2024年1月6日土曜日

新年日本を襲った巨大地震/地震と原発言及への過剰反応(植草一秀氏)

 植草一秀氏が掲題の記事を出しました。
 今年の元日は能登半島を震度7の巨大地震が襲い、126名の死者、210名の行方不明者を出しました。この地震の震源地は能登半島の北側から佐渡の北側に伸びる約100キロに及ぶ帯状のものと見られています(1729年8月にも能登と佐渡で同時に地震が起きています)。

 能登地方には火山帯はないので、京大西村教授は太平洋プレートが日本の下に潜る際に同伴した海水が地下で熱水となってゆっくりと上昇し群発地震を起こしたという仮説を立てて注目されました。
 能登半島はそれ以降今回を含めて3回の大地震に見舞われました。
 能登半島を襲った主な地震をピックアップすると下記のようになります。

 主な地震
  1729年    能登・佐渡地震 M6.6-7.0
  1892年    能登地震 M6.4
  1933年    七尾湾地震 M6.0
  1993年    能登半島沖地震 M6.6
  2007年3月  能登半島地震 M6.9
  2020年11月. 能登群発地震
  2022年6月  能登半島地震 最大M7.6
  2023年5月  令和5年奥能登地震 M6.5
  2024年1月  令和6年能登半島地震 M7.6

 原子力規制委は目下、原発の真下に活断層があるか否かを決め手にして原発の建設を、従って再稼働の可否を判断しています。それに対して植草氏は、実際には地震の半分は既知の活断層で起きているものの残りの半分はそれ以外の所で起きているので、正しい判断基準とは言えないとかねてから述べています。
 そして志賀原発については、2016年の有識者会合の評価書は志賀原発敷地内の一部の断層を活断層と解釈するのが「合理的」としたが、原子力規制委が2023年3月15日の定例会合で、志賀原発2号機直下を走る複数の断層が「活断層ではない」とする審査チーム結論を了承したという不明朗な経過があとして、基準地震動1000ガルとした志賀原発敷地内で、実際にどれだけの最大加速度が観測されたのかが公表されねばならないと述べています。現実にこれだけ激甚な地震が高頻度で襲っている中で、あやふやな根拠で再稼働を認めるべきではありません。
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新年日本を襲った巨大地震
                植草一秀の「知られざる真実」 2024年1月 2日
みなさま新年あけましておめでとうございます。
本年もなにとぞよろしくお願い申し上げます。
本年がみなさまにとりまして素晴らしい1年になりますことをお祈り申し上げます。
何かと暗いことが多い世の中ではありますが、
「面白きこともなき世をおもしろくすみなすものは心なりけり」
の歌もあります。
前を向き、明るく楽しく、この世を生きて参りたく思います。
引き続きブログ、メルマガをご高覧賜りますよう謹んでお願い申し上げます。

新年の日本列島を大きな地震が襲った。
その影響で新年の第1号発行が1月2日になってしまったことをお詫び申し上げたい。
2024年1月1日16時10分、石川県能登地方(輪島の東北東30km付近)の深さ16km(暫定値)を震源とするマグニチュード7.6(暫定値)の地震が発生した
発震機構は北西―南東方向に圧力軸を持つ逆断層型(速報)と発表されている。
最大震度は石川県の志賀町(しかまち)で観測した震度7。
北海道から九州地方にかけて震度6強~1を観測した。
1月2日午前9時時点で、1日16時以降、震度1以上を観測した地震が147回(震度7:1回 震度5強:3回 震度5弱:5回 震度4:20回 震度3:57回 震度2:61回)発生している。

今後1週間程度の間に最大震度7程度の余震が発生する可能性が指摘されている。
すでに多くの家屋倒壊、死亡、負傷、道路損壊、ライフライン寸断などの影響が発生している。
一刻も早い被害者の救出が求められる。また、亡くなられた方のご冥福をお祈りしたい。

地震発生で懸念されるのが原発である。最大震度7を記録した地点は石川県志賀町である。
実はこの志賀町に北陸電力志賀原子力発電所が存在する。
幸い、志賀原発は運転停止中だったが、志賀原発が稼働中にこの地震に見舞われたなら、どのような事態に移行したか、想像するだけで恐ろしい

能登半島での地震発生と志賀原発との関連についてブログ記事、メルマガ記事を掲載してきた。
2023年5月6日付ブログ記事「地震で廃炉避けられぬ志賀原発」https://x.gd/RXYUQ
メルマガ記事「1892年に志賀原発至近で大地震」https://foomii.com/00050
2023年5月11日付ブログ記事「原発稼働は人道に対する罪」https://x.gd/7ZRSm
メルマガ記事「プレート笑う者はプレートに泣く」
同記事を改めて通読賜りたく思う。

石川県珠洲市は2020年から群発地震に見舞われている
2023年5月5日には震度6強の地震に見舞われた。
この地震について京都大学の西村卓也教授が地震発生のメカニズムについて解説した。
西村教授は能登半島で「前例のないような地殻変動が起きている」と指摘。
西村教授は、国土地理院が全国約1300ヵ所に設置したGPS定点観測データで地盤の動きをとらえ地震を予測する研究を行っている。
珠洲市の観測点では2020年11月から2023年4月までに7センチの隆起が確認されているとのことだった。
地面の隆起は火山帯で多く見られるが、火山のない地域でこのような隆起が起こるのは25年間のGPSデータの中で前例がないとする。

2020年12月ごろから能登半島の地下10数キロに「流体」=地下の深部から上昇してきた水が溜まるという現象が観測され、流体が周りの岩盤を押し広げたりして断層に浸透することで地盤や地面の隆起が発生しているとのこと。
現在も「流体」が溜まっており、周りの岩盤や断層に浸透しているため、活発な地震活動は続くと考えられるとの見解を示していた。
西村教授は能登半島に活断層が多数存在し、そもそも地震がおこりやすい地域であると指摘していた。

活断層は過去に地震が起こったことを示す化石みたいな存在だが、活断層以外のところでも地震が起こる可能性がある。
日本全国で活断層の調査は進んでおり、最近起こった地震のうち、活断層で起こったものが約半分。
しかし、残りの半分の地震がノーマークの場所で発生したとの研究がある
今回の地震で震度7が記録された志賀町に北陸電力志賀原発が所在する。
原発敷地内に活断層があれば原発の稼働は認められない。
2016年の有識者会合の評価書は志賀原発敷地内の一部の断層を活断層と解釈するのが「合理的」としたが、この判断が昨年覆された。
原子力規制委員会が2023年3月15日の定例会合で、志賀原発2号機直下を走る複数の断層が「活断層ではない」とする審査チーム結論を了承したのである。
稼働は困難と見られていた志賀原発の稼働が強行される恐れが生じている。

しかし、今回の地震はこの暴挙を完全に否定するもの。
原発敷地内でどの程度の揺れが観測されたかが公表されねばならない。
能登半島地震と志賀原発稼働問題を直ちに論じる必要がある。

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続きは本日のメルマガ版「植草一秀の『知られざる真実』」第3668号
「志賀原発立地点で震度7観測」でご購読下さい。

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地震と原発言及への過剰反応
                植草一秀の「知られざる真実」 2024年1月 4日
1月1日16時10分に発生した「令和6年能登半島地震」。
地震のエネルギーを示すマグニチュードは7.6
1995年に発生した阪神・淡路大震災のマグニチュード7.3を上回る規模の地震だった。
1995年以降の日本で発生した地震でマグニチュード7.6を上回るのは2003年9月の十勝沖地震(8.0)と2011年3月の東日本大震災(9.0)のみ
震度7を記録したのは95年の阪神・淡路大震災、2004年10月の新潟県中越地震、2011年3月の東日本大震災、2016年4月の熊本地震、2018年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震を含めて今回が6回目。
揺れの強さの目安となる「最大加速度」では、2011年の東日本大震災に匹敵する2828ガルだったと報じられている。

石川県志賀町の観測点で東日本大震災の最大加速度(2933ガル)に近い2828ガルを記録した。
さらに、能登半島各地の計7地点で、「大地震」の尺度の一つとなる1000ガル以上の最大加速度が観測された
最大加速度は、建物の耐震設計の基準などで用いられる指標の一つ。
読売新聞は、防災科学技術研究所(茨城県)の青井真・地震津波火山ネットワークセンター長の
「最大加速度だけが揺れの強さの指標ではないが、これほど広範囲で1000ガル以上となる地震は非常に珍しい
との説明を伝えている。
最重要のポイントは最大加速度2828ガルを記録したのが石川県志賀町であること。

北陸電力志賀原子力発電所は石川県志賀町に立地する。
北陸電力によると、1日午後4時10分ごろの地震で1号機の原子炉建屋地下2階で震度5強相当の揺れを観測したとのこと。
北陸電力は、揺れの大きさが1号機で、水平方向で336.4ガル、鉛直方向で329.9ガルだったと公表した。
「原発を止めた裁判長」として知られる樋口英明元福井地方裁判所裁判長は、
「問題は原発の設計基準となる堅い岩盤『解放基盤表面』でどれだけの数値なのか。
だから志賀原発の危険性の程度はにわかに判断出来ない」
としている。

原発が立地する志賀町で2828ガルという最大加速度が観測されている。
しかも、1000ガルを超える激しい揺れ=最大加速度が能登半島全体にまたがる7地点で観測された。
志賀原発の耐震性能=基準地震動はフクシマ原発事故時点では600ガルだったが、事故後に1000ガルに引き上げられた。
しかし、今回の地震で1000ガルを超える激しい揺れが能登半島全域で観測された。
志賀原発敷地内でどれだけの最大加速度が観測されたのかが公表されねばならない。

樋口英明氏は
「そもそも地震の予知予測は出来ません。
日本人の常識です。
にもかかわらず電力会社は〇〇ガル以上の地震は来ないから大丈夫だという。
どこでどんな大きな地震が来るかもわからないのにです」。
と指摘する。
樋口氏は「原発の敷地に限っては強い地震は来ない」という地震予知に依拠した原発推進を批判する。
現に、原発が立地する石川県志賀町で2828ガルの最大加速度が観測されてしまった。
2007年7月に発生した新潟県中越沖地震で、新潟県柏崎市に立地する東京電力柏崎刈羽原子力発電所3号機で2058ガルの最大加速度が観測されたことが明らかにされた。
この事実を受けて、日本の原発のなかで唯一、柏崎刈羽原発1~4号機の基準地震動だけが2300ガルに引き上げられた

これ以外の原発の基準地震動はフクシマ原発事故後に引き上げられたが、ほとんどが800ガル以下、まれに1000ガルの水準である。
志賀原発の基準地震動は1000ガルに引き上げられたが、今回志賀町で観測された2828ガルよりははるかに低い

志賀原発で「火災が発生した」とXに記述した鳩山友紀夫元首相に対して、「火災は発生していない」ことを根拠に批判する主張が流布されているが、原因は北陸電力と政府の対応にある。
志賀原発における油漏れと変圧器の一部破損について、原発関係者が火災の発生と認識して国や関係自治体などに報告し、政府が「火災が発生した」と発表したことがそもそもの原因。
北陸電力と政府は、その後に誤発表を撤回した。
政府と北陸電力の誤発表が批判の対象とされるべきで、当初の政府発表通りの記述を示した鳩山元首相を批判するのはお門違いも甚だしい
さらに、北陸電力は、志賀原発の敷地内に海水を引き込んでいる水槽の水位について、当初、「有意な水位の変動は確認できなかった」としていたが、実際には約3メートル上昇したことを、のちに公表した。
失態があったのは北陸電力と政府の側であることを確認しておく必要がある。

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