2019年4月25日木曜日

対テロ施設未完の原発は停止 規制委 期限延長認めず

 原子力規制委員会は24日の定例会合で、電力会社に対し、テロ対策施設「特定重大事故等対処施設」(特重施設)について「原発本体の工事計画の認可から5年」の完成期限の延長を認めないことを決めました。極めて当然の決定です。
 これにより再稼働済みの九電川内原発1号機は来年3月に期限を迎え、その時点で運転中でも施設が完成していなければ運転停止となります川内2号機は来年5月、関電高浜3号機(福井県)は同8月に順次期限となり、5原発10基以外の他の原発も期限時点で施設が未完であれば運転停止となります
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対テロ未完の原発停止 規制委、期限延長認めず 5原発10基
東京新聞 2019年4月24日
 原発に航空機を衝突させるなどのテロ行為が発生した場合に、遠隔操作で原子炉の冷却を続ける設備などを備えるテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」(特重施設)について、原子力規制委員会は二十四日の定例会合で、電力会社に対し、「原発本体の工事計画の認可から五年」の完成期限の延長を認めないことを決めた。再稼働済みの九州電力川内原発1号機(鹿児島県)は来年三月に期限を迎え、その時点で運転中でも施設が完成していなければ運転停止となる
 
 関西、四国、九州の電力三社が再稼働済みを含む五原発十基で施設の完成が遅れる見通しを示し、延期を認めるよう要請していた。五原発十基では、川内1号機に続き、同2号機は来年五月、関電高浜3号機(福井県)は同八月に順次期限となり、十基以外の他の原発も期限時点で施設が未完であれば運転停止となる。
 
 特重施設は東京電力福島第一原発事故を踏まえた原発の新規制基準で設置が義務付けられ、完成期限もあるが、三社は十七日の規制委との意見交換で一~三年ほど期限を超過する見通しを明らかにした。大規模な土木工事が必要となったことなどが理由という。
 二十四日の会合で、委員は「自然災害などで工事が遅れたのではない」などと指摘し、期限延長の必要性はないと決めた。
 その上で、期限を越えた場合は、原発の新規制基準に適合しない状態に陥るため、原子炉を利用できないとする見解を五人の委員でまとめた。更田豊志(ふけたとよし)委員長は「(期限超過で)基準不適合状態になった時の、原子力施設の運用を見過ごすことはできない」と述べた。
 特重施設は当初、二〇一三年の新基準施行から一律五年で設置する必要があった。その後、審査の長期化を踏まえ、規制委が原発本体の工事計画認可から五年に変更した経緯がある。
 
特定重大事故等対処施設>意図的な航空機衝突などのテロ攻撃を受け原子炉が大規模に破壊された場合でも、遠隔操作で冷却を維持し、放射性物質の大量放出を防ぐための施設。緊急時制御室や予備の電源、冷却ポンプなどを備える。原子炉建屋との同時被災を避けるため100メートル以上離すよう定められているが、施設の詳細は秘密事項で、原子力規制委員会の審査も非公開。原発本体の審査適合判断後、詳細設計が認可されてから5年以内に設置する必要がある。
 
 
原発 テロ対処施設遅延なら運転停止へ 川内は停止の可能性
NHK NEWS WEB 2019年4月24日
再稼働している原子力発電所で、テロ対策の施設が期限までに設置できない見通しになっていることについて、原子力規制委員会は期限の延長は認めず、間に合わなかった原発は、原則として運転の停止を命じることを決めました。鹿児島県にある川内原発はすでに期限まで1年を切っていて、九州電力は施設の設置が間に合わないとしていることから運転が停止される可能性があります。
「特定重大事故等対処施設」と呼ばれる施設は、航空機によるテロ対策などのため予備の制御室などを備えた施設で、再稼働に必要な
原発の工事計画の認可から5年以内に設置することが義務づけられています。
しかし、設置に時間がかかり、九州電力と関西電力、四国電力の5か所10基の原発では期限より1年から2年半遅れる見通しで、原子力規制委員会に延長を求めていました。この中にはすでに再稼働している4原発7基が含まれています。
 
川内原発 期限まで1年を切るも施設の完成まであと2年
原子力規制委員会は24日の定例会で、期限の延長は認めず、間に合わなかった原発は原則として運転の停止を命じることを決めました。
もっとも早く再稼働した鹿児島県にある九州電力の川内原発1号機は来年3月の期限まですでに1年を切っていますが、施設の完成までにはあと2年ほどかかる見通しです。
 
原子力規制委 更田委員長「看過できない」
原子力規制委員会は、代わりの措置をとることが可能かなど、原発ごとに個別の状況を聞くことは否定しないとしましたが、委員からはテロ対策施設に代わる措置は難しいという見解が相次ぎました。
更田豊志委員長は「基準を満たしていない状態になった施設の運転を看過することはできない」と述べました。
また、更田委員長は24日の定例会見で「工事に対する見通しが甘かったし、規制当局への出方も甘かった。何とかなると思われたとしたら大間違いだ」と述べ、期限が迫る中で間に合わないと訴え始めた事業者の姿勢を厳しく批判しました。
そのうえで「運転中の原発がテロ対策施設の設置期限を仮にきょう迎えたとしても、きのうときょうではリスクは変わらない。しかし、設置に手間取るとか、もう少し時間がかかるとかということを繰り返していたら、これは新しい規制の精神では安全の向上につながらず、いつか来た道に戻るかどうかの分かれ目だ」と述べ、事業者の事情を考慮して規制の在り方を変えたら福島第一原発の事故の教訓から学んでいないことになるとの見解を示しました。
 
九電「安全性高めようと工事が難しく」
九州電力は「安全性をさらに高めようと設計の見直しを重ねた結果、施設の配置場所を確保するのに必要な固い岩盤の掘削などの土木工事が、想定より大規模で難しいものになってしまった」と説明しています。
 
薩摩川内市長「コメント差し控える」
(中 略)
地元の専門家「妥当な判断」
鹿児島県が設置している川内原発の安全性などを検証する専門家委員会の座長を務める鹿児島大学の宮町宏樹教授は、委員会としてコメントする立場にないとしたうえで、「原子力規制委員会は常識的な判断をしたと受け止めている。福島第一原発事故の教訓を踏まえて定めた原発の規制基準を、規制委員会みずからがそのときどきで変えてしまっては、何のためのルールなのかということになるので原発の安全性を考える上で妥当な判断だ」と話しています。
 
官房長官「高い独立性有する規制委の判断に委ねる」
(中 略)
原発のテロ対策施設とは
「特定重大事故等対処施設」と呼ばれる施設は、東京電力福島第一原子力発電所事故の後に施行された新しい規制基準により設置が義務づけられたもので、航空機の衝突によるテロなどへの対策が求められています。
原子炉から100メートル以上離れた場所に予備の制御室や電源、ポンプなどを備えていて、遠隔で原子炉を冷却することができ、施設がある場所はテロ対策上、明らかにされていません。
当初は、平成25年の新規制基準の施行から5年、平成30年7月までに設置することとされていました。しかし、多くの原発で審査が長期化したことから、4年前(平成27年)に、再稼働に必要な原発の工事計画の認可から5年以内に設置すると方針を見直し、期限を延長していました。
 
四国電力「非常に厳しい判断 工期短縮に努力」
(中 略)
関西電力「施設の早期完成に向け最大限努力」
(中 略)
電事連「テロ対策施設は必須 最大限努力」
(中 略)
電力各社 工期遅れる見通し明らかに
電力各社は今月17日、テロなどに対処する施設について、工事が大規模で時間がかかっているとして、完了時期が遅れる見通しを明らかにしています。
それによりますと、最も早く再稼働した鹿児島県にある九州電力の川内原発1号機では、来年3月の期限をおよそ1年超えるほか、2号機は来年5月が期限で、同じくおよそ1年遅れるとしています。
また、いずれも福井県にある関西電力の高浜原発では、3号機と4号機がそれぞれ来年8月と10月が期限で、およそ1年遅れるとしているほか、1号機と2号機は再来年6月の期限からおよそ2年半遅れるとしています。
大飯原発の3号機と4号機はいずれも3年後が期限で、およそ1年遅れる見通し。美浜原発3号機は再来年が期限で、およそ1年半遅れる見通しです。
愛媛県にある四国電力の伊方原発3号機は再来年が期限で、およそ1年遅れるとしています。
このほか佐賀県にある九州電力の玄海原発3号機と4号機も3年後の期限には間に合わない見通しで、茨城県にある日本原電の東海第二原発は4年後が期限ですが、着工のめども立っていないということです。
このうち高浜原発の1号機と2号機、美浜原発3号機、それに東海第二原発を除く5原発9基がすでに再稼働しています。
運転の停止を命じるための具体的な手続きについては、原子力規制委員会が今後検討することにしています。
一方、原発の運転を停止したあとの再稼働については、テロ対策施設の工事計画の認可を受けたうえで施設の工事が完了し、規制委員会による使用前の検査に合格すれば可能になるということです。