2021年4月2日金曜日

つれづれ語り(原子炉設置変更許可の取消を)(田中弁護士のつれづれ語り)

 331日付『上越よみうり』掲載された田中弁護士のつれづれ語り(原子炉設置変更許可の取消を)」を紹介します。
 設置変更許可を取り消されるべき原発は、言うまでもなくいま大いに叩かれている東電の柏崎刈羽原発です。
 いつものように語り口はソフトで丁寧ですが、「設置許可は取り消されるべきである」とする口調には断固たるものがあり、脱原発に向けて取り組んでいる我々を勇気づけてくれます。
 2月3日付の「つれづれ語り」で取り上げた「技術委員不再任問題」では花角知事を的確にノックアウトしましたが、それに引き続くものです。
   ⇒(2月4日)つれづれ語り(技術委員不再任問題)(田中弁護士のつれづれ語り)
 記事を書くにあたっては東電のHPにもキチンと目を通したり、東電に電話で確認するなど、丁寧に準備されていることが分かります。
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つれづれ語り(原子炉設置変更許可の取消を)
                   田中弁護士のつれづれ語り 2021年3月31日
           『上越よみうり』に連載中のコラム、「田中弁護士のつれづれ語り」
2021年3月31日付に掲載された第106回は、「原子炉設置変更許可の取消を」です。
相次いで発覚した東京電力に関わる大問題を振り返りつつ、原子炉設置許可が取り消されるべきであることを書きました。東京電力のこの間の逸脱ぶりは完全に常軌を逸しており、原発自体に対する賛否を超えて問題にすべきことだと思います。

原子炉設置変更許可の取消を

「妥協しないこと」
実によくできている。東京電力のテレビCMの話だ。ドローンで撮影したものであろうか、県内の風景を空撮した映像が流れた後、画面が暗転し「妥協しないこと」という白抜きの文字が浮かび上がる。そして、津波対策、電源対策、冷却対策のポイントが説明された後、「見つめ続ける。思い続ける。」という字幕が表示され、若手従業員と思しき人達が真剣なまなざしでカメラを見つめる。何も知らずにこの映像を見れば、柏崎刈羽原発では一切の妥協なく万全の安全対策がとられていると感じることだろう。
しかし、東京電力の実態が、CMから受ける印象とあまりにもかけ離れていることは、周知の通りだ。

安全対策工事の未完了問題
まずは安全対策工事が複数個所で未完了だった問題。東京電力はすべて完了したことを前提に住民説明会を行い、核燃料の装填まで計画していたのであるから、ちょっとした確認ミスや手違いで済まされる話ではない。東京電力が「安全対策」を軽視していることを象徴的に示すものと言えよう。
しかも、未完了の発表後、次々に未完了箇所が見つかり、実に4度にわたって未完了報告がなされることとなった。およそ組織としての体をなしていないお粗末ぶりだ。工事の内容すら把握できない企業に、原発の管理ができるとは思えない。

中央制御室への不正入室問題
次に、中央制御室への不正入室問題。中央制御室はその名の通り、原発全体を制御するための最重要施設だ。原子炉や各種系統を操作するための機器や、原子炉の状態を監視するための計器類がすべてここに集約されている。そのもっとも厳重に警戒・管理されているはずの中央制御室に、他人のIDカードを用いて不正に入室する事態が起こった。明白な核物質防護規定違反だ。
複数の警備員が「他人」であることに気づきながら、制止されることなく入室が果たされた。東京電力は今月10日に発表した再発防止策で、「厳格な警備業務を行い難い風土」があったと記載している。「厳格に行えない警備」に意味があるとは思えないが、それが「風土」にまでなっているというのだから救いようがない

侵入検知設備の機能喪失問題
侵入者の検知に関わる核物質防護設備が長期にわたり機能喪失状態にあった問題は、もっとも深刻かつ重大だ。テロ目的を有する者による原発への侵入を許してしまう恐れが続いていたということであり、その期間、県民の安全も脅かされ続けていたことになる。規制委員会が安全重要度において最悪の「赤」と評価したことも当然だ。サッカーで言えば一発退場のレッドカード、自動車の運転免許で言えば免許取消ということだ。
東京電力は以前、福島第2原発で侵入検知器の警報が鳴らないように意図的に設定していたことが発覚し、厳重注意を受けたことがある。安全性に対する意識が欠落しているとしか言いようがない。

いま問題とされていること
菅総理大臣は、今月19日の参議院予算委員会で、東京電力について、「組織体質や、原発を扱う資格に疑念を持たれてもやむを得ない」と批判した。また、花角知事は、今月18日の県議会で、「(東京電力に)原子炉の運転を的確に遂行するに足りる技術的能力が本当にあるのか」として、原子力規制委員会が行った原子炉設置(変更)許可自体に疑問を呈している



  新潟日報モア 2021年3月19日から
総理や知事も指摘する通り、いま問われているのは再稼働の是非などではなく、「そもそも東京電力には原発を管理する能力・資質がないのではないか」という根本的な問題だ。あれほどの原発事故を引き起こした当事者でありながらこの体たらくであることを考えれば、事故について真摯な反省をしていないものとみなさざるを得ないし、重大事故を引き起こしても変えられなかった体質を今後の対応で変えられるとはどうにも考えられない。
原子力規制委員会が2017年12月に柏崎刈羽原発の6号機及び7号機について行った原子炉設置変更許可は、東京電力について「(原子炉の)運転を的確に遂行する技術的能力がないとする理由はない」との判断を前提にしている。この判断の前提が崩れた以上、原子力規制委員会は、原子炉設置変更許可を取消すべきである。仮に規制委員会が東京電力について未だに「運転を的確に遂行する技術的能力がないとする理由はない」などと考えているのだとすれば、規制とは名ばかりであると言わざるを得ない。

おまけ
このコラムを書くにあたり、東京電力に電話を架けました。「柏崎刈羽原発の安全性に関するCMは新潟県内でしか放映されていないっていう話はほんとなんですか?」と聞いたところ、「それはそうなんですが、今はもうテレビCMは放映していないんです。」と言われました。「それはいつから放映していないんですか?」と聞いたところ、「今月10日からです。」とのこと。どうして放映をやめたんですか?」と聞いたら、「ご存知かと思うんですけど、IDの問題などがありまして・・・」等々と言っていました。
ID不正使用の問題が発覚したのはもっと前でしたが、その後も問題が立て続いたため、さらに批判が強まりそうな「3月11日」の前日にCMを取りやめにしたということでしょうか。「テレビではやっていないということですけど、ホームページでは見られますよね?ふさわしくないと考えたのであればそちらも削除した方がよいのではないですか?」とお伝えしたところ、「そうでしたか。すみません。担当の者に伝えておきます。」とのことでした。明日はエイプリルフールですが、ウソのCMはテレビでもホームページでも見せないで欲しいですね。