東京新聞が核燃料物質の使用許可を持つ茨城県内の事業所の一部を紹介する記事を出しました(全体は末尾に図示)。
原子力機構の東海再処理施設では、高レベル放射性廃液をガラスと混ぜて固化体にする作業がトラブルで中断したままです。運転の再開は2021年5月ごろになる見通しということですが、スケジュール通りに進む保証はないようです。
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東海再処理施設 来年5月 復旧見通し ガラス固化中断が長期化 【茨城】
東京新聞 2020年1月10日
(茨城)県内には、原発以外にも多くの原子力事業所が集中立地し、リスクが大きい施設も少なくない。日本原子力研究開発機構(原子力機構)の東海再処理施設(東海村)では、高レベル放射性廃液をガラスと混ぜて固化体にする作業がトラブルで中断したまま。高速増殖実験炉「常陽」(大洗町)は再稼働を目指すが、政府が固執する高速炉の実用化のめどは立たない。(宮尾幹成)
原子力機構は昨年七月、東海再処理施設で固化作業を二年ぶりに再開したが、ガラス溶融炉のトラブルのため、中断。復旧は二〇二一年五月ごろになる見通しというが、スケジュール通り進むかは分からない。
高レベル廃液は、原発などの使用済み核燃料を溶かしてプルトニウムやウランを取り出した残りかすで、極めて放射能の強い物質を含む。液体のまま保管し続ければ漏えいのリスクが高いため、できるだけ早くガラス固化を終える必要がある。原子力規制委員会は再開時期の前倒しと、計画中の新たな溶融炉の建設を急ぐよう強く求めている。
再処理施設の廃止措置計画では、二八年度までにあと五百本以上の固化体を製造する必要がある。工程の遅れは必至だが、山本徳洋理事は九日、報道陣に「固化処理の再開は極めて重要。そこに精力を集中している」と述べるにとどめた。
「常陽」を巡っては、規制委の新規制基準に基づく審査が続く。原子力機構は、二二年度末の再稼働を目指す。〇七年に炉内のトラブルで停止したままだが、実験炉の次段階の原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉が一六年に決まったことで、国内の高速炉開発の中核施設に位置付けられた。
ただ、原型炉の次段階の実証炉を日仏共同で開発する「ASTRID(アストリッド)」計画について、フランス原子力・代替エネルギー庁が昨年、「今世紀後半以前に新世代の原子炉が実現する見通しはもはやない」と表明。事実上の断念となる可能性も指摘される。
それでも、日本政府は高速炉開発を継続する姿勢を崩さない。原子力機構の青砥紀身理事は「他国の状況とは関係なく、すべきことをしていく」と説明する。
原子力機構が二一年一月の運転再開を目指す高温ガス炉の実験炉「高温工学試験研究炉(HTTR)」(大洗町)も、規制委で審査中だ。炉心の熱を取り出す冷却材に、熱を伝える効率や安全性が高いとされるヘリウムガスを用いる原子炉。高温のヘリウムは燃料電池用の水素の製造にも使えるとの触れ込みで、政府が推進する新型炉開発の柱の一つに位置付けられる。
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量子科学技術研究開発機構の那珂核融合研究所(那珂市)では、日欧で共同開発する大型核融合実験器「JT-60SA」が三月末に完成し、九月から本格稼働する。ドーナツ形の真空容器内で、重水素同士が超高温の「プラズマ」で核融合を起こす状態を安定して持続させる実験をする。
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臨界事故から昨年で二十年を迎えた核燃料加工会社ジェー・シー・オー(東海村)では、ウランの洗浄や保管に用いていた溶媒の焼却処理が二〇年度中に完了予定だ。その後は、設備の解体や除染を終え、二六年度末までにウランが付着した金属などのうち、再利用できるものを英国へ搬出する計画。だが、それ以外の放射性廃棄物の処分先は決まっていない。