柏崎刈羽原発7号機で行った安全対策工事で、未完了箇所は約90カ所にまで膨らんでいることについて、東電は原因として、業者間や社内での連携不足などを挙げる一方で、詳細な現場調査といった時間を要する抜本的な見直しが行われていなかったことも明らかにしました。
安全工事を早期に終らせたいと工事項目の審査の終了を待たずに工事を行った個所で、審査結果との整合チェックを怠ったことも未完了の一因となりました。
東電の橘田代表は、報道陣から「再稼働に前のめりの姿勢が今回の事態を招いたのではないか」と問われたことに否定できませんでした。
いずれにせよお粗末な話です。
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柏崎刈羽原発 再稼働見据え工期優先 工事未了 連携不足、現場調査怠る
新潟日報 2021/06/11
東京電力が新潟県の柏崎刈羽原発7号機で行った安全対策工事で、新たな未完了が70カ所以上で見つかった。東電は原因として、業者間や社内での連携不足などを挙げる一方で、詳細な現場調査をしていなかったことも明らかにした。7号機の早期再稼働に向けたスケジュールに沿う形で工事を進めた結果、信頼をさらに失った形だ。
「本来なら最終的な検査が終わった段階で、工事の完了を申し上げれば良かった」
10日に会見した東電新潟本社の橘田昌哉代表は、早すぎた「宣言」を悔やんだ。
東電は1月13日に安全対策工事が完了したと公表した。しかし、27日に1例目の工事の未完了が発覚。この日公表した工事を含めて、未完了箇所は約90カ所にまで膨らんでいる。
工事の未完了が起きた原因として、東電は社内や発注先との図面のすり合わせが欠けるといった連携不足などを挙げた。そこには7号機の早期再稼働に向けて、工事の完了を急ぐ様子が見え隠れする。
東電は「計画上の設定」としながらも原子力規制委員会に、6月にも7号機を再稼働する工程を示していた。同時に、2020年12月の安全対策工事完了という工程を組んでいた。昨年春、原発構内で新型コロナウイルスの感染者が出たことで、工事の一部停止を余儀なくされても、12月完了という工期はかたくなに変えなかった。
原子力・立地本部の稲垣武之副本部長は、会見で詳細な現場調査といった時間を要する抜本的な見直しが行われていなかった現場の状況を明らかにした。
東電はそもそも、規制委による基本設計の審査を受けている段階から安全対策工事を進めてきた。
審査の議論の行方によって工事の内容も変わるが、審査の終了を待たずに工事を続けたことで現場で食い違いが生じ、工事未完了の一因となった。
工事が必要な箇所の見落としや、把握すらできていないケースもあった。
柏崎刈羽原発では、15年以降に中央制御室の床下などで、不適切なケーブル敷設が判明している。
この時、東電は再発防止策として、社員教育の強化や、専門知識を持った担当者による定期的な現場確認を徹底すると誓ったはずだった。しかし、今回もまた反省を生かさず、現場調査などが不十分なまま工事を進め、失態を重ねた。
同原発の石井武生所長は「現地でしっかりと確認することを徹底してきたが、実態として抜けがあった」と話した。
橘田代表は報道陣から「再稼働に前のめりの姿勢が今回の事態を招いたのではないか」と問われ「どのように取るかは受け止められる方次第」と顔をゆがめた。
◎「問題解決能力ない」地元から不信の声
東京電力柏崎刈羽原発7号機の安全対策工事を巡り、新たに72カ所で工事漏れが判明したと東電が発表した10日、地元の柏崎市では「予想外に多い数だ」と東電の管理能力に対する不信の声が上がった。
原発に反対する市民団体「柏崎刈羽市民ネットワーク」の竹内英子代表(51)=柏崎市=は「未完了工事が相次いだ段階で、これだけでは済まないと思っていたが、ここまで一気に出てくるとは」と驚く。
工事漏れが相次ぐ背景として「早期の再稼働に向けて急いでいたのだろう」とみる。「東電には問題解決能力がない。今後、工事が完了したと言われても信用できない」と話した。
柏崎市の桜井雅浩市長は報道陣の取材に対し、「工事完了の報告は何だったのかという不信感がある」とした上で「一つ、二つと出てきて、今回72カ所出てきた。一言で言えばかっこわるい。今後も出てくる可能性が高いだろう。徹底的な点検をしてほしい」と述べた。
花角英世知事は、詳細を把握していないとしつつ、「(東電が)自らやった工事をしっかりチェックもできていないということは残念だ。どういう管理、監督をしていたのか」と首をかしげた。