広島高裁の仮処分決定を受けて四国電力の西崎明文常務は17日、「再びの停止決定は極めて遺憾で、到底承服できない」「一刻も早く停止決定を取り消してもらえるよう不服申し立てをする」と語気を強めたということですが、単に早く再稼働させたいという企業の欲望を強調したに過ぎません。
電力会社は万一深刻な災害をもたらした場合でもロクな賠償が出来ず、それもすべて国民の負担で行うしかない企業なのに傲慢というしかありません。
広島高裁の決定は、基準地震動に関しては「『中央構造線断層帯長期評価』の記載などを考慮すると、中央構造線自体が正断層成分を含む横ずれ断層である可能性は否定できないのに、四国電は十分な調査をしないまま再稼働を申請し、規制委は問題ないと判断したのは、その過程に過誤や欠落があったと言わざるを得ない」と述べ、また阿蘇噴火による降灰問題については、「過去最大の噴火規模である阿蘇4噴火から判断すると、破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火を考慮すべきで、噴出量を20~30立方キロメートルとしても、四国電が想定する約3~5倍に上るのに対して、四国電の降下火砕物や大気中濃度の想定は過小で、それを前提とした申請および規制委の判断は不合理である」と明確に述べています(添付の「決定要旨」参照)。
住民に決して危害を与えてはならない筈の企業が、目先の利害にとらわれて感情的な発言をして良いような問題ではありません。
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四国電常務「承服できない」 伊方3号機停止、不服申し立てへ
共同通信 2020/1/17
広島高裁の仮処分決定を受けて四国電力は17日、高松市の本店で記者会見し、西崎明文常務は「長期間、高度で専門的かつ厳正な審査を経て世界最高水準の基準をクリアしている。再びの停止決定は極めて遺憾で、到底承服できない」と強調した。
西崎常務は「これまで複数の訴訟で、丁寧に主張や立証してきた」とし「一刻も早く停止決定を取り消してもらえるよう不服申し立てをする」と語気を強めて繰り返した。広島高裁から四国電の活断層の調査が「十分ではない」と指摘された点について、黒川肇一原子力部長は「不十分な調査をし、原子力規制委員会に審査をしていただいたわけではない」と反論した。
【参考記事】
伊方原発 差し止め決定要旨 「地震や火山過小評価」
産経新聞 2020.1.18
四国電力伊方原発3号機の運転を差し止めた17日の広島高裁の決定要旨は次の通り。
【主文】
第一審判決の言い渡しまで、伊方原発3号機を運転してはならない。
【司法審査の在り方】
伊方原発から約三十数~四十数キロの距離に住む抗告人らは、放射性物質が放出される事故が起きた際、重大な被害を受けると想定される地域に住む者といえる。そのため、被害を受ける具体的な危険がないことは四国電が立証する必要がある。新規制基準に不合理な点がなく、伊方原発が審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点がないと示すことで立証できる。
【地震に対する安全性】
伊方原発近くの中央構造線断層帯の震源断層について、四国電は不確かさを考慮して基準地震動を策定しているが、地震動評価でその影響はなく、規制委の判断が不合理とは言えない。
四国電は詳細な海上音波探査をし、佐田岬半島北岸部に活断層は存在せず、活断層が敷地に極めて近い場合の評価は必要ないとして地震動評価を行っていない。中央構造線断層帯長期評価(第2版)には、佐田岬半島沿岸に存在すると考えられる中央構造線を「現在までのところ探査がなされていないために活断層と認定されていない。今後の詳細な調査が求められる」と記載があり、海上音波探査では不十分なことを前提にしていると認められる。
同長期評価の記載などを考慮すると、中央構造線自体が正断層成分を含む横ずれ断層である可能性は否定できない。その場合、地表断層から伊方原発敷地までの距離は2キロ以内で、仮に十分な調査で活断層だと認められた場合、地震動評価をする必要がある。しかし、四国電は十分な調査をしないまま原子炉設置変更許可申請し、規制委は問題ないと判断した。規制委の判断には、その過程に過誤や欠落があったと言わざるを得ない。
【火山事象の影響による危険性】
新規制基準のうち、火山ガイドは火山の危険性を立地評価と影響評価の2段階で評価することとしている。立地評価のうち、検討対象火山の噴火時期や程度が相当前の時点で予測できるとする部分は不合理である。過去最大の噴火規模である阿蘇4噴火から判断すると、その火砕流が伊方原発敷地に到達した可能性が十分小さいと評価することはできない。
阿蘇4噴火のような破局的噴火の発生頻度は極めて低く、火砕流が到達する可能性を否定できないからといって、それだけで立地不適とするのは社会通念に反する。
破局的噴火に至らない程度の最大規模の噴火、噴出量が数十立方キロメートルの噴火規模を考慮すべきで、その噴出量を20~30立方キロメートルとしても、四国電が想定する約3~5倍に上る。四国電の降下火砕物や大気中濃度の想定は過小で、それを前提とした申請および規制委の判断は不合理である。
【保全の必要性および担保の要否】
伊方原発は現在稼働中で、その運用で抗告人らは重大な被害を受ける具体的な危険があり、保全の必要性が認められる。現在の科学技術水準では火山の噴火時期や規模は予測できても数日から数週間程度前にしかできないから、確定判決前にそのような事態が生じることもあり、保全の必要性がないとは言えない。