2021年2月15日月曜日

柏崎刈羽原発7号機再稼働 地域説明会が終了

 東京電力が柏崎刈羽原発7号機の再稼働に向けた理解を広げるため、1月25日から県内5カ所で始めた地域説明会が12日、終了しました。

 この期間中に、中央制御室への不正入室安全対策工事未完了など問題が相次いで発覚し、各会場では東電への不信感を訴える声が相次ぎ、再稼働に向けた道筋は不明瞭になりました。
 朝日新聞が報じました。
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東電の原発再稼働への「理解」ほど遠く 問題相次ぐ
                          朝日新聞 2021年2月14日
 東京電力が柏崎刈羽原発7号機の再稼働に向けた理解を広げるため、1月25日から県内5カ所で始めた地域説明会が12日、終了した。中央制御室への不正入室に安全対策工事未完了と、問題が相次いで発覚し、各会場では東電への不信感を訴える声が相次いだ。東電側の狙いとは裏腹に、再稼働に向けた道筋は不明瞭になるばかりだ。
 「皆様にはご心配をおかけし、改めておわび申し上げます。皆様のご意見を拝聴し、業務の取り組みに反映させていきます」
 東電の橘田昌哉常務・新潟本社代表は各会場の閉会あいさつで、こう述べた。
 説明会は、7号機の安全対策に関する石井武生原発所長の説明と、参加者との質疑応答の2部構成。計2時間余りの中で「おわび」は何度も繰り返された。
 質疑では、不正入室問題をめぐり厳しい質問が相次いだ。「都合の悪いことを明らかにしない企業に原発運転を任せられない」(柏崎)、「核防護のコントロールができるようになるまで、運転を再開すべきではない」(長岡)、「適格性に関する認可を返上すべきだ」(上越)など。
 壇上に並んだ橘田代表らは謝罪の言葉とともに、社員教育など再発防止策の徹底に努める考えを繰り返した。その一方、再稼働を目指す姿勢を堅持する様子に、会場からは不満やいらだちの声も上がった。12日の新潟会場では司会者が再三、「不規則発言はおやめください」と呼びかけた。
 新潟会場で、中山均・新潟市議は「重大な問題と認識するなら、規制庁に報告する際に、直ちに規制委にも伝えるよう求めるべきだったのではないか」と質問したが、東電は「公表のあり方を検討したい」と答えるにとどまった。中山市議は閉会後、「肝心なことは何一つきちんと答えていない。自分たちに都合の良いことばかり言っているという印象だ」と話した。
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 地域説明会の初回から最終回までの19日間。事実の発覚や事態の進展に伴い、東電側の説明に毎回、新たな要素が付け加わった。最後の新潟会場でも、橘田代表が開会あいさつで、2日前の原子力規制委員会で明らかになったフィルター付きベントの配管工事の試験漏れについて言及した。
 大きく変わったのが、3カ所目の長岡会場だった。
 7号機の安全対策に関する説明の前に、不正入室問題と安全対策工事未完了を釈明する時間が設けられるようになった。
 資料の内容も変わった。
 柏崎、刈羽両会場で配布された資料では、今後の検査日程を、規制庁に提出した工程表に沿って「燃料装荷前に行う検査 20年8月~21年2月」「燃料装荷後に行う検査 21年3月~4月」と記していた。
 しかし、長岡以降の3会場では、日程部分が削除された。「2月末にも」と見られていた燃料装荷の時期が、相次ぐ問題で遅れる可能性を感じさせるものだった。
 橘田代表は長岡での説明会後、燃料装荷の日程を問う質問に「安全対策工事の確認を今やっている。再検討とか考えがまとまったわけでないが、今後やるべきことを積み上げていく中で、固まってくるのではないか」と語り、安全対策工事の確認や、不正入室問題への対応策の検討などを優先する姿勢を示した。
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 「しっかり結論をお伝えしたいと思います」。石井所長は9日の上越会場で、一連の問題について、調査結果や再発防止策を公表する意向を強調した。
 東電は規制委から不正入室に関して、3月10日までに、原因分析や改善策などの報告を求められており、まずこの課題に取り組まなければならない
 国の審査が終わり、安全対策工事も完了間近となった昨年12月には、次の焦点である「地元同意」の要請も近いとの見方もあった。桜井雅浩柏崎市長も1月上旬、「今年上半期に動きが出る」と語っていた。
 しかし、その空気は相次ぐ問題で一変した。
 長年、原発推進で活動してきた柏崎商工会議所も「大きな失望」と記した申入書を東電に渡し、「再発防止策などを見たうえで、次のステップに進んでいく」との考えを示した。
 さらに、12日の柏崎市議会で、原子力規制庁の担当者が不正入室問題は「現時点では核防護規定違反にあたると思うが、(東電が原発を動かす)適格性の審査に該当しない」との見解を示したことは、地元で波紋を広げている。市議のひとりは「何を信じればよいか、わからなくなった」。桜井市長は12日夜、「(原発の運転や安全管理などのルールを定めた)保安規定の一部に抵触すると思う」との見方を改めて示した。
 再稼働の前提となる国の審査に対する信頼感も揺らぐ事態となれば、東電を取り巻く状況が一層険しくなることは避けられない。(戸松康雄)
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 東京電力の橘田昌哉常務・新潟本社代表は12日夜、社員による不正入室について「1月23日の報道を見て、初めて知った」と述べた。新潟市で行われた地域説明会の後、記者団の質問に答えた。
 東電によると、核物質防護に関する情報に接することができる社員は限られ、守秘義務が課されている。石井武生原発所長には昨年9月21日の発覚当日に報告されたが、橘田代表はこの情報伝達の対象ではなかったという。
 地域説明会で橘田代表は答弁の中心的な役割を果たしていたが、この問題に関して、自身が報告を受けた時期などについては明らかにしていなかった。(戸松康雄)

各地の地域説明会で新たに加わった説明(カッコ内の数字は参加者数)
1月 14日    東電が開催日程を発表
  23日    報道で不正入室問題が明らかに
  25日 柏崎(107人) 不正入室問題を謝罪
  27日 刈羽 (79人)  安全対策工事未完了を説明・謝罪
2月   8日 長岡(109人) 規制委の暫定評価(4段階で下から2番目の深刻さ)を報告
    9日 上越 (66人)  不正入室の「事案概要」を配布
    12日 新潟(108人) フィルター付きベントに関する試験漏れに言及