2021年2月7日日曜日

07- 「水の濁り」セシウム減少左右 福島大研究チーム、ため池分析

 福島大環境放射能研究所のアレクセイ・コノプリョフ特任教授が代表を務める研究チームは、ため池の放射性セシウム濃度の推移を分析した研究成果をまとめました

 それによるとため池の水と、水中の濁り成分を比較した場合、水の方が放射性セシウム濃度の低下が遅いことが確かめられました。その理由について研究チームは、原発事故時に原子炉内などで起こった反応でできた微粒子が水中に存在し、ごくわずかながら水に溶け出し続けている可能性があるとみています。
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「水の濁り」セシウム減少左右 福島大研究チーム、ため池分析
                     福島民友ニュース 2021年2月4日
 福島大環境放射能研究所のアレクセイ・コノプリョフ特任教授(65)=放射線生物学=が代表を務める研究チームは、ため池の放射性セシウム濃度の推移を分析した研究成果をまとめた。ため池の水と、水中の濁り成分を比較した場合、水の方が放射性セシウム濃度の低下が遅いことが分かったという。
 研究チームによると、濁り成分中の微粒子から、放射性セシウムが水に溶け出していることなどが原因とみられる。研究チームは「(東京電力福島第1原発事故で飛散したセシウムの)生物への移行や、将来的なため池の管理を考える上で有益な知見が得られた」としている。研究成果は昨年11月、学術誌「ケモスフィア」で発表された。
 研究は、福島第1原発から4キロ圏内の帰還困難区域にある大熊町のため池3カ所で実施。2015(平成27)~19年の間、1~3カ月に1度の頻度で水や濁り成分内のセシウム濃度を測定した。結果、濁り成分では年間25~33%、水は年間9~29%ずつ、自然減衰などで濃度が低下していた。
 水と濁り成分のセシウム濃度の関係などから、研究チームは、原発事故時に原子炉内などで起こった反応でできた微粒子が水中に存在し、ごくわずかながら水に溶け出し続けている可能性があるとみている。研究チームは、水温などの影響で夏から秋にかけて水中のセシウム濃度が高くなることも明らかにした。
 福島大で2日に開かれた定例記者会見で、環境放射能研究所のコノプリョフ氏と脇山義史講師(39)=水文地形学=が発表した。


セシウム濃度変化を解明 福大環境放射能研究所、除染への活用期待
                           福島民報 2021/02/04
 福島大環境放射能研究所のアレクセイ・コノプリョフ特任教授と脇山義史講師らの研究グループは、東京電力福島第一原発事故に伴う帰還困難区域内のため池の長期的なモニタリングにより、水中の放射性セシウムの濃度変化や要因を明らかにしたと三日、発表した。除染や将来的なため池の管理を考える上で、有益な知見になると期待される。
 研究グループは福島第一原発から四キロ以内にある大熊町の三つのため池で、二〇一五(平成二十七)年から一~三カ月の間隔で採水し、濁り成分と水それぞれに含まれているセシウム濃度を測定した。水に含まれる放射性セシウムには、水中に溶けている「溶存態」と、土壌粒子や有機物などに吸着・固定されている「懸濁(けんだく)態」がある。調査結果では、セシウム濃度は時間の経過とともに低下するが、懸濁態に対し、溶存態のセシウム濃度の減少割合が緩やかであることが判明したという。一因としてガラス質の高濃度放射性セシウム含有粒子が溶解し、濃度に影響を与えている可能性を突き止めた。
 また、溶存態の放射性セシウム濃度は夏から秋にかけて高くなる傾向も見られた。
 コノプリョフ特任教授は「今後も環境中のセシウムの動きを明らかにしていく」と語った。
 研究成果はエルゼビア社が発行する学術誌「Chemosphere」に掲載された。