2020年1月18日土曜日

伊方原発3号機 広島高裁が運転認めない画期的な仮処分決定

 山口県の住民3人が、伊方原発3号機の運転差し止めを求めた仮処分申請の即時抗告審が17日、広島高裁であり、森一岳裁判長は一審の山口地裁決定を取り消し、四電に運転差し止めを命じる決定を出しました。11年3月の福島原発事故以降5例目の運転差し止めの判断です。
 抗告審で四電は、最も近い活断層伊方原発の沖合8キロ地点にあると主張しましたが、住民側は原発の沖合600メートルにある中央構造線も活断層の可能性があると主張し、地震が起きた場合は四電が想定する2~3倍の揺れが生じるとの意見書を提出していまし

  17日の決定で森裁判長は、伊方原発の敷地の近くに地震を引き起こす活断層がある可能性を否定できないとしたうえで「原発までの距離は2キロ以内と認められるが、四電は十分な調査をせず、原子力規制委が問題ないと判断した過程には誤りや欠落があったと言わざるをえない」と指摘しました。
 また火山噴火に対する安全性について、阿蘇山で噴火が起きた場合の火山灰などの影響が過小評価されているという判断を示しました。鉱物性の火山灰の影響を規制委を含めて電力会社が過小評価していることに対する痛烈な指摘です。

 高裁で一審の決定を覆して原発の運転を差し止めたのは実に画期的なことです。森一岳裁判長は今年定年を迎えるということで、その前に決定を下すべく審理を進めて来たということです。良心に基づいた決定を下そうとした信念のほどを窺わせます。

 弁護団長の中村覚弁護士は「全面勝訴と言っても過言ではない決定。阪神・淡路大震災から25年となるこの日に、地震の脅威について裁判所が強く警告してくれた今回、問題となったのは中央構造線で、敷地のすれすれを通っている。これが動いた場合、大きな事故が起きると主張してきたが、四電などが見落としてきたこうした可能性を認めてくれた裁判長に敬意を表したい」と述べました。

追記)関電大飯原発3、4号機の運転差し止を命じた14年5月の福井地裁判決など、これまで運転差し止めを認めた4例はいずれも上級審で判断が覆っています。
   最高裁の意向を忖度した結果としか思われません。
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伊方原発3号機 運転認めない仮処分決定 広島高裁 
NHK NEWS WEB 2020年1月17日
愛媛県にある伊方原子力発電所3号機について広島高等裁判所は、地震や火山の噴火によって住民の生命や身体に具体的な危険があるとして、運転を認めない仮処分の決定を出しました。現在は定期検査のため停止中ですが、検査が終了する4月以降も運転できない状態が続く見通しになりました。伊方原発3号機が司法判断で運転できなくなるのは平成29年以来、2度目です。

山口県南東部にある島の住民3人は、四国電力に対して伊方原発3号機を運転しないよう求める仮処分を申し立てましたが、去年3月山口地方裁判所岩国支部が退けたため抗告していました。
17日の決定で広島高等裁判所の森一岳裁判長は、伊方原発の敷地の近くに地震を引き起こす活断層がある可能性を否定できないとしたうえで「原発までの距離は2キロ以内と認められるが、四国電力は十分な調査をせず、原子力規制委員会が問題ないと判断した過程には誤りや欠落があったと言わざるをえない」と指摘しました。
また火山の噴火に対する安全性については、熊本県の阿蘇山で噴火が起きた場合の火山灰などの影響が過小評価されているという判断を示しました。
そして、地震や火山の噴火によって住民の生命や身体に重大な被害が及ぶ具体的な危険があるとして、山口地裁岩国支部で仮処分に続いて審理されている正式な裁判の判決が出るまでの間、伊方原発3号機の運転を認めないとしました。
伊方原発3号機は先月から定期検査のため運転を停止中ですが、仮処分は直ちに効力が生じる一方、正式な裁判の審理は、当面、続くとみられることから、検査が終了する4月以降も運転できない状態が続く見通しになりました。

四国電力は、17日の決定の取り消しを求めて異議を申し立てる方針で、申し立てがあった場合、広島高裁の別の裁判長が改めて判断する見通しです。
伊方原発3号機をめぐっては、平成29年に広島高裁が運転しないよう命じる仮処分の決定を出していて、司法判断で運転できなくなるのは2度目です。
前回はおよそ1年後に広島高裁の別の裁判長がこの決定を取り消したため、その後、再稼働しました。

四国電力「極めて遺憾 到底承服できるものではない」 
四国電力は高松市で記者会見し、決定の取り消しを求めてすみやかに異議を申し立てる考えを示しました。
高松市の本店で開かれた四国電力の会見では西崎明文常務が「極めて遺憾であり、到底承服できるものではない」と述べ、決定の取り消しを求めてすみやかに異議を申し立てる考えを示しました。
また17日の決定の中で、四国電力が活断層について十分に調査をしなかったと判断されたことや、火山灰などに対する想定が小さすぎると指摘されたことについて、四国電力は「決して不十分な調査をしておらず、火山についても適切に評価している」と述べました。
四国電力は定期検査で停止している3号機をことしの春に再稼働させる計画を立てていましたが、今回の決定で運転できない状態が続けば、1か月当たり35億円の損失が見込まれるとして、業績の悪化が避けられないという見通しを示しました。

伊方町長「安全で安定的な運転に影響を与えないか危惧」 
愛媛県伊方町の高門清彦町長は「司法判断であり事実として受け入れるよりほかはない。ただ、司法判断によって予定外の停止や運転が繰り返されることになり、これが安全で安定的な運転に影響を与えないか危惧する」というコメントを出しました。

電事連会長「極めて残念」 
大手電力会社でつくる電気事業連合会の勝野哲会長は、極めて残念だとしたうえで、原発の安全性の確保に全力を尽くし、立地地域などの理解が得られるようにしたいと述べました。
   (中 略)

原子力規制庁「新規制基準は合理的」 
   (中 略)

伊方原発3号機 過去に一度 仮処分で停止 
伊方原発3号機は、5年前に新たな規制基準の審査に合格し、平成28年8月に再稼働しました。
しかし、定期検査中の平成29年、広島高等裁判所が運転差し止めを命じる仮処分を決定し、その後、運転ができない状態が続きました。
そして、よくとしの平成30年9月、別の裁判長が決定を取り消したことを受けて、運転を再開しました。
四国電力によりますと、伊方原発3号機の運転ができなかったことで、代わりとなる火力発電所を運転させるための燃料費が必要になり、1か月、およそ35億円の損失が出たということで、再び運転の停止が長引けば、経営への影響は避けられないとみられています。

運転停止の仮処分決定 2例目 
福島第一原発の事故のあと、裁判所が原発の運転停止を命じる仮処分を決定したのは今回で4例目で、伊方原発では2例目です。

高浜原発 3号機と4号機 
このうち福井県にある高浜原発3号機と4号機では、平成27年4月と平成28年3月に2度、運転停止の仮処分が出されました。
具体的には、平成27年4月には、福井地方裁判所が再稼働しないよう命じる仮処分を決定し、再稼働ができない状態となりました。
その後、福井地裁の別の裁判長が平成27年12月、仮処分の決定を取り消したことから、関西電力は、翌月の平成28年1月に3号機を再稼働させました。
続いて4号機は、翌2月に再稼働させましたが、すぐにトラブルで停止しました。
平成28年3月には、大津地方裁判所が高浜原発3号機と4号機の運転停止を命じる仮処分を決定したため、運転中だった3号機は、決定の翌日、原子炉を停止しました。
これは、司法の判断で運転中の原発が停止した初めてのケースとなりました。
この仮処分の決定は、1年後の平成29年3月に大阪高等裁判所が取り消したことで、高浜原発3号機と4号機は再び運転を始めました。

伊方原発3号機の場合 
四国電力の伊方原発3号機は、定期検査のため運転を停止していた平成29年12月、広島高等裁判所が期限つきで運転しないよう命じる仮処分の決定を出し、再稼働ができなくなりました。
しかし、平成30年9月には、広島高裁の別の裁判長が決定を取り消して運転を認めたため、翌10月、およそ1年ぶりに原子炉を起動し再稼働しました。
そして、17日、広島高裁は、再び運転を認めない仮処分の決定を出しました。
これを受けて、伊方原発3号機は、現在行っている定期検査が終了する、ことし4月以降も運転ができない状態が続く見通しとなりました。

全国の原発の状況 
国内には、廃炉が決まった原発を除くと、15原発33基あります。
このうち、これまでに原子力規制委員会による新しい規制基準の審査に合格し、再稼働したのは、伊方原発3号機を含めて5原発9基です。
具体的には、鹿児島県にある川内原発1号機と2号機、佐賀県にある玄海原発3号機と4号機、福井県にある高浜原発3号機と4号機、大飯原発3号機と4号機、それに愛媛県にある伊方原発3号機です。
このほか、青森県にある大間原発と、島根県にある島根原発3号機を含む18基で、再稼働の前提となる審査が申請されています。

愛媛県知事「安全確保に万全を期す」 
愛媛県の中村時広知事は「裁判の当事者でないので、広島高裁の決定に対するコメントは差し控えるが、県としては今後とも、県民の安全・安心を守るため、必要と思われることについて、四国電力や国に対応を求めていくなど、伊方原発の安全確保に万全を期していく」というコメントを出しました。

弁護団長「全面勝訴と言っても過言ではない決定だ」 
午後2時すぎ、広島高裁前では支援者らが「勝訴」などと書かれた紙を掲げ、集まった人たちからは拍手や歓声が上がりました。
弁護団長の中村覚弁護士は「全面勝訴と言っても過言ではない決定だ。阪神・淡路大震災から25年となるこの日に、地震の問題などを理由に裁判所が差し止めの決定を出したことは、地震の脅威について、裁判所が強く警告してくれたのだと思う。本当によかった」と話していました。
また中村覚弁護士は記者会見で「今回、問題となったのは中央構造線で、敷地のすれすれを通っている。これが動いた場合、大きな事故が起きると主張してきたが、四国電力などが見落としてきたこうした可能性を認めてくれたと捉えていて、裁判長に敬意を表したい」と述べ、仮処分の決定を評価しました。
そのうえで、中村弁護士は「活断層についての判断は画期的で、仮処分の決定は噴火の想定が甘いと指摘している。引き続き、こちらの主張をしっかり整理していきたい」と述べました。

伊方町の住民は 
伊方原発3号機の運転を認めない仮処分の決定について、原発がある愛媛県伊方町の住民に話を聞きました。
このうち民宿を経営する70代の男性は「大変ショックを受けている。運転できなくなれば、地元の経済へのダメージが心配だ」と話していました。
一方釣具店を営む70代の男性は「今回の決定には賛成だ。東日本大震災の福島のように原発事故が起きたら、この地域はつぶれてしまう。経済よりも安全のほうが大切だ」と話していました。

梶山経産相は 
   (中 略)