2014年3月11日火曜日

ヤツコ氏ら原発:再稼働に積極的な政府の姿勢批判

 福島原発事故3年目を迎え、汚染水の問題をはじめとして一向に収束に向かわないなか、安倍首相は10日の参院予算委で、原発の再稼働について「原子力規制委員会が厳しい基準で安全と認めたものは、地元の理解をいただいた上で再稼働していきたい」と、再稼働に前向きな姿勢を明かにしました。
 
 この日 日本記者クラブでは、福島原発の事故原因を調査した政府、国会、民間の3事故調の元委員長らが討論会を開き、政府が原発再稼働に積極的なことについて、「事故から学んでいない」などの批判が相次ぎました。
 参加したのは、各事故調の元委員長の畑村洋太郎(政府事故調)、黒川清(国会事故調)、北沢宏一(民間事故調)の3氏と、米原子力規制委員会(NRC)前委員長のグレゴリー・ヤツコ氏です。
 
 「規制委が安全と認めたものは地元の理解のうえで(原発を)稼働する」とする政府の姿勢について、畑村氏は「想定外だった福島の事故の教訓を生かしていない」避難計画の正当性が確認されてから再稼働の議論をすべきだ」とし、黒川氏は「5層の多重防護について(国内の原発で)やっていない所はたくさんある「あれだけの事故が起きても日本の社会が変わる気配がない」、北沢氏は「原発事故の確率を減らすだけではなく、事故の拡大防止策についても検討すべきだ」「再稼働の是非は国民がしっかり議論しなければならない」と指摘しました。
 ヤツコ氏は「いまだに汚染水問題など課題は多い。事故は終わっていない」と述べました。
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首相、原発再稼働を明言 「安全確保が大前提」
東京新聞 2014年3月10日
 安倍晋三首相は10日の参院予算委員会で、原発の再稼働について「原子力規制委員会が厳しい基準で安全と認めたものは、地元の理解をいただいた上で再稼働していきたい」と述べ、再稼働に前向きな姿勢を重ねて表明した。東日本大震災から11日で3年となることに関連し、被災地に復興の実感を広げる決意も明らかにした。
 
 エネルギー政策に関し「国民生活や経済活動に支障がないよう、責任あるエネルギー政策を構築することが何よりも重要だ」と指摘。原発の安全性については「東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ、安全を確保することが大前提だ」と強調した。
 
 
原発:再稼働積極的な政府の姿勢批判…3事故調の元委員長
毎日新聞 2014年03月10日
 東京電力福島第1原発の事故原因を調査した、政府、国会、民間の3事故調の元委員長らが10日、日本記者クラブで開かれた討論会に出席した。政府が原発再稼働に積極的なことについて、「事故から学んでいない」などの批判が相次いだ。
 
 参加したのは、いずれも各事故調の元委員長の畑村洋太郎(政府事故調)▽黒川清(国会事故調)▽北沢宏一(民間事故調)−−の3氏と、米原子力規制委員会(NRC)前委員長のグレゴリー・ヤツコ氏。
 
 「規制委が安全と認めたものは地元の理解のうえで(原発を)稼働する」という政府の姿勢について、畑村氏は「安全性が確認されたから再稼働というのは論理が違う」と指摘。「想定外」だった福島の事故の教訓を生かしていないとの認識を示した。
 
 黒川氏も「5層の多重防護(国内の原発で)やっていない所はたくさんある。5年たっても何も変わっていない」「あれだけの事故が起きても日本の社会が変わる気配がない」と厳しく批判。北沢氏は「事故は(再び)起こるかもしれない。(再稼働の是非は)国民がしっかり議論しなければならない」と指摘した。ヤツコ氏は「いまだに汚染水問題など課題は多い。事故は終わっていない」と述べた。【鳥井真平】
 
再稼働議論教訓生きず 原発事故調トップが批判
福島民報 2014年3月11日
 東京電力福島第一原発事故から3年に合わせ、政府、国会、民間の事故調査委員会のトップ3人と、当時の米原子力規制委員会(NRC)委員長のグレゴリー・ヤツコ氏による討論会が10日、都内の日本記者クラブで開かれ、事故の教訓を生かさないまま再稼働の議論が進む現状に批判が相次いだ。
 政府事故調で委員長を務めた畑村洋太郎氏は、事故当時、富岡町で渋滞が発生し避難が困難だった事例を紹介。原発の半径30キロ圏の市町村が策定しなければならない避難計画について「計画の正当性が確認されてから再稼働の議論をすべきだ」と指摘した。
 国会事故調の委員長だった黒川清氏は、原発の安全性を保つために国際原子力機関(IAEA)が提唱する「5層の多重防護」について触れ、「(国内の原発で)やっていない所はたくさんある。5年たっても何も変わっていない」と批判した。
 ヤツコ氏は「汚染水の海洋流出や原子炉建屋の汚染は続いており、事故は終わっていない」との認識を示した。民間の有識者で構成された民間事故調の委員長だった北沢宏一氏は「原発事故の確率を減らすだけではなく、事故の拡大防止策についてもしっかり検討すべきだ」と述べた。