福島県沖では、原発事故からの復興の象徴として国が12年から約600億円を投じて浮体式洋上風力発電の事業を進めてきましたが、経産省は昨年末、発電機の選定に問題があり、稼働率が想定より低かったことなどによる不採算を理由に、施設を撤去すると表明したばかりです。その一方で政府は12月に、40年の洋上風力発電容量を原発45基に相当する最大4500万キロワットとする目標を決めました。
何ともついて行きかねる話ですが、日本の場合再生エネを追求するうえで洋上風力発電は絶対に欠かせません。
「カーボンゼロ ⇒ 原発再稼働」と考えるのは愚かなことで、原発が、熱効率が低くて「海水暖め装置」である以上、地球温暖化防止の決め手になることはあり得ません。また発電時だけはCO2を出さないもののトータルでは殆ど火力と同様で「カーボンゼロ」でもありません。
河北新報が「洋上風力発電/地域の理解得る努力が必要」とする社説を出しました。
洋上風力発電設備の部品数は約2万程度とされています。それはガソリン自動車の約3万点には及びませんが、電気自動車の約1万点をはるかに上回るもので、産業の裾野は広く、多くの企業が関与できます。
政府は浮体式洋上風力発電の試験的運用の失敗をキチンと総括したうえで、新たな洋上風力発電構想に向けてシッカリした方針を立てるべきです。
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社説 洋上風力発電/地域の理解得る努力が必要
河北新報 2021年02月25日
高層ビルに匹敵するような高さの風車が洋上に立ち並ぶ。そんな光景が日本にも現れようとしている。海上の風を活用し電気を生み出す洋上風力発電を、日本で普及させる試みが本格的に始動した。
ただ課題は山積している。適地・風の調査、技術開発、人材育成、港などのインフラ整備、送電網、発電コストの低減と、幾重もの高いハードルがある。日本の主力電源を、天然資源を燃やす火力から再生可能エネルギーに転換するには、超えなければならない壁であろう。日本の産学官の底力が試される。
息の長い取り組みとなろう。政府は一貫性のある長期的で具体的なビジョンを明示し、産学官一体で推進できる態勢をつくりたい。その際、漁業者や海運業者らとの調整は丁寧に進めるべきだ。同時に国民、地域住民の理解を得る努力と工夫も欠かせない。
菅義偉首相は昨年10月、温室効果ガス排出を2050年に実質ゼロとする目標を宣言した。12月に40年の洋上風力の発電能力について、原発45基に相当する最大4500万キロワットとする政府目標も決めた。
10年前の東京電力福島第1原発事故以降、原発の稼働は低迷し、二酸化炭素を出す火力発電の利用が増えた。再生可能エネルギーの太陽光や陸上風力は立地上の限界があり、海に囲まれた日本で洋上風力は温暖化対策の「切り札」と位置付けられた。
東北は北海道と並ぶ洋上風力の適地とされ、東北電力管内は40年の発電能力の目安が900万キロワットに上る。洋上風力参入を促す「促進区域」として秋田を含む3県の5海域が指定され、事業者の公募も始まった。
事業規模で数千億円といわれるビッグプロジェクトである。洋上風力の設備は部品が数万点に及び、産業の裾野も広い。建設、運転、保守の各段階で地域経済への波及効果もあろう。政府は「次世代産業に育てる」(梶山弘志経済産業相)と意気込み、アジア市場への進出も想定する。
原子力も火力も先行きが見通せない中、洋上風力を今後の有力な産業政策としたい狙いも垣間見える。ただ産業優先の前のめりの姿勢が過ぎれば、発展可能性に照らして必ずしも有益とはなるまい。
騒音や景観など、地域住民の懸念への十分な配慮と対応は不可欠だ。魚や鳥、海洋など自然環境への影響も考慮すべき点となる。再生可能エネルギーといえども、太陽光や陸上風力の開発を巡る反対運動が各地で起きている。
洋上風力先進地の欧州で市民が参画・投資する例もあるという。地域ぐるみである。検討に値しよう。東北を単なる場所貸しにしてはなるまい。産業として育てるなら、事業者にとって不都合な情報も地域や住民と共有したい。問題の解決策を探求し、技術的熟度を高めることは国際的な競争力の向上につながろう。