2019年3月13日水曜日

福井地裁の原発差し止め判決は「当然」 元裁判長の樋口さん

 2014年に福井県の関西電力大飯原発3・4号機の運転差し止めを命じた樋口判決福井地裁は、論理明解で極めて格調の高いものだったので、インターネットには多くの人たちの感動・賞賛の言葉が並びました。
 
 古里の津市に暮らしながら原発の危険を訴える講演をしている元裁判長樋口英明さん(66に、中日新聞がインタビューしました。
 樋口さんはいまも700ガルというような基準地震動では、それを超える地震は容易に起きるのだから原発を動かしてはいけないと強調しています。
 事実上、既設の原発が保有している強度に合わせて基準地震動を決めている状況なので、樋口さんの指摘は極めて当然です。
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福井地裁の原発差し止め判決は「当然」 元裁判長の樋口さん
中日新聞 2019年3月12日
 福島第一原発の事故後に初めて、原発の運転差し止めを命じた判決は、福井県の関西電力大飯原発3、4号機への、二〇一四年の福井地裁の判決だった。裁判長を務めた樋口英明さん(66)は今、古里の津市に暮らしながら、原発の危険を訴える講演をしている。樋口さんは「原発の危険を直視すれば、差し止めは当然の結果だった」と当時の判決を振り返る。
 
 -裁判官が過去の判決について語ることは異例だ。
 原発は国の存亡に関わる問題。原発が危険であることを知った以上、黙っておくわけにいかない。
 
 -判決に至った経緯は。
 訴訟を担当して半年で大飯原発がかなり危険だと分かった。電力会社の地震想定は根拠がなく、非常に甘かった。大飯原発が設計上耐えられる揺れの目安は、判決当時七〇〇ガル(揺れの勢いを示す単位)。私の自宅はハウスメーカーが三四〇〇ガルまで大丈夫と言っている。自宅より原発の強度が低いのは驚き。七〇〇ガルの揺れは震度6でも起こる。この程度の揺れで原発が危うくなるとは訴訟前には全く予想していなかった。
 
 裁判で、原告は「原発の敷地に強い地震が来るかもしれない」と訴え、被告の電力会社は「原発の敷地に七〇〇ガルを超える揺れは来ない」と主張した。震度6や7の地震は来ませんと言っているのと同じ。そんな予知はできないから原告の方が正しいと分かった
 
 -高裁で判決が覆った。
 高裁判決はひどいと思った。原発の新規制基準が合理的かどうかで判断している。高裁判決によると、その合理性とは形が整っているとか、前後のつじつまが合っているということのようだ。規制基準は地震学者の協力を得てつくっているから、それなりにつじつまが合っているのは当然。高裁は「規制基準に従っているから心配ない」というが、現実の危険性を見ていない。七〇〇ガルを超える揺れが来れば原発が危うくなる現実を見ると、原発を動かしてはいけないという結論は非常に単純に出る。
 
 -原発の再稼働が進んでいる中で、積極的に講演をするようになった。
 多くの国民は、規制基準があり、電力会社も安全だと言い、学者も地震は来ないと言えば、大丈夫だと思ってしまう。新幹線のように事故を起こせば被害が大きいものは、事故の発生確率が抑えられている。だが、原発は事故が起これば被害が膨大な上に、事故発生確率は抑えられていない
 
 -三重には、芦浜原発計画を、漁業者が中心となって止めた歴史がある。
 計画段階で止めてくれて本当に良かった。後になればなるほど、止めるのは難しくなる。例えば浜岡原発では、高い防潮堤が建設される前に運転を止める判決が出たらよかったが、防潮堤建設に莫大(ばくだい)な費用が投じられた後に、これを無用の長物にするという判断は難しくなってしまう
 私の地元に反原発の歴史があるのはうれしいし、誇りに思う。今後の講演で芦浜原発の反対運動のことも伝えられればいいと思う。
(森耕一)
 
 <ひぐち・ひであき> 鈴鹿市生まれ、津市で育つ。高田高、京都大法学部卒。1983年任官。福岡、名古屋などの地裁・家裁、大阪高裁などを経て、2014年5月に福井地裁で大飯原発運転差し止め判決、15年4月に高浜原発再稼働差し止めの仮処分決定をした。17年8月に退官。