2021年4月15日木曜日

汚染水放出でわかった 菅首相 目玉政策の胡散臭さ(日刊ゲンダイ)

(「湯沢平和の輪」のブログ記事から、「トリチウム汚染水の海洋放出」に関わる部分を転載します)
 菅首相はトリチウム汚染水の処分を「福島の復興には避けて通れない課題」で、処分方法を決断するのが政治の責任とかと言って、いきなり「海洋放出」を宣言しましたが、海洋放出という方法を選択するのが「避けて通れない課題」である筈がありません。そんな何の脈絡もないことを並べ立てて最悪の方法を選ぶとはどういう思考回路なのでしょうか。誰もついていけません。
 政府の資料(末尾に添付)によると、海洋放出の総費用は34億円で、それに対してスリーマイル島事故での対応に倣って水蒸気にして空中に放出するのは349億円なので、300億円余りの差でしかありません。一方水素放出は1000億円となっていて、詳細は不明ですが3重水素ガスとして放出できるのであれば、気球充填ガスのヘリウムよりも軽いので、はるか上空に上り地球上からなくなります。1000億円程度で、トリチウムで海水を100年~200年間も汚染し続ける愚を避けられるのであればそうすべきです。
 問題点として、「水蒸気放出」には「汚染水の成分によっては焼却灰が発生する可能性」があるとなっていますが、焼却灰が発生するほど汚物塗れのトリチウム水であるならそのこと自体が問題です。仮に焼却灰が発生したらそれを処分すればいい話です。また「水素放出」には「残渣が発生する可能性」があるとされていますが、それもそれなりの処置処分をすれば済む話です。とにかく極めて不誠実で愚かしい海洋放出は撤回すべきです。
                 (中 略)
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汚染水放出ですべてがわかった 菅首相 目玉政策の胡散臭さ いかがわしさ
                    日刊ゲンダイ 2021年4月14日
                       (記事集約サイト「阿修羅」より転載)
「誰ひとり納得していないのによお。総理大臣のひと言で決定しましたって。それはおかしいよ」――。怒れる福島の漁業者の声が、菅政権のすべてを言い表している。
 増え続ける福島第1原発の汚染水について、政府は13日、海洋放出を正式決定。菅首相は福島の復興には避けて通れない課題と繰り返すが、どう考えても「復興」を遠ざける誤った決断だ。
 政府は2年後をめどに放出。含まれるトリチウムを国の基準の40分の1の濃度まで薄め、国際基準も満たすと説明するが、ひとたび流布された風評を消し去ることは困難だ。その苦汁をなめ続けてきたのが「常磐沖」の漁業者である。
 未曽有の事故から10年。放射性物質について厳しい出荷基準を設け、安全確認の信用を積み上げ、今年3月末に試験操業期が終了。ようやく今月から本格操業に踏み出した途端、菅政権に水を差されたわけである。重ねた努力も水の泡で、漁業者の怒りは当然。復興そっちのけで東京五輪開催にシャカリキの菅が、汚染水処理は「復興に避けて通れない課題」などと、よくも言えたものだ。
 汚染水は、事故で溶け落ちた核燃料を原子炉内から取り除かない限り、延々と発生する。その作業を終えるのに、専門家の多くは「100年以上はかかる」と試算している。その間、ずっと海に垂れ流すのか
 将来世代に間違いなく禍根を残す大問題なのに、国民の合意形成を度外視した「海洋放出ありき」の政権の姿勢は極めて危うい。あまりにも民意を軽視している。

毅然と決断を下したリーダー然の怪しさ
 海洋放出に至る経緯も民意無視だ。まず技術者らが2013年から2年半にわたって処分方法を検討し、5案を政府に提示。続いて社会学系の専門家も交えた小委員会が3年余り議論し、昨年2月に「海洋放出」と「陸上蒸発」の2案に絞った上で、「海の方が確実に実施できる」との報告書をまとめた。
 報告を受け、経産省が漁業者など利害関係者に意見を直接、聞いたのは昨年4月から。6年余りに及んだ検討期間の最後の最後だ。既に異論を挟む余地はなく、反発しても方針に反映されっこない。民主的プロセスなぞ「クソくらえ」と言わんばかりで、不安解消や理解を得ようとする姿勢はみじんも感じさせない
 他の選択肢を模索しないのも疑問だ。汚染水の貯蔵タンク増設は本当にムリなのか。第1原発を取り囲み、大量の除染土を管理する「中間貯蔵施設」は広さ1600ヘクタール。東京ドーム約340個分に及ぶ土地に増設する選択肢も考えられる。長期保管すれば、汚染水の放射線量を低減できるメリットもついてくる。
 なのに、菅は「一刻の猶予もない」と危機感をあおり、漁業者の猛反対を押し切って「海洋放出」を決定。民意をないがしろにしながら、さも「復興」のために毅然と重大な決断を下したリーダー然の振る舞いだ。困難に立ち向かう印象を強調する演出の胡散臭さがぷんぷんし、「福島切り捨て」の無情なホンネも見え隠れするのだ。
                 (後 略)

 経産省が「多核種除去設備等処理水の取扱いに関する小委員会」に提出した資料


田中龍作ジャーナル「世界のメディアが呆れる海洋投棄の決定」より