2020年1月9日木曜日

原発のない国へ  国は送電線活用促進を/会津電力農業ハウスで地産地消

 安田陽・京大特任教授によると東北電力の基幹送電線34路線の平均利用率は12%にとどまっているにもかかわらず、東北電力は電線の容量を理由に出力50キロワット以上の発電の接続を拒否していますこの妨害問題を国の権限で解決しない限り、再生エネ発電は普及・拡大しません。そこまでして再生エネの普及を妨害するのは原発の再稼働に不都合だからに他なりません。
 会津電力は苦肉の策として、「次世代農業ハウス」において地域で発電した再生可能エネ発電をハウス内で消費する「地産地消」方式を行っています。いわゆる「分散型発電」の試みです。
 東京新聞がシリーズ<原発のない国へ 福島からの風>取り上げました。
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<原発のない国へ 福島からの風>
「ご当地電力」 支援不可欠 国は送電線活用促進を
東京新聞 2020年1月8日
<原発のない国へ 福島からの風>
「ご当地電力」 支援不可欠 国は送電線活用促進を
東京新聞 2020年1月8日
 会津電力による次世代農業ハウス(福島県会津美里町)は、地域で発電した再生可能エネルギーを地域で使う「分散型発電」の試みとして注目される。原発事故後に芽吹いた地域資本による再エネ開発の機運をしぼませないため、大手電力が独占運営する送電線を有効活用させる政府の側面支援策も不可欠だ。(池尾伸一)

 原発事故後、脱原発意識の高まりから再エネで発電する「ご当地電力」が各地で生まれた。福島でも会津電力はじめ、企業や市民が出資・運営する電力会社が多数発足。同県も県内の需要を100%再エネで発電する計画を立てた。関東では、「調布まちなか発電」(東京都調布市)、「市民エネルギーちば」(千葉県匝瑳(そうさ)市)などが誕生した。

 だが、事故から約九年がたち、脱原発を目指す市民と政府の政策とのギャップが目立つ。政府は、二〇三〇年度時点での発電に占める原発比率を20~22%まで高める一方、一八年度17%の再エネは最大22~24%にとどめる方針。再エネを買い取る固定価格を太陽光については急速に引き下げ、大手電力も電線の容量を理由に出力五十キロワット以上の発電の接続を拒否している。
 こうした中、ご当地電力の活動は停滞している。会津電力も、太陽光の新規立地は凍結を余儀なくされている。農業ハウスによる地産地消は、幾重もの制約に直面し、活路を見いだす試みだ。その場で消費できれば大手電力が受け入れを拒んでいても関係ないし、固定価格の引き下げの影響も受けない。自然災害時の非常用電源にも活用できるので潜在能力は高い。
 ただ、蓄電池の価格は数百万円とまだ高く、地産地消型プロジェクトは農業やオフィスビル、ホテルなど営業用の施設向けから徐々に広げていくしかない。

 安田陽・京大特任教授によると東北電力の基幹送電線三十四路線の平均利用率は12%にとどまっており、実際には再エネ受け入れ余力が大きいことを示している。「ご当地電力」の本格成長に向け、大手電力の送電網独占を排し、柔軟な運用で再エネ受け入れを促す透明なルール作りが急務だ。
<会津電力> 東京電力福島第一原発事故を受け、脱原発を目指す市民や地元企業により2013年設立。市民や地元市町村が出資。本社は福島県喜多方市。初代社長は同市の造り酒屋・大和川酒造店当主の佐藤弥右衛門氏(現会津電力会長)が務めた。太陽光発電所約80カ所のほか小水力発電所を運営。風力発電所も計画中。


<原発のない国へ 福島からの風>
屋根で発電 農業ハウス 会津電力の地産地消、今月稼働
東京新聞 2020年1月8日
 東京電力福島第一原発事故から九年となる福島県の会津地方で、市民らが出資する再生可能エネルギー会社「会津電力」が今月から、必要な電力を全て太陽光から賄う次世代農業ハウスを稼働させる。福島では東北電力が「送電線に空きがない」として、再エネ発電の新規の受け入れを止めており、売電型の再エネ業者は苦戦している。会津電力は地産地消型を進めることで、電力の接続問題の壁を乗り越えて福島の自然エネルギーを拡大させる方針だ。(池尾伸一)

 白い雪をかぶった磐梯山を望む会津美里(みさと)町の田園地帯。屋根に黒い太陽光パネルをのせた農業ハウス(約二百平方メートル)が完成間近だ。
 「雪深い会津では冬はほとんど農業ができない。このハウスなら冬でも作物がとれます」。会津電力の折笠(おりかさ)哲也常務は言う。
 屋根の片側に張られたパネルは家庭なら十軒分が賄える約三十キロワットを発電する。これでハウス内の冷暖房やLED(発光ダイオード)照明を作動させ、作物を年中栽培できる。一部は蓄電池にため、夜間や雨天などに供給する仕組みだ。屋根の角度三〇度は発電量を確保でき、雪が滑り落ちる最適角度だ。送電線にもつなぐが売電はせず、蓄電池でも足りない緊急時に電気供給を受けるにとどめる。
 今月下旬から一年間を実証期間とし、地元の若手農家と協力して、オリーブやコケなど観賞用植物のほか、トマトなどの野菜を栽培する。順調なら地元農家にハウス導入を提案していく計画だ。
 会津電力は原発事故を機に地元市民らが「原発に頼らない電気を」と設立した会社。約八十カ所の太陽光発電所を建設してきた。固定価格で大手電力に売る売電型だったが、大手は二〇一四年から小規模発電しか受け入れない方針に転換。政府も太陽光の固定買い取り価格を下げ続けており、売電型は採算がとりにくくなっている。会津電力は地産地消型なら送電線への依存が少なく、再エネが拡大しやすいとみている。
 一方、福島の農産品は放射能汚染の風評が残っており他県産に比べ全般に安い。折笠さんは「冬も営農できれば農家の生産性も上がる。再エネ拡大と同時に農家も支援する一石二鳥が期待できる」と話している。
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