2021年6月19日土曜日

原発の運転「原則40年」のはずが… 最大20年延長で安全性は

 毎日新聞が、福島第1原発事故後に定められた原発の運転期限を「原則40年、最大延長20年」とするルールはどう定められたのか。「延長」の判断が迫られる原発はどれほどあるのか整理しました

「原則40年」ルールが成立したのは13年7月で、「圧力容器(原子炉)が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」と説明されました。
   ⇒(16.6.22)高浜原発1、2号機の原子炉の劣化予測 信頼できないと井野教授
 原子炉は核燃料が放つ中性子を受けると脆くなり、限度を超えれば緊急時に原子炉を冷やす際に破損する可能性があります。この強度の指標が脆性遷移温度、新品の炉材ではマイナスであるのに対して中性子を浴びると徐々に上昇し100℃前後乃至それ以上にまで上ります。事故等で急冷され炉内の冷却材温度がそこまで低下すれば破損(爆発)します。
 従って本来は交換する必要があるのですが、原子炉は数m厚さのコンクリート製圧力容器内に設置されているので莫大な費用が掛かり事実上不可能です。
 原子炉自体交換しないで周辺の配管を補強したり付属機器類を交換しても、「自動車で言えばエンジンが交換されないままハンドルや速度計が新しくなっただけ」に過ぎず、補強工事・安全工事といっても所詮は「目くらまし」でしかありません。
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原発ニュースウォッチ
原発の運転「原則40年」のはずが… 最大20年延長で安全性は
                              毎日新聞 2021/6/18
 2011年3月の東京電力福島第1原発事故後に定められた原発の運転期限を「原則40年、最大延長20年」とするルール。関西電力は23日に美浜原発3号機(福井県美浜町)の原子炉を起動する方針で、このルールの下での40年超原発の国内初の再稼働となる。そもそもこのルールはどう定められたのか。そして、「延長」の判断が迫られる原発はどれほどあるのか。国内の原子力の歴史に新たな1ページが加わる前に整理してみた。

原子炉劣化 当初は「例外」扱い
「原則40年」ルールが成立したのは13年7月。当時の民主党政権はその根拠を、「圧力容器が中性子の照射を受けて劣化する時期の目安」と説明していた。
 原子炉容器は、核燃料が放つ中性子を受けるともろくなり、限度を超えれば緊急時に原子炉を冷やす際に破損する可能性がある。さらに原子炉は交換できないため、経年劣化のリスクが懸念される。
 ルールでは審査を担当する原子力規制委員会が認めれば1回に限って「最長20年」の延長が可能だが、一方で当時の田中俊一規制委員長が「(延長は)相当困難」と述べるなど「例外規定」と見なされてきた。
 だが、「(40年超原発も)費用をかければ技術的な点は克服できる」。高浜1、2号が安全審査に事実上合格した16年2月の記者会見で、田中委員長はそう述べて一転。その後、規制委は今回再稼働する美浜3号を含めた計4基の運転延長を認めた。

「30年超原発」ぞろぞろ
 そもそも運転期限の40年が迫る原発はどれほどあるのか。
 1966年に日本原子力発電東海原発が運転開始して以降、国内ではこれまでに商用炉計57基が運転してきた。既に廃炉となった炉もあり、現時点での40年超原発は、美浜3号(運転期間44年)、高浜1号(同46年)、同2号(同45年)、そして東海第2(同42年)の計4基となっている。
 40年超原発は数が限られているためか「特定の原発立地地域だけの特殊な問題」と捉えられがち。だが全国の原発に目をやれば、今後、10年以内に運転開始から40年を迎える「30年超原発」は全国で12基にのぼる。
 ある電力会社の担当者は「安全対策などに多額の費用を掛けており、40年で廃炉になってはとても原発はやっていけない」と漏らす。また、経済産業省は「(洋上風力発電などの)再生可能エネルギーと同様に温室効果ガスを排出しない点では脱炭素に資する」と強調。環境政策を名目に40年超原発の再稼働に積極的な姿勢を示しており、「延長」が「例外」だったルールの形骸化が懸念されている。

専門委「やはり危険」の声も
 「延長」が規制委に認められるためには、事業者が老朽化を防ぐためにさらなる安全対策を行わなければならない。福井の40年超原発3基については、関電が一部の配管や中央制御盤などの機器の取り換えを実施した。
 一方、原子炉自体は交換できないため点検や炉内部の試料の分析にとどまり、「自動車で言えばエンジンが交換されないままハンドルや速度計が新しくなっただけ」と指摘する声も多い。実際に3基の安全性を評価する福井県原子力安全専門委員会の4月の会合では「高経年化した炉はやはり危険」と再稼働に反対する委員の声もあった。最終的に関電の安全対策を評価する報告書が取りまとめられたが、「延長」運転を不安視する声は少なくない。【岩間理紀】