶融炉心・コンクリート相互作用(MCCI)による発生を解析コードで計算して合計約82%の反応による水素発生量を求め、規制委も関電の評価を妥当としている。だが、川内原発1、2号機の審査では九州電力がMCCIの解析コードによらずにジルコニウムの全反応量を考えられる最大値の100%として、水素発生量を評価している。つまり、川内原発のほうがはるかに厳しい条件で評価している。
私の試算によれば、川内原発と同様の仕方で評価した場合、高浜1、2号機の水素濃度は約13.3%であり、判断基準をオーバーしてしまう。関電が計算に用いた解析コードMAAPは、水中条件での精度検証がされておらず、しかも国際的な専門家による検討では、相互作用を過小評価する特性があると報告されている。
この過小評価の問題については、高浜3、4号機についての新規制基準に基づく適合性審査書案のパブリックコメント(意見募集)で意見を提出したが、規制委はまともな回答をしていない。また、審査が先に終わった他のPWRと同じように、高浜1、2号機を対象とした過酷事故シミュレーションに関して、別の解析コードを用いたクロスチェックをしていないことも問題だ。
 
付け焼き刃の対策でむしろ危険度を増している
――本来の安全対策はどうあるべきだとお考えですか。
滝谷 採用されている過酷事故対策は、原子炉施設本体はほぼそのままにして、代替格納容器スプレイポンプ、可搬式の電源車、注水車など付け焼き刃的であるとともに、いずれも自動起動でなく手動操作によるものであり、作動の信頼性を欠いている。過酷事故対策は、抜本的な安全対策になっているどころか、危険度を増やす対策が入っていると言わざるをえない。
原子炉格納容器の下部に水を注入して落下した溶融炉心を冷却する方法は、注水の実施そのものに不確実性があるうえに、水蒸気爆発の危険性がある。これについても労働安全衛生規則第249条「水蒸気爆発を生じさせないために、溶融高温物を取り扱うピットの内部には水を浸入させないこと」に違反している。つまり、冶金工場や溶鉱炉など一般産業分野の「常識」に反しているのである。
このように、格納容器内の水素爆発防止対策、溶融炉心冷却対策とも、妥当性を欠くどころか、危険ですらある。欧州の新型炉では「コア・キャッチャー」と呼ばれるドライ(水を用いない)な状態で溶融炉心を受け止める対策が導入されている。これは、原子炉格納容器の底部に耐熱材料でできた受け皿を設置することで溶融炉心とコンクリートの相互作用を防ぐとともに、溶融炉心を長期的に冷却することを目的とした設備だ。
 
すでに建てられた日本の原発に今から導入することは容易ではないだろうが、仮にも再稼働をめざすのであれば、規制委は設置を義務付けるべきだろう。それができない原発は廃炉にするしかない
    
以上のようなインタビューを踏まえ、記者は、原子炉格納容器の下部に水を注入して落下した溶融炉心を冷却する方法が水蒸気爆発を引き起こすおそれがある点において労働安全衛生規則第249条に違反しているのではないかとの滝谷氏の問題提起について、関西電力、厚生労働省、原子力規制庁に見解を求めた。
 
労働者の安全確保のための審査が行われていない
関電は水蒸気爆発等の労働者の安全問題について、格納容器内に労働者がいないことを確認してから注水することを理由に労働安全衛生規則第249条には違反していないと回答している。また、厚労省は同規則第249条が適用されるのは製鉄所など溶けた金属をドライな状態で取り扱う施設を想定しており、原発では重大事故時に溶融炉心を水で処理することを想定しているために違反しているとは言えないと回答している。
 
一方、規制庁は新規制基準の一部を構成する「炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策の有効性評価に係る標準評価手法(審査ガイド)」の策定に際して、労働安全衛生規則の条文を満たしているか否かについて、厚労省の担当部局に確認の手続きは実施していないと回答している。いずれにしても労働安全衛生規則に照らしてきちんと審査が行われた事実はない

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2016年7月31日日曜日

31- もんじゅ新運営主体の選定は難航 回答期限過ぎる

 文部科学省高速増殖炉もんじゅの運営主体となる新たな組織を模索していますが、まだ見通しが立たず難航しています。規制委が回答期限のめどとした時期は既に過ぎています。
 新組織は、現在の運営主体である日本原子力研究開発機構から関係部門を切り離し、現地職員を一定程度引き継ぐことを検討しているようですが、規制委「看板の掛け替えは認めない」との立場です
 
 規制委「看板の掛け替えは認めない」立場を貫けば、もんじゅを運営できるところがなくなり、結局廃炉にすることになるでしょう。
 もんじゅはもしもナトリウム漏れ事故が起きれば対処のしようがなく、危険この上ない装置であることに加えて、いつ完成するのかの目途も全く立っていません。それなのに全く動いていないもんじゅの維持1日あたり5,500万円(年間200億円)かかるとされています
 そんな百害あって一利もない装置は早く廃炉にすべきです。 
 
注 ※ そのうち「液化ナトリウム」が固化しなように保温するための電力料金は1日当たり330万円です。
     それでは残りの1日5,200万円は一体何に使われているのでしょうか?
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もんじゅ新運営主体の選定は難航 規制委勧告の回答期限過ぎる
福井新聞 2016年7月29日
 原子力規制委員会から運営主体を変更するよう勧告された高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)をめぐり、文部科学省は5月末に有識者検討会がまとめた報告書を基に新たな組織を模索しているが、まだ見通しが立たず難航している。規制委が昨年11月に勧告した際に回答期限のめどとした半年は既に過ぎており、関係者からは「内閣や政府全体で取り組まないと解決しない」との声も出ている。
 
 有識者検討会がまとめた報告書は、具体的な運営主体を示さず、新組織が備えるべき要件として▽冷却材のナトリウム取り扱い技術の確実な継承▽原子力分野以外の外部専門家を半数以上入れた経営協議体の設置―などを挙げた。文科省はこれらの要件を基に、国の権限が強く及ぶ特殊会社や認可法人などの形態を軸に模索している。
 文科省の担当者によると「どういう組織形態が良いのか、関係省庁と相談しながら検討している。(新組織を)近く決めるといった状況ではない」。規制委への回答を「夏までをめど」としているが、不透明な情勢だ。
 
 新組織は、現在の運営主体である日本原子力研究開発機構から関係部門を切り離し、現地職員を一定程度引き継ぐことを検討。原子力機構も「(新組織は)機構メンバー抜きには考えられない」(児玉敏雄理事長)との思いで、保守管理の改善状況をまとめた報告書を規制委に提出する方向で最終調整している。
 ただ、規制委が報告書をどう扱うかは分からない上、新組織について「看板の掛け替えは認めない」との立場。安全運転を担保する体制が確立できなければ、廃炉も辞さない姿勢を示している。
 文科省は保守管理体制を整えるため、原発を運営する電力会社などに人的支援を求める方向とみられるが、まだ表立った対外的な交渉に入っていない。
 
 電気事業連合会は「技術的な知見がない」として依然、もんじゅの運営への関与に否定的な姿勢。ある電力幹部は「文科省からの要請はない。もんじゅの設計から携わっていないし、責任を持って運営管理できない」と漏らす。
 
 政府全体としての動きも見えてこない。福井県関係の国会議員の1人は「核燃料サイクル政策を考えると経済産業省も人ごとではないが、様子見しているような状況」とみる。ただ「政府はもんじゅの廃炉までは考慮していない」とし、仮に文科省だけで新組織の課題を解決できなければ「最後は官邸の判断になる」との見方を示す。
 
 一方、原子力機構の第三者委員会「もんじゅ安全・改革検証委員会」の委員長を務める阿部博之・科学技術振興機構特別顧問は「もんじゅの本質的な安全について、規制委と原子力機構の考えに食い違いがある。その共通理解がないと、新組織になったとしても同じことを繰り返す」と警鐘を鳴らす。
 東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえたもんじゅ特有の新規制基準を規制委は早急につくるべきだとし「政府として、もんじゅの将来目標や方向性をはっきり示す必要がある」と指摘している。