2024年1月31日水曜日

志賀原発の再稼働審査、「年単位」で長期化へ…海底活断層の連動が想定超え

 最大震度7を観測した能登半島地震で志賀原発の震度は5とされましたが、装置の耐震性のチェックに必要な数値は各階各場所における「加速度(ガル)」です。
 北陸電力は早急にその数値を公表すべきです。
 今後同原発の審査(特に耐震性)が長期化することは明らかです。
 北陸電は当初海底活断層の長さを96キロと想定しましたが、実際には約150キロであったようです地震の強度は活断層の長さによって(一義的に)決まるので基準地震動は当然大きくなります。
 これについて規制委の山中委員長は「海底の活断層について国などの調査を待つ必要がある」と述べました。これは再稼働に前向きな規制委ではなく第3者が検討するのが正解で、それには数年がかかるので審査はそれ以上の時間がかかることになります。
 また宮野広・法政大元客員教授は、「変圧器の損傷や情報発信のあり方、当日の人員配置など、ソフト・ハード両面で地震で得られた教訓を洗い出し、他の電力会社とも共有すべきだ」と語ります。
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志賀原発の再稼働審査、「年単位」で長期化へ…海底活断層の連動が想定超えか
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 最大震度7を観測した能登半島地震で、北陸電力志賀原子力発電所(石川県志賀町)の再稼働に向けた審査が長期化する見通しとなった。北陸電の想定より長い海底活断層が連動した可能性が浮上。原子力規制委員会は、原発への活断層の影響を見極めるには数年レベルの時間が必要との見方を示す。

 同原発には1、2号機の2基の原子炉があり、東京電力福島第一原発事故があった2011年に運転を停止した。北陸電は14年、2号機の再稼働を目指し安全審査を申請した。
 規制委の審査では、原発周辺の活断層などがもたらす最大規模の揺れ「基準地震動」を決め、原発の耐震設計に反映させる。これまでは敷地内の断層が活断層かどうかに時間を費やし、これから周辺の活断層に関する審査を進める矢先に大地震が起きた。
 北陸電が準備した審査資料では、能登半島北部に連なる計約96キロ・メートルの海底活断層が連動する可能性を説明していた。これに対し、政府の地震調査委員会は今回の地震では、海底活断層が連動するなどして約150キロ・メートルの岩盤が動いた可能性を指摘。活断層が長ければ想定される地震の規模は大きくなり、審査資料の根拠が揺らぎかねない。

 原発周辺にはこのほかにも陸域、海域に多数の活断層がある。このうち原発に近い志賀町沖合の活断層は今回の地震で動きやすくなったと指摘する専門家もいる。活断層の影響が不明なままでは原発の耐震設計はいつまでも定まらず、再稼働できない状態が続く。
 規制委の山中伸介委員長は、活断層について国などの調査を待つ必要があるとした上で「恐らく年単位の時間がかかる。審査はそれ以上の時間がかかる」との見通しを示す。

変圧器損壊で受電できず「想定外」
 今回の地震で、同原発は震度5強の揺れに見舞われた。安全上、重大な問題は起きていないが、「想定外」のトラブルもあった。
 同原発では、計1657体の核燃料があり、外部電源を使い燃料プールで冷却する必要がある。しかし、地震で原発内の複数の変圧器が破損し、5系統のうち2系統の電源網が使えなくなった。完全復旧には、半年以上かかる見通しだ。

 北陸電は、外部電源が全て失われた福島第一原発事故後、電源の多重化を進めてきた。非常用ディーゼル発電機などの準備もある。ただ、変圧器の破損で受電できない事態は、規制委の委員から「(規制委側として)想定していなかった」との発言が出た。
 北陸電の情報発信も修正が相次いだ。作業員が1日夕、2号機で「爆発音」を聞き、焦げ臭いにおいがしたと報告。林官房長官は「変圧器に火災が発生し、消火済みだ」と発表したが、実際は装置の作動音と油のにおいによるものだった。変圧器から漏れた油の量や、津波による水位変動の説明も修正した。北陸電は「社内の情報共有が不十分だった」と釈明した。

 宮野広・法政大元客員教授(原子炉システム学)は「変圧器の損傷や情報発信のあり方、当日の人員配置など、ソフト・ハード両面で地震で得られた教訓を洗い出し、他の電力会社とも共有すべきだ」と語る。