日本は、再処理で生み出したプルトニウムを45・7トンも国の内外に保有しています。
核兵器に転用すれば原爆約5千発分に相当する量で、当然国際的に懸念が高まっています。
高速増殖炉もんじゅを前提にした核燃料サイクルは、本来日本の所持が制約されているプルトニウムを増産するもので、当初から理屈が通らないものでした。
MOX燃料は通常の原発でプルトニウムを消費しようとするものですが、それにも物質収支的合理性はありません。
四電伊方原発で初めて使用済みMOX燃料の引き抜きが始まりますが、それを再処理するのは論外です。
信濃毎日新聞は社説で、「燃料サイクルの行き詰まりを認め、政策を転換しなければならない。再処理を前提とせず、廃棄物として処分を検討していく必要がある」と指摘しました。
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社説 使用済みMOX 核サイクルの破綻直視を
信濃毎日新聞 2020年1月15日
行き場のない危険物質が、また新たに生み出されていく。
愛媛県の四国電力伊方原発で、使い終えたプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料が原子炉から取り出された。本格的な搬出は初めてだ。
国や大手電力は、原子炉で燃やした後のウラン燃料を化学的に処理(再処理)し、取り出したプルトニウムでMOX燃料を作って再び原発の燃料に使う核燃料サイクル政策を進めている。
使用済みMOX燃料も再利用する構想だが、再処理施設ができる見通しはない。当面は原発内のプールで保管することになる。
核燃料は使用後も熱と高い放射線を出し続けるため、プールで冷やしながら保管するしかない。MOX燃料はウラン燃料よりも発熱量が高い特徴がある。
関西電力の高浜原発でも近く取り出しが始まる。核燃料サイクルを続ければ、危険な使用済みMOX燃料が増える一方である。
行き詰まりを認め、政策を転換しなければならない。再処理を前提とせず、廃棄物として処分を検討していく必要がある。
日本は、再処理で生み出したプルトニウムを45・7トンと大量に保有する。核兵器に転用可能で、原爆約5千発分に相当する。国際的に懸念が高まっている。
MOX燃料はもともと、高速増殖原型炉もんじゅでの利用を主に想定していた。トラブル続きで2016年に廃炉が決まった。
計画が事実上破綻した中、一般の原発で苦し紛れに使っているのが現状と言える。プルサーマル発電と呼んでいる。
電力業界は全国で16〜18基のプルサーマル導入を目指していたが、福島第1原発事故の後は原発の再稼働が進まず、これまでに導入したのは4基にとどまる。
有効利用できる見通しがないのに、青森県六ケ所村では再処理工場の建設が進む。これもトラブル続きで完成が遅れている。
この工場は使用済みウラン燃料からMOX燃料を作る。一度使ったMOX燃料の再処理には、第2の工場が必要となる。
コストは巨額だ。六ケ所工場の総事業費は16兆円に膨れ上がった。第2工場は過去の試算で12兆円近くが想定されている。
このままでは各電力の消費者が将来にわたって負担を強いられる。関西電力と九州電力は昨年から電気料金への転嫁を始めた。
たまり続ける「核のごみ」をどうするつもりか。政府は問題の先送りを続けてはならない。