2021年2月14日日曜日

原発事故時の対応具体化1病院だけ

 柏崎刈羽原発で重大事故が起きた時に、被ばくした傷病者の初期診療に対応する「協力機関」の新潟県内6つの病院のうち、除染や治療に当たる場所などの詳細が明確に決まっているのは柏崎総合医療センターだけであることが、新潟日報の調査で分かりました。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
原発事故時の対応具体化1病院だけ 被ばく傷病者の初期診療 新潟日報社調査
                            新潟日報 2021/02/12
 東京電力柏崎刈羽原発で重大事故が起きた時に、被ばくした傷病者の初期診療に対応する「協力機関」の新潟県内六つの病院のうち、除染や治療に当たる場所などの詳細が明確に決まっているのは一つにとどまることが11日、新潟日報社のアンケート調査で分かった。詳細が決まっていない病院は、初期診療に対応する医師らスタッフなどについても「未定」と回答した。
 東電福島第1原発事故から来月で10年となるが、本県では緊急時に被ばく傷病者が適切な医療を受けられるのか、不透明な状況が浮き彫りになった
 県は原子力災害医療の協力機関として、各地域の災害拠点病院となっている13病院と六つの団体・企業の計19機関を登録。このうち、柏崎刈羽原発が立地する柏崎市の柏崎総合医療センターと、各医療圏で中核的な役割を持つ県立中央(上越市)、魚沼基幹(南魚沼市)、長岡赤十字、新潟市民、県立新発田の計6病院については、被ばく傷病者の初期診療を担うよう求めている

 新潟日報社は1~2月、協力機関の13病院に、初期診療を担当する人材や設備などについて尋ねるアンケート調査を書面で実施した。
 初期診療を担う6病院のうち、対応する医師、看護師らスタッフと除染、治療の動線や場所、対応マニュアルがいずれも「決まっている」と答えたのは柏崎総合医療センターだけだった。
 ほかの5病院はスタッフが「未定」。このうち県立新発田を除く4病院は除染や治療の場所も決まっていないと答えた。マニュアルついては5病院が全て「未整備」だった。新潟市民、魚沼基幹は「今のところ整備する予定はない」、ほか3病院が「早急に策定する予定」と回答した。
 県が6病院を含む協力機関を登録したのは昨年9月。全国で原発が立地する13道県では最も遅かった。病院側の受け入れ準備が進んでいない背景には、県による登録の遅れや、この間、病院側が新型コロナウイルス対応に追われたこともあるとみられる。
 県立新発田病院は「協力機関となったばかり。詳細は今後詰めていく」とする。一方、「ウイルスに対応している現状で、原子力災害医療の体制を確保するのは難しい」(県立中央病院)との記述もあった。

<原子力災害医療体制> 原子力規制委員会が福島事故後の2015年に改定した原子力災害対策指針に基づく緊急時の医療体制。原発立地道県が、地域の中核として高度な被ばく医療と災害医療の機能を併せ持つ「拠点病院」を指定するほか、初期診療などで拠点病院を支援する「協力機関」を登録する。本県では新潟大学医歯学総合病院(新潟市中央区)と県立がんセンター新潟病院(同)が拠点病院で、一般の災害医療も担う13病院が協力機関。このほか県医師会など6団体、企業も協力機関に登録されている。拠点病院でも対応が難しい重篤な被ばくがあれば「高度被ばく医療支援センター」の福島県立医科大学付属病院(福島市)が対応する。