2021年4月28日水曜日

老朽原発再稼働で国から50億円も 描けぬ立地自治体の将来

 福井県の杉本知事は4月28日にも、運転期間が40年を超えた関西電力の原発3基(美浜1基・高浜2基)の再稼働に同意する見通しです。美浜、高浜の40年超運転が現実になると、国から県に入る交付金は計50億円に上るということです。原発再稼働に誘引する手立てに怠りはないということです。

 国は今年2月に「立地地域の将来へ向けた共創会議(仮称)」の構想を打ち出しました。たくさんの原子炉を抱える福井県が次の時代をどう考えていくか、胸襟を開いて話し合いたい」梶山経産相は会議の狙いをこう説明しています。
 原発廃炉後の関係自治体の在り方を検討することは大事です。野瀬豊・高浜町長は「原発関連収入で町財政に比較的余裕のある10年間に、その次の10年を考える」と話しますが ・・・ 
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老朽原発再稼働で国から50億円も、描けぬ立地自治体の将来 福井県知事が再稼働同意へ
                          東京新聞 2021年4月27日
 福井県の杉本達治知事は4月28日にも、運転期間が40年を超えた関西電力の原発3基の再稼働に同意する見通しだ。福井県内にある運転開始40年を超えた関西電力の原発3基は、1度に限り20年の運転延長が認められたとしても「60歳」になれば運転を終える。美浜原発3号機(美浜町)は2036年。高浜原発1、2号機(高浜町)は34年と35年だ。原発と関連産業に依存してきた立地地域はその後どうなるのか。立地の未来図を描こうと、国は今年2月に「立地地域の将来へ向けた共創会議(仮称)」の構想を打ち出した。
 「産業の複線化を図らないと地域の経済が成り立たない。たくさんの原子炉を抱える福井県が次の時代をどう考えていくか、胸襟を開いて話し合いたい」。4月2日の衆院経済産業委員会で梶山弘志経産相は、斉木武志議員(立憲民主党福井県連代表)の質問に会議の狙いをこう説明した。
 国が原発立地地域の20~30年後の未来の姿を描く取り組みは全国で初めて。メンバーには福井県知事、立地自治体首長、資源エネルギー庁長官、関電などの電力事業者が並ぶ。5月に第1回会議を開き、年内にも結論を取りまとめる。実現までの工程も示すという。
 原発の一本足打法からどう脱却するのか。国は原子力関連の研究、廃炉ビジネス、新エネルギー産業育成などを「検討例」として挙げる40年超運転を進めたい国が、福井県のために用意した地域振興策を、再稼働是非の判断を控える杉本知事は評価する立場だ。

◆原発マネーに強く依存 高浜町は予算の5割以上が原発関連収入
 しかし、共創会議への期待は、原発関連以外の産業を見いだせていない地域の現状の裏返しでもある。
 高浜町の「原発の次」はほぼ白紙と言っていい。21年度の一般会計予算の歳入に占める原発関連収入は64億500万円と全体の5割以上を占める。町は今年2月に高浜1、2号機の40年超運転に同意する際、廃炉後を見据えた地域の将来像の明確化を国に要望した。野瀬豊町長は「(原発関連収入で町財政に)比較的余裕のある10年間に、その次の10年を考える」と話す。残された時間は、決して長くはない。
 国内の原発立地のパイオニアだった福井県では、商業用原発8基のうち最も若い大飯4号機(おおい町)でも運転開始から28年がたった。自民党県議の一人は高浜3、4号機が今後5年間のうちに運転開始から40年を超えることを踏まえ「申請さえ通ればもう20年動かすというのは、国も含め電力業界の誰もが考えていることだろう」と延長運転の広がりを見通す。
 原発の次を描けていない立地地域が、延長運転を拒否することは容易でない。美浜、高浜の40年超運転が現実になると、国から県に入る交付金は計50億円に上る。地元が重い課題を抱えたまま、将来への不安を一時忘れさせる再稼働が進もうとしている。(浅井貴司、鈴村隆一、尾嶋隆宏)