2021年6月27日日曜日

川内村、避難解除5年 産業創出や移住支援に力

 避難指示解除から5年が経過した福島県川内村は、現在居住者は事故前の居住人口3038人の8割に回復し、移住者は約400人に上ります。

 村15に創った15歳未満の子どもがいる親に移住費用として50万円を支援する「ひとり親世帯移住促進奨励金」制度を利用して、18年に茨城県ひたちなか市から長男・長女と共に移住した農業星野菜々恵さん(36)は「支援策が充実し、村ぐるみで子を育てようという雰囲気がある」と話します
 豊かな里山を生かし「かわうちワイン」を開所したばかりで、ブランド化を官民一体で進めるというにぎわいが生まれている村で星野さんも村内の農業法人で特産のエゴマ栽培などに取り組んでいて、今は原発事故を意識することは少ないということです
 福島と茨城をつなぐ架け橋になりたい」と話し、新たな人を呼び込もうと展望を描いています
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
川内村、避難解除5年 産業創出や移住支援に力
                        河北新報 2021年06月26日
 東京電力福島第1原発事故に伴う福島県川内村の避難指示解除から6月14日で5年が経過した。村は2012年1月、帰村を促す「帰村宣言」を出した。今では事故前の居住人口3038人の8割に回復し、移住者は約400人に上る。村は教育環境や移住支援の整備などに力を注いでいる。(福島総局・吉田千夏)

 村は15年、15歳未満の子どもがいる親に移住費用として50万円を支援する「ひとり親世帯移住促進奨励金」制度を新設した。制度を利用して18年に茨城県ひたちなか市から移住した農業星野菜々恵さん(36)は「支援策が充実し、村ぐるみで子を育てようという雰囲気がある」と話す
 村主催の体験ツアーに参加して自然や子育て環境に惚れ込み、移住を決めた。小学6年の長女(11)と2年の長男(8)は、今年4月に開校した小中一貫義務教育学校の川内小中学園に通学。月1000円で学べる村営塾や土曜も開設する児童クラブも活用する。

 豊かな里山を生かし、村では「かわうちワイン」のブランド化を官民一体で進める。北部の標高約750メートルに約3ヘクタールのブドウ畑が広がり、生食用も栽培。イチゴなど新産業の創出を目指す動きも出始めている。
 星野さんも村内の農業法人で特産のエゴマ栽培などに取り組むにぎわいが生まれている村で、今は原発事故を意識することは少ないという「福島と茨城をつなぐ架け橋になりたい」と話し、新たな人を呼び込もうと展望を描く

 村の第5次復興計画(18~22年度)では、若年層の帰還促進につなげるため、教育環境の整備を重要な施策に位置付けた。村は保育園や小中学校の保育と給食費の無償化、出産祝い金などを打ち出している。
 今年3月11日には、一人一人が輝いてほしいとの思いを込めて「輝村宣言」を掲げた。9年前の帰村宣言について、遠藤雄幸村長は「『帰りたい人からでいいんです』という説得力のないものだった」と話し、「帰還の道筋を早期につけることができた」と取り組みの手応えをにじませる。
 除染が進んで帰村が見込める空間放射線量に下がったことなども大きかった。原発事故で避難指示が出された県内の12市町村で唯一、東日本大震災前から首長を務める遠藤村長は「10年前に戻すだけの復興は意味がない」と強調し、新たな村づくりを見据える。