爆発事故を起こさなかった方の福島第二原発1~4号機の全基廃炉は、17日に県と立地町が事前了解し、今月下旬にも始まりますが、使用済み核燃料を県外のどこに持っていくのかは未定で、将来どこかに決まる見通しもゼロです。
その原因は核燃料サイクルが破綻したことにあると言われます。核燃料サイクルの心臓部は高速増殖炉ですが、それを実現するのは技術的に極めて困難で、空気に接触すれば燃焼し水に接触すれば爆発する液体ナトリウムを冷却材に使うのは危険すぎるとして各国が撤退した中で、唯一日本だけが可能であるとして突き進みました。
しかし長大な時間と1兆円超という莫大な費用を掛けた挙句に断念したのでした。
国策民営による原発が行き詰まったのであれば、政府と電力会社が総力を挙げて後始末をするしかありません。しかしその姿勢は一向に見られないまま、再び原発の再稼働にうつつを抜かしているのは異常の一言に尽きます。原発議連を含めた原子力ムラは一体何を考えているのでしょうか。
核燃料の乾式貯蔵施設は時間稼ぎの弥縫策に過ぎず、最終的にはどこかの土地に埋設するしかありません。
東電は原発事故での賠償金や慰謝料問題で、加害者であるにもかかわらず仲裁者のように傲慢に振る舞って来ました。今度こそ責任を持って、使用済み核燃料の県外受け入れ先を必死に探すべきです。
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(6月18日)6月下旬にも福島第二原発の廃炉作業開始 福島県と楢葉町、富岡町了承
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【見えぬ廃炉 第二原発(上)】
県外搬出めど立たず 原子力政策行き詰まり 使用済み核燃料
福島民報 2021/06/20
東京電力福島第二原発1~4号機の全基廃炉は、県と立地町の事前了解により、今月下旬にも始まる。ただ、使用済み核燃料を再処理して使う国策「核燃料サイクル政策」は高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)の廃炉とプルサーマル発電の低迷で実質的に破綻しており、東電が確約する「使用済み核燃料の県外搬出」のめどは立たない。国策民営による原子力政策の行き詰まりが、二〇六四年度とされる廃炉完了を不透明にしている。
楢葉、富岡両町にまたがる福島第二原発の中央制御室。運転員は十九日も1~4号機の使用済み核燃料プールにある使用済み核燃料について冷却監視を続けた。四カ所のプールにある核燃料は約一万体。一カ所平均二千五百体という数だ。プールの水温を約三〇度に保ち、安定的な冷却を維持している。
東電は使用済み核燃料約一万体の半数ほどを敷地内に新設する乾式貯蔵施設で保管する方針だ。プールの水ではなく、使用済み核燃料を金属容器に入れて空気の循環によって冷却する方法になる。原子力規制委員会が「プールより安全」と乾式貯蔵の導入を電力各社に推奨しているためだ。
福島第二原発では廃炉着手六年後から毎年六百体をプールから乾式に移す。乾式貯蔵施設が満杯になるのは廃炉着手から十四年後になるが、その後の県外搬出について東電担当者は「決まっていない。乾式貯蔵施設の増設も含め、廃炉を進める中で検討する」と曖昧な言い回しに終始する。乾式貯蔵は一時しのぎの対策に過ぎず、「トイレなきマンション」と呼ばれる原子力発電の根本的な問題解決にはなっていないのが実情だ。
使用済み核燃料を再処理し、プルトニウムを取り出して再利用する核燃料サイクル政策は、順調に進んでいるとは言いがたい。青森県六ケ所村に整備中の日本原燃の再処理工場は稼働時期も定まっていない。東電と日本原子力発電の共同出資会社が青森県むつ市に設けた使用済み核燃料の中間貯蔵施設は二〇二一年度の操業開始を計画しているが審査などが続くため、開始時期は見通せない。さらに、むつ市は事故を起こした福島第一原発や、廃炉が決まった福島第二原発の燃料搬入に難色を示している。
使用済み核燃料の再処理で生じる廃液は高レベル放射性廃棄物(核のごみ)として、ガラスと混ぜた固化体として管理される。最終処分場選定に向けた文献調査を北海道の一部自治体が受け入れたが、住民からは否定的な意見も多く、作業は緒に就いたばかりだ。
国策の歯車がかみ合わない中、使用済み核燃料は増え続ける。福島第二原発の立地町の住民は「使用済み核燃料がどこにも搬出されずにここに留め置かれ続けるのでは」と不安がる。
核燃サイクルの先行きが見通せないため、東電も具体的な県外搬出計画を打ち出せる状況にはない。小早川智明社長は十六日、内堀雅雄知事から廃炉の事前了解を得た際、「使用済み核燃料は廃止措置終了までに県外に搬出する方針だ」と述べるにとどめた。
県原子力対策監の高坂潔氏は「使用済み核燃料の問題をどうするか、東電は当事者として政府に働きかける責任がある。政府任せにせず、全国の電力会社とともに根本問題の解決に汗を流すべきだ」と指摘した。