伊方原発は、全電源の停電(短時間)を起こしたり、核分裂を抑える制御棒を1本(全数は48本)を7時間にわたって引き抜いたなどの重大な事態につながりかねないトラブルを重ねています。
高知新聞が「原発を扱う適格性を疑う」とする社説を掲げました。
これまで東電に対しては適格性を疑う指摘が繰り返されてきましたが、その疑問はどうも電力会社一般に向けられるべきもののようです。しっかりして欲しいものです。
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社説 【伊方トラブル】原発を扱う適格性を問う
高知新聞 2020.01.28
定期検査中だった四国電力伊方原発3号機でトラブルが相次いでいる。ほぼ全ての電源を一時的に喪失したほか、原子炉内の制御棒が誤って引き抜かれるなど重大事態につながりかねないものばかりだ。
3号機は広島高裁が運転差し止めの仮処分を決定。四電は不服申し立てを行う方針だが、トラブルを受けて当面見送る。当然である。原因究明と再発防止の徹底なしに運転再開は認められない。
25日に発電所内が一時停電。非常用ディーゼル発電機が起動するなどして約10秒後に復旧した。「全電源喪失」は東日本大震災の際、津波に襲われた福島第1原発で三つの原子炉の炉心溶融(メルトダウン)につながった。短時間とはいえ、伊方でも全電源喪失が起きたことはショッキングである。
12日には原子炉内の制御棒48体のうち1体が誤って約7時間、引き抜かれた。核燃料を取り出すため、原子炉格納容器の燃料固定装置上部をクレーンで引き上げようとして、一緒につり上がったという。制御棒は核分裂を抑える重要な装置であり、あってはならないミスである。
20日にも使用済み核燃料プール内で、燃料の落下を示す信号が発信されている。実際に落下はなく、点検装置に正しく挿入されなかったためとみられている。
いずれも外部への放射能漏れなどはなかった。しかし原子力規制委員会は、制御棒引き抜きについて「軽微とは思い難い。四電の捉え方、深刻度が軽すぎるのではないか」と指摘している。短期間に立て続けにトラブルが起きた背景に、緊張感を欠いた四電の姿勢があるのだとしたら問題の根は深い。
伊方3号機は、原発から出る通常の使用済み核燃料を加工した「プルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料」を使うプルサーマル発電を行っている。今月、使い終わったMOX燃料を全国で初めて取り出したが、制御棒トラブルはその準備作業中に起きた。
安全の上にも安全が要求される原子力を扱う事業者として、四電の適格性が問われる事態と言わざるを得ない。
広島高裁の仮処分決定に対する不服申し立ての時期について、四電の長井啓介社長は「だらだらと引き延ばすことは考えていない。(決定に)問題点があれば、当然異議を主張していくべきだ」とする。だが停電の原因さえ分かっていない現状で運転再開を焦っても、地元や国民の理解は得られない。
なぜトラブルが続くのか。原発に携わる社員の労務管理は適切か。安全意識は徹底されているのか。しっかり検証し、説明責任を果たさなければならない。
ひとたび事故が起きれば本県への影響も甚大だ。県と四電との勉強会は、2018年2月以来開かれていない。これを再開するなどして県は伊方原発に関する情報を収集し、県民に伝えるべきである。