しんぶん赤旗に掲題の文春新書への書評が載りましたので紹介します。
評者は大島堅一・龍谷大学教授です。(同書は「文春新書」で1000円)
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【書評】「それでも日本に原発は必要なのか」潰される再生可能エネルギー
青木 美希 著
しんぶん赤旗 2026年4月29日
原発推進派の内情に迫る取材力 評者 大島堅一・龍谷大学教授
福島原発事故から15年が経過した。いまだにふるさとに帰れない人々かおり、放射性物質で汚染された地域も残されている。にもかかわらず、岸田政権以来、日本は「原子力の最大限活用」へと舵を切った。なぜ再生可能エネルギー(再エネ)ではなく原発なのか。著者は、福島原発事故の被害を出発点に、原発推進にいたった社会構造を国内外での丹念な取材で解き明かしている。
かつて日本は、石油ショック以来、原子力を「石油代替エネルギー」開発の中心に据え、エネルギー関連予算の大半を投じてきた。本書のエネルギー政策史の記述には著者なりの解釈も含まれる。とはいえ、原子力最優先の政策の全体像を読者はつかむことができるだろう。
本書は、著者が属する朝日新聞社の業務外の取材によるものである。しかし、本書を説得力あるものにしているのは、まさに新聞記者としての取材力にほかならない。本書では、外部からはわからない与党内の動きが明らかにされている。自民党内では「額賀調査会(ヌカチョウ)」が再エネ議論の場を封殺し、原発推進の提言を次々と打ち出した。再エネ推進派の議員が岸田政調会長に別の議論の場を求めると、「額賀さんに・・・だめだと言われた」と退けられたという。石破元首相も総理就任前、著者に「原発、ゼロにしたいよね」と語りながら、「脱原発と言っているのは、我が党では少ない」と嘆いている。
こうした原発推進の背景には日本原子力産業協会の会員企業から自民党への巨額の企業献金がある。経済産業省の官僚は「企業献金を廃止しないと無理です。電力会社の力の源はそこにあります」と著者に告白した。
エネルギーの未来は市民が選ぶものである。原発事故を経験した日本に原発は不要である。本書は、市民が知るべき事実をわかりやすく伝えている。幅広い人々に読まれることを斯待したい。
(文春新書・1000円)
著者 青木 美希 あおき・みき
ジャーナリスト。日本ペンクラブ言論表現委員会副委委員長
著書『地図から消される街』ほか