2019年4月24日水曜日

テロ対策遅れで原発の停止求める声明 脱原発弁護団

 関西、四国、九州の電力3社が、再稼働済みを含む5原発10基でテロ対策施設(特重施設)の完成が期限より遅れる見通しを示した問題を巡り、「脱原発弁護団全国連絡会」は23日、期限までに完成しない場合、直ちに運転停止させるよう原子力規制委員会に求める声明を発表しました極めて当然の主張です。
 声明の全文を併せて掲示します。
 
註 声明文中に出てくる「バックフィットルール」は、最新の技術・知見を取り入れた新たな基準を設けた場合に、既存の設備をそれに適合するよう更新・改造することで、最新の基準を既設の設備にも遡及して適合させるという趣旨に基づくものです。
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テロ対策遅れ原発の停止求める声明 脱原発弁護団
共同通信 2019年4月23日
 関西、四国、九州の電力3社が、再稼働済みを含む5原発10基でテロ対策施設「特定重大事故等対処施設」(特重施設)の完成が期限より遅れる見通しを示した問題を巡り、各地の原発差し止め裁判に携わる「脱原発弁護団全国連絡会」は23日、東京都内で記者会見し、期限までに完成しない場合、直ちに運転停止させるよう原子力規制委員会に求める声明を発表した。
 
 特重施設は、原発に航空機の衝突などのテロ行為があった際、遠隔操作で原子炉の冷却を維持する設備。原発の新規制基準で設置が義務付けられ、完成期限があるが、3社は17日の規制委との意見交換で1~3年ほど超過する見通しを示した。
 
 
2019年(平成31年)423
特定重大事故等対処施設の完成期限超過に対して毅然とした措置を求める声明
脱原発弁護団全国連絡会
共同代表 河合 弘之
 同  海渡 雄一
 再稼動済みの原発を持つ関西電力、四国電力、九州電力の3社は、本年4月17日、新規制基準で設置が義務付けられた特定重大事故等対処施設(「特重施設」)の完成が遅れ、これまで定めていた期限を約1~3年超過するとの見通しを明らかにした [i]。
 
 特重施設は、福島原発事故を契機として平成24年に改正された原子炉等規制法が、テロリズムその他の犯罪行為の発生も想定した必要な規制を行うこととしたことを受けて、故意による大型航空機の衝突その他のテロリズムがあっても放射性物質の大量放出を防ぐための施設として、新規制基準によって新たに設置が義務付けられたものである(設置許可基準規則42条)。
 
 平成24年改正法には、新たな基準にも適合性を速やかに確保し、常に最新の知見に基づいて最高水準の安全性を確保させるため、バックフィット制度が設けられた。新規制基準の検討時点では、規制委員会にも、その時点で出来るだけのことはすべて実施しようという意思があったはずである [ii]。さらに、言うまでもなく、テロリズムは電力会社の工事の完成など待ってはくれない。
 
 そうであるにもかかわらず、新規制基準の施行から5年間は特重施設についての規定を適用しないという経過措置規定が設けられていたこと自体、安全性に欠ける原発の稼動を認めたものとして遺憾であったが、その後、本体施設等の審査が長期化していることを理由として工事認可日から5年に改められたことには、規制委員会の職務放棄に等しいものとして、強い憤りを覚えたものである。
 
 それが、こともあろうに前記電力3社は、この改正された猶予期間すら守ることができないことを恥ずかしげもなく表明し、規制委員会に対して基準を見直すよう圧力をかけている。これは、周辺住民のみならず、全国民に対する許しがたい裏切り行為である。
 
 福島原発事故は、耐震バックチェックにおいて当初定めていた3年という期限を経過し長期にわたり基準不適合状態となった原発の運転を、なし崩し的に認めていたことによって発生したものである。今回も期限を超過した基準不適合状態の原発の運転をなし崩し的に認めていては、法でバックフィットルールが定められた趣旨に反することは明らかであり、近い将来に福島原発事故のような深刻な事故を繰り返すことが危惧される
 
 前記電力3社が示している工事の遅れる理由は、当初の見込みが甘かったことを自白しているものに過ぎず、何の合理性も認められない。我々は、規制委員会に対して、法でバックフィットルールが定められた趣旨に従い、定められた期限までに特重施設を完成できない事業者に対しては、直ちに原子炉の運転を停止するよう、毅然とした措置を取ることを強く求める。
以上
 
[i] 主要原子力施設設置者 (北海道電力等9社、日本原電及び電源開発)「特重施設等の設置に向けた 更なる安全向上の取組状況について」2019年4月17日
 
[ii] 第13回発電用軽水型原子炉の新安全基準に関する検討チーム議事録55頁 勝田忠広委員発言