2021年4月1日木曜日

「東電が運転していいのか」 県技術委で批判相次ぐ

 柏崎刈羽原発の安全性を議論する新潟県技術委員会30日、会合を開き、福島原発事故以来初めて東電入れず委員だけで意見交換まし核物質防護体制の不備が相次いだ問題について厳しい指摘が次々と出されました。
 これまでは、委員から原発の安全性に関する疑問が示され、東電が答える形式でしたが、東電からは「既に対策済み」「解析上、安全性に問題はない」との回答が多く、議論が深まっていないとの不満がくすぶっていました。
 今月末で退任を希望している原子力コンサルタントの佐藤暁氏は、東電が質問に回答すると、それで通ってしまうところ不安があった述べました。
 元日本原子力開発機構鈴木元衛氏も、東電の説明がコンピューターによる解析結果を根拠とすることが多い点を疑問視し、具体的な実験に基づく説明を求めるよう提案ました。
 コンピュータによる「解析」は他者にとっては事実上のブラックボックスなので、答える方には極めて都合が良く、議論はそれ以上進みません。従って解析の正しさを示す実験結果なりの傍証を求めることは重要です。
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「東電が運転していいのか」柏崎刈羽原発対テロ不備 県技術委で批判相次ぐ
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 東京電力柏崎刈羽原発の安全性を議論する新潟県技術委員会(座長・中島健京都大教授)は30日、新潟市中央区で会合を開いた。同原発でテロなどを防ぐ核物質防護体制の不備が相次いだ問題について、委員からは東電に対する厳しい指摘が相次いだ。東電と原子力規制委員会の核物質防護の問題に関する情報開示が不十分で、公開の在り方を見直させるべきだとの声が複数上がった。
 この日の会合では、柏崎刈羽原発の安全性を確認するために今後、東電と規制委に確認が必要な論点を洗い出すため、委員間での意見交換を行った。この中で核物質防護を巡る問題に対しても議論になった。
 委員からは、東電について「(福島事故前から)安全に対する意識が変わっていないのではないか」「本当に原子炉を運転していいのか、しっかり確認しなければならない」などと厳しい声が相次いだ。

 一連の問題について発生時から長期間、県など地元に知らされず、東電、規制委が公開した情報も核物質防護を理由に限定的だったことを問題視する意見も複数上がった。
 原子力コンサルタントの佐藤暁委員は「核物質防護というだけで口をつぐまなければいけないわけではない」とし、県への速やかな通報を規制委に求めるなど「県として、言うべきことを言わなければならない」と強調した。規制委が公開のガイドラインを定めるべきだとの意見も出た。
 会合後、中島座長は核物質防護体制の不備について「(設備の)安全性にも抜けがあるのではないかと不信感を抱かせる。由々しき問題だ」と指摘。東電の安全文化が徹底されているかを見極めながら、原発を運転する「適格性」を確認する考えを示した。情報公開については「県側として、できるだけ情報を出してほしいと訴えていくべきだ」と強調した。

◎退任委員 議論の在り方に一石
 本年度最後となった県技術委員会の会合では、2011年の東京電力福島第1原発事故以来初めて、東電の説明を入れず、委員だけで意見交換した。今月いっぱいで退任する一部委員からの要望で実現し、中島健座長も「いろいろな意見が出て非常によかった」と評価した。技術委を去る委員から議論の在り方に一石が投じられた格好だ。
 初めての試みには「東電の説明をうのみにすべきではない」との意味が込められている。これまでの会合では、委員から福島事故や東電柏崎刈羽原発の安全性に関する疑問が示され、東電が答える形式が続いた。
 ただ、東電からは「既に対策済み」「解析上、安全性に問題はない」との回答が多く、委員の間で「議論が深まっていない」との不満がくすぶっていた。
 委員間の議論を提案していたのは、今月末で退任する原子力コンサルタントの佐藤暁氏。この日の実現を受け、「東電が質問に回答すると、それで通ってしまうところが技術委の議論で不安だった」と語った。
 議論は予定時間を約1時間オーバーするほど活発だった。昨年9月に報告書をまとめ、一区切り付いている福島事故の検証についても、原子力規制委員会の調査で「新たな知見が出た」として追加的な議論を求める意見が上がった。
 これまでの議論を通じて感じた懸念も示された。最も長く委員を務め、高齢を理由に再任されない元日本原子力研究開発機構研究主幹の鈴木元衛氏は、東電の説明がコンピューターによる解析結果を根拠とすることが多い点を疑問視。「解析結果は一人歩きし、落とし穴になる」として、具体的な実験に基づく説明を求めるよう提案した。
 中島座長は今後の議論の進め方について「事務局と相談したい」と述べるにとどめた。退任する委員らのメッセージをどう生かすかも注目される。

◎8委員が退任
 県は、東京電力福島第1原発事故の原因検証に区切りが付いたとし、4月以降、県技術委員会の委員数を現在の14人から検証前の10人程度とする。この検証のために拡充した委員や高齢の委員ら8人を31日の任期をもって再任しない方針。
 県が、70歳以上の高齢であることを理由に再任しないのは、小山幸司・三菱重工業部長代理、鈴木元衛・元日本原子力研究開発機構研究主幹、立石雅昭・新潟大名誉教授、原利昭・新潟大名誉教授の4人。
 福島事故の検証のために拡充されていたのは杉本純・元京都大大学院教授、立崎英夫・量子科学技術研究開発機構高度被ばく医療センター副センター長、山内康英・多摩大教授の3人。
 ほかに、原子力コンサルタントの佐藤暁氏が退任を希望した。
 県は後任に4人程度を充てる考えで、退任者から推薦された識者を含め打診している。