2014年3月18日火曜日

福島原発 汚染水処理装置は不調

 東京電力は13日、福島原発の汚染水から大半の放射性物質を取り除く装置「ALPS(アルプス)」をもう1台(=3系統合計処理量:750トン/日)増設することを、原子力規制委員会に申請しました。
 それとは別に政府は、同時期に500トン/日の能力をもつ高性能のALPS1系統を増設する予定です。
 これらの新設装置が完成する10月には、既設の1台(750トン/日)と合わせて合計:2000トン/日の処理ができると発表されています。この処理能力は、現在ある全てのタンクの汚染水を平成26年度内に浄化させるということから逆算した数値ですが、果たしてうまく行くのでしょうか。
 
 昨年設置したALPS1台3系統合計処理量:750トン/日)は、今度の30日で丁度稼動1年目を迎えます。この装置は試運転開始時に容器の溶接箇所にピンホール(細孔)が見つかるなど、最初からトラブル続きで、3月11日現在までに処理した汚染水の総量は6万トン余り、1日当たりの処理量は僅かに180トンでした。
 これは当初計画の1/4の処理能力で、1日に発生する汚染水約400トンにも遠く及びません。
 
 東電は増設を発表するに当たり、処理量=稼働率 が上がらない問題は解決したという言い方をしていますが、果たしてそうなのでしょうか。
 納入した装置が当初の計画性能(契約性能)を大幅に下回れば、民間企業であれば契約違反で損害賠償を請求されるような問題です。東電は、ALPSの価格はメーカー(東芝)との契約があるので公表できないとしていますが、多分驚くべき高価格の割りに低性能なので、恥ずかしくて公表できないというのが真相なのではないでしょうか。
 
 東電はこれまで、放射性廃液処理でも失敗の山を築いてきました。
 事故の直後には、放射性廃液の処理で実績のある仏アレバ社と米キュリオン社に処理装置を発注しました。その発注価格は一説に60億円ともまた500億円ともいわれましたが、その装置は満足に動くことなく、いまはバックアップ用の名目で置かれているということです。
 その後に登場したのが東芝のALPSです。
 その装置の運転実績が上述の通りでは寒心に耐えません。放射性廃液の浄化は、福島原発の汚水処理の中核をなしているものです。なんとか技術陣の総力を挙げて、10月までには満足な装置を作り上げて欲しいものです。
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汚染水処理期待外れ ALPS試運転1年
福島民報 2014年3月17日
 東京電力が福島第一原発の汚染水処理の切り札として導入した「多核種除去設備(ALPS)」は試運転開始から30日で1年を迎える。一日平均の処理量は11日現在、約180トン。相次ぐトラブルによる停止などで、一日に発生する汚染水約400トンの半分にも満たない。東電は増設で、平成26年度内にタンクに貯蔵している汚染水約34万トンの浄化完了を目指している。だが、トラブルが起きないことが前提で、計画通りに進むかどうかは不透明だ。
 
■増え続けるタンク
 東電は昨年3月30日、3系統のALPSのうち、「A」と呼ばれる1系統で試運転を開始した。同年6月中旬に「B」、同9月末に「C」と呼ばれる系統の試運転を始めた。今年2月12日には初めて3系統同時の試運転がスタートした。
 ALPSの汚染水処理のイメージは【図上】の通り。一日当たりの1系統の処理能力は250トンで、3系統が稼働すれば750トンの処理が可能だ。しかし、試運転開始後にトラブルが相次ぎ、11日現在までに処理した汚染水の総量は6万2792トンにとどまる。一日当たりの処理量に換算すると平均約180トンで、一日に発生する汚染水約400トンの半分にも達していないのが現状だ。
 高濃度の汚染水を保管する地上タンクは増え続けており、16日現在、約1100基、貯蔵量は約34万トンに上る。東電は平成26年度内に全てのタンクの汚染水を浄化させる目標を掲げている。だが、目標達成には一日当たりの処理能力を1960トンまで上げる必要があり、処理能力の向上が急務だ。
 
■増設頼み
 東電は4月以降、試運転から本格運転に切り替え、3系統を常時稼働させる。10月に3系統を増設する。さらに政府は同時期に一日当たり500トンの処理能力を持つ高性能ALPS1系統を整備する。
 現在の処理態勢と10月以降の見通しは【図下】の通り。東電のALPS6系統と、政府が新設する高性能ALPS一系統がフル稼働すれば、最大で一日2000トンの汚染水を処理できると見込んでいる。
 ただ、あくまでもトラブルによる停止がないことが前提だ。ALPSでは、試運転開始から作業員のミスなどが原因での停止が相次いでいる。特に、昨年9月下旬には作業員がタンク内部に作業で使用したゴム製シートを置き忘れる人為ミスも起きている。増設後、順調に汚染水処理を進めるには、作業員のミスが原因のトラブルを防ぐ対策が不可欠だ。
 
 
処分方法宙に浮く 取り除けないトリチウム ALPS試運転1年
福島民報 2014年3月17日
 試運転開始から30日で1年を迎える多核種除去設備(ALPS)は、汚染水から大半の放射性物質を取り除けると期待されている。しかし、ALPSでも取り除けないトリチウムの処分方法は宙に浮いたままで、放射性物質を取り除いた後に残る吸着材の最終処分方法も決まっていない。
 
■高い放出法定基準
 汚染水に含まれる63種類の放射性物質のうち、ALPSではトリチウムだけは取り除けない。ALPSで汚染水処理が順調に進んだとしても、トリチウムを含んだ水を放出できなければ、地上タンクは増え続けることになる。
 トリチウムを放出する際の法定基準は1リットル当たり6万ベクレルで、セシウム134の60ベクレル、セシウム137の90ベクレルに比べてはるかに高く設定されている。トリチウムの放出は原発事故以前から行われており、電力会社は原発ごとに基準値を定め管理していた。旧原子力安全・保安院の統計によると、毎年度、7800億ベクレル~2兆6000億ベクレルを放出してきた。九州電力玄海原発(佐賀県)では、平成22年度に100兆ベクレルを海に放出している。
 
■結論出ず
 政府はトリチウムの扱いを検討する有識者の作業部会を開き、地下や海洋への放出、施設での長期保管などそれぞれの処分方法の持つ環境への影響や技術的な課題などを研究している。
 有識者の中には「ある程度の濃度に薄めた上で、海洋への放出も選択肢の一つ」とする意見がある。ただ、漁業関係者を中心に風評被害を懸念する意見が根強い。結論は出ないまま地上タンクは日々、増え続けている。
 
■7年後めどに検討
 ALPSで汚染水を処理した後には、取り除いた放射性物質が付着した吸着材が残る。
 現在は福島第一原発敷地内の一時保管施設で保管しているが、限られたスペースのため、新たな保管場所の確保が迫られている。
 国際廃炉研究開発機構(IRID)が中心となり、処分方法を研究している。だが、IRIDは7年後の「平成33年をめどに検討」としている。