2015年8月25日火曜日

新潟県知事がSPEEDIの活用などで規制委員長と会談


 泉田裕彦新潟県知事は24日、原子力規制の田中委員長と都内で会い、SPEEDIの活用など原子力発電所の防災対策の改善を求めました。
 そして規制委が考えている事故後の放射能の実測値をもとにした対応では、ヨウ素剤の配布や避難指示が住民が被曝した後になので、住民理解を得るの困難だと伝えましが、田中氏はSPEEDIの活用に否定的な立場を示し「本当に必要と知事が判断されるのであれば、取り組んでいただきたい」と他人事のような対応をしていました。
 
 これでは仮に今後会談が継続されたとしても、なかなか実りのあるものになりそうもありません。
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泉田知事と初会談 狼狽する田中・原子力規制委員長
田中龍作ジャーナル 2015年8月24日
 一番会いたくない相手と とうとう 会うハメになった―
 
 原子力規制委員会の田中俊一委員長が、きょう、泉田裕彦氏と会談した。新潟県知事ではなく全国知事会・防災委員長(※)としての泉田氏とである。
 泉田知事は「住民の避難対策が不十分なままの原発再稼働はありえない」として田中委員長に面談を求めていた。原子力規制庁の発足直後からだから3年越しとなる。
 しかし田中委員長は、避難対策は自治体が決めること、として面談を断り続けてきた。
 経産省資源エネルギー庁出身で、原子力行政の手の内を知る泉田知事は手強い。田中委員長は逃げていたのだ。
 きょうの会談でも攻める泉田知事に対して田中委員長は防戦一方だった。泉田知事はヨウ素剤の配布、SPEEDIの公開など避難にあたって必要なものを求めた。田中委員長からは明確な答えが返って来なかった。
 
 田中委員長はノラリクラリとかわせるものとタカをくくっていたのだろうが、そうは問屋が卸さなかった。3年間、業を煮やし続けた知事が強烈なアッパーカットを見舞ったのだ―
 
泉田:「田中委員長が『原子力避難計画を作ること自体は規制庁の仕事ではない』と発言したと承知している…(中略)…山谷(えり子・防災担当)大臣からも望月(義夫・原子力防災担当)大臣からも『(それは)規制庁の仕事なのでお伝えしておきます』と言われている。このあたりの仕事は規制庁の仕事と考えてよろしいか?」
田中:「いや、必ずしも私がここで一存で決められることではないので、検討させて頂く・・・」
泉田:「(緊急時の避難作業において労働安全法と原子力災害対策指針との法整備が必要なので)勧告権の行使をしていただけないでしょうか?」
田中:「いや、勧告権というのは、法的には私ども持っていますけど、やたらとそれなりに意味のある勧告でないと。勧告したけれども、勧告しただけでは私としても本意ではない」。
 
 田中委員長の答えは理屈になっていなかった。声はふるえ、時おり吃った。手は机の上でバタバタと躍った。明らかに狼狽していた。
 田中委員長にとっては途方もなく長い30分間だった。面談の後、泉田知事だけが、ぶら下がり記者会見に応じた。
 
 「勧告権をなぜ使わないのか、相変わらず分からなかった。必要なものは各省庁に勧告権を行使してほしい」。泉田知事は田中委員長の消極的な姿勢を批判した。
 
 筆者は質問した―「田中委員長の姿勢からは、原発を動かすことの危機感、万が一の事故があった時の危機感が感じられたか?」と
 泉田知事は次のように答えた―
 「規制委員会のミッションは何なのか? 制度設計をした際に規制委員会の果たすべき役割は国民の生命・安全を守ること。(なのに)住民目線というところのお話が必ずしも伝わってこなかったなというのが印象だった」
 「住民の健康を守るという視点で何が必要か、まず勧告を出すという姿勢がないと。政府から独立して勧告を出すという本来の役割が果たせないんじゃないか。規制委員会は独自の立場で言えるという事でないと保安院時代と変わらない」。
 
 7月29日、山本太郎議員が国会で弾道ミサイルが原発を直撃した場合の被害を質問したところ、田中委員長は「(そうしたことは)規制にない」と答弁した。この問題について筆者は知事に聞いた。
 泉田知事が明快に答えた―
 「政府部内を規制委員会がしっかり統括するしくみができていない。原発が攻撃されたらどうなるかという被害想定を外務省が過去やっている。内部文書も存在している」
 
 「田中委員長が知らないということであれば、日本の原発の安全性の確保というのは、一体どうなっているのか?」
 住民の安全を第一に考える泉田知事と見切り発車で原発を再稼働させた田中委員長の初顔合わせ。この会談で原子力行政のいい加減さがモロバレになったことは、じつに“有意義”だった。
 ~終わり~
 ※ 正式名称は「全国知事会危機管理・防災特別委員会委員長」。
 読者のご支援の御蔭で『田中龍作ジャーナル』は続いています。
 
新潟県知事が原子力規制委員長と会談
 放射能拡散予測の活用など要望
ブルームバーグ 2015年8月24日
(ブルームバーグ):新潟県の泉田裕彦知事は24日、原子力規制委員会の田中俊一委員長と都内で会い、放射能拡散の予測システムの活用など原子力発電所の防災対策の改善を求めた。
 
泉田氏は24日の会談で、緊急時に気象条件などを基に放射能がどう拡散するかを予測する緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を、原発周辺の自治体が避難計画策定時に利用できるようにすることなどを柱とした安全対策を要望した。
会談で泉田氏は事故後の放射能の実測値を基にした対応では、ヨウ素剤の配布や避難指示が被ばくした後になる可能性を指摘し、「住民理解を得るのが困難」と田中氏に伝えた。海外の原発を保有する国々では予測の数値が用いられていることを踏まえ、日本でも「SPEEDIなど何らかの予測を活用する仕組みを構築して欲しい」と要請した。
 
規制委は14年10月、SPEEDIの予測の不確かさを排除することはできず、反対に被ばくのリスクを高めかねないという理由から、同システムを採用しない判断を下していた。会談でも田中氏は活用に否定的な立場を示した。「本当に必要と知事が判断されるのであれば、事前にヨウ素剤を配ることも含めて取り組んでいただきたい」と述べ、自治体が必要な対策がとれるよう資金措置などを検討する考えを示した。
 
泉田氏は会談後記者団に対し、東京電力 の柏崎刈羽原発(新潟県柏崎市、刈羽村)について、福島第一原発事故の検証や総括が必要だとし、「再稼働を議論する段階にない」と従来の立場を繰り返した。「どこに体制のミスがあったかの総括や社内処分も行われていない」と指摘した。
 
泉田新潟知事:原子力規制委員長と初面会 定期協議を要請
毎日新聞 2015年08月24日
 全国知事会危機管理・防災特別委員長を務める泉田裕彦新潟県知事は24日、原子力規制委員会の田中俊一委員長と初めて面会した。泉田知事は、原子力防災を巡る現行の法体系に整合性がなく、実施が困難だと指摘した上で、規制委と知事会の定期的な協議の場をつくるよう求めた。
    
 規制委は東京電力福島第1原発事故を受けて改定した原子力災害対策指針で、原発事故時に530キロ圏の住民は屋内退避し、被ばくを防ぐ安定ヨウ素剤は原則として事故後に配ることや、緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム(SPEEDI)を避難に使わないことなどを決めている。
 泉田知事は、530キロ圏内での避難住民の搬送について「放射線量が高い場所でのバス運転手の派遣は、労働安全衛生法の制約があり難しい」と指摘。安定ヨウ素剤の事後配布についても「SPEEDIの予測情報がないと的確な配布が困難になる」と述べた。
 これに対し、田中委員長は「SPEEDIの活用は混乱のもとで、いろいろな問題が起きる」と説明。定期協議については「なかなか難しい」と述べた。
 
 泉田知事はこれまでもSPEEDIの活用などを求めて規制委を批判し、田中委員長との面会を求めてきた。【酒造唯】

川内1号機 海水混入は復水器配管5本の損傷が原因

 再稼働させた川内原発1号機の復水器に海水が混入した原因は、復水器内の冷却用配管5本の損傷によるものと分かりました。
 比率としては小さいといえますが、海水による腐食が原因であれば今後続出する可能性もあります。
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復水器配管5本から海水混入 川内1号機のトラブル
東京新聞 2015年8月24日
 九州電力は24日、再稼働させた川内原発1号機(鹿児島県)の復水器に海水が混入して出力上昇の作業を中断したトラブルで、復水器内の冷却用配管(直径25ミリ)5本から海水が漏れ出たとする点検結果を明らかにした。修理などが終わり次第、出力を上げてフル運転に入るとしているが、詳細な日程は決まっていないという。
 
 九電によると、20日午後、発電タービンを回した後の蒸気を水に戻す復水器にたまった水を送り出すポンプの出口で、基準値を上回る塩分など不純物の混入を知らせる警報が鳴った。
 配管約1万3千本を点検したところ、少なくとも5本損傷が判明、海水の漏出を確認したという。 (共同)

2015年8月24日月曜日

25日は例会です


 25日(火)は8月の例会です

  下記により「原発をなくす湯沢の会」の8月の例会を行います。
 どうぞお出でください。
  
 と き  8月25日(火) 19:00~21:00 
 ところ  湯沢公民館 1階 研修室 (詳細は事務室前の表示板をご覧ください)
 
 学習会のテキストは、「脱原発社会へ-電力をグリーン化する」長谷川公一(岩波新書) で、今回は第2章 「グリーン化」は21世紀の合言葉 の前半1~2です。
 
 会員外の方でも ご関心・ご興味がありましたら、どうぞお出でください。

除染廃棄物 庭先などの現場保管が10万カ所超

 国費で行う住宅除染は今年6月末時点で実施対象約6割の約26万4000戸で完了しましが、除染廃棄物仮置き場が満杯状態のため、行き先のない廃棄物は庭先などで「現場保管」するしかありません。その数は既に10万カ所を超えました。
 
 自宅からの撤去を要望されて自治体が新たな仮置き場を設けようとしてもそこからの搬出時期の見通しが立たないので地権者や周辺住民の理解得られません。
 中間貯蔵施設移送用の「積込場」を設けて現場保管の廃棄物を集約する案もありますが、それも中間貯蔵施設への輸送スケジュールが不透明では進めようがありません。
 
 中間貯蔵施設については、昨年8月30日大熊、双葉両町建設受け入れを決定したことにともない、環境省2365人に上る地権者との用地交渉に着手したものの、契約に至ったのはわずか5人に過ぎないというのが実情です
 
 福島民報が除染廃棄物の現場保管の現状について報じました。
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現場保管10万カ所超 除染廃棄物 輸送開始時期見えず 
中間貯蔵工程表作成遅れ
福島民報 2015年8月23日
 東京電力福島第一原発事故に伴う除染廃棄物を保管する中間貯蔵施設の建設を(福島)県が受け入れてから間もなく1年を迎える。県は復興を加速させるために判断し、その後の除染は着実に進んでいる。一方で行き場のない廃棄物を庭先などで管理する現場保管が急増し、県内で10万カ所を超えた。多くの現場保管を抱える市町村からは環境省に対し、本格輸送の開始時期の見通しを早急に示すよう求める声が上がる。 
 
■行き場失う
 県によると、国費で行う36市町村の住宅除染は今年6月末時点で実施対象約43万2000戸に対し、約6割の約26万4000戸で完了した。前年同期の13万6000戸から倍増した。国が直轄で行っている避難指示解除準備、居住制限両区域の住宅除染も28年度末までに全て終了する見通しとなっている。 
 一方で、仮置き場には廃棄物約230万立方メートルが保管されている。これまでにパイロット(試験)輸送で中間貯蔵施設に運び出されたのは約0・5%の約1万1000立方メートルにとどまる。仮置き場は満杯状態で、新たに除染で出た廃棄物は行き場を失っている。 
 県が集計した現場保管数の推移は【グラフ】コピー不能の通り。今年3月末時点で10万2093カ所に上る。1年前の26年3月末は5万3057カ所で、1年間でほぼ倍になった。県の担当者は「今後も同様のペースで増え続けるだろう」と推測する。 
 
■自治体の悲鳴
 今年3月末の現場保管が4万7526カ所で県内最多の福島市は本格輸送の前段となるパイロット輸送の開始時期すら提示されていない。担当者は「多くの市民から『早く自宅から持っていって』との声が寄せられる新たな仮置き場を設けたいが、搬出時期の見通しが立たず、地権者や周辺住民の理解を得られない」と頭を抱える。 
 郡山市は、本格輸送に備えて現場保管の廃棄物を集約する「積込場」の整備を検討している。しかし、担当者は「輸送スケジュールが不透明では、整備計画すら立てられない」とため息をつく。 
 
■早期提示を
 今年3月に中間貯蔵施設への廃棄物搬入が始まった際、環境省は汚染土壌の輸送スケジュールをはじめ、県外最終処分に向けた工程を「2~3カ月でまとめる」との考えを示した。しかし、半年近くが経過した今も、公表されていない。同省の担当者は「減容化の技術の検討などを始めたばかり。いつ示せるかは分からない」とする。 
 同省と県、大熊、双葉両町が締結した安全確保協定では、工程表の作成と毎年の進捗(しんちょく)の報告を国に義務付けた。県の担当者は「工程表の作成が遅れれば、現場保管の対応などにも影響が出る」として、早期の提示を求める方針だ。 
 
□背景
 中間貯蔵施設をめぐっては、平成26年8月30日、県が大熊、双葉両町の了承を得て、建設受け入れを正式決定した。同9月1日には佐藤雄平知事(当時)が首相官邸で安倍晋三首相に建設受け入れを伝えた。環境省は同月から、両町にまたがる約16平方キロの2365人に上る地権者との用地交渉に着手。今年7月末までに850人と接触し、570人が現地調査に同意した。しかし、契約に至ったのはわずか5人となっている。 

2015年8月23日日曜日

美浜原発、原子力規制委が基準地震動を了承

 原子力規制委員会は21日、美浜原発3号機基準地震動をこれまでの750ガルから993ガルに引き上げるとする関電の方針を了承しました。
 
 それで十分ということではないのですが、これまでよりは前進しました。
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美浜原発、審査時間切れ回避へ一歩 
原子力規制委が基準地震動了承
福井新聞 2015年8月22日
 原子力規制委員会は21日の審査会合で、関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)の基準地震動(耐震設計で目安とする地震の揺れ)の想定について、関電が見直して提出した地震動をおおむね妥当として了承した。最大加速度は、新規制基準に基づく安全審査の申請時の750ガルから993ガルに引き上げる。
 
 運転開始から38年を経過した美浜3号機は、運転40年を迎える来年11月末までに新基準と運転延長の二つの審査に合格しないと廃炉が濃厚になる。規制委は、審査の時間切れを回避するには今月末までに基準地震動を確定する必要があるとしていたが、大きな難関を突破した。
 
 この日は、関電がこれまでの審査を踏まえた基準地震動の計算結果を提出。敷地周辺の活断層の連動などを前提に24ケースの地震動を示し、敷地西側の海域を走る「C断層」を震源とするケースが最大の993ガルとなった。
 
 規制委の地震・津波担当の石渡明委員は「十分な検討がなされていると判断する」と述べ、24ケースを基準地震動に設定して審査を進めていく認識を示した。
 
 基準地震動の引き上げにより、関電は今後、設備などの耐震評価を見直すとともに追加の耐震工事が必要になる。安全審査のうち、設備の詳細設計をまとめた工事計画については11月をめどに申請する方針。
 基準地震動の想定では、設定に必要な震源断層の上端の深さをめぐり関電と規制委の意見が対立。関電は7月末の審査会合で規制委の要求を受け入れ、断層の上端深さがより浅い「3キロ」の設定に変更したため、従来の基準地震動よりも大きくなる見通しとなっていた。
 
 3号機の運転延長の認可申請を目指し、関電が5月から行っている特別点検については「現時点で点検結果に問題はない」としており、問題がなければ9~12月の申請期間内に延長申請する考え。 

2015年8月22日土曜日

川内原発1号機、出力上昇中に海水が混入

 再稼働した川内原発1号機九電は21日、発電機用タービン出口の復水器出口(2次冷却水に海水が混入した恐れがあるため、予定していた出力上昇を延期すると発表しました。
 復水器内には海水で冷却するための細管約2万6000本/台通っているのですが、そどれかに穴が開いたとみられています
 この事故は全国で過去に50回ほど起きていて、破損配管が分かれば菅板でその箇所を封止してから再起動するというのですが・・・
 
 因みに川内原発は運転開始から31年目に入っていて、つい先日規制委がロクな検討もしないままに40年運転への延長を認めたばかりです。
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川内原発 フル出力運転にも遅れ 出力上昇延期で 
毎日新聞 2015年08月21日
 ◇復水器に海水が混じり込むトラブル
 九州電力は21日、同日予定していた川内(せんだい)原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)の出力上昇を延期すると発表した。復水器に海水が混じり込むトラブルがあったためで、出力上昇の再開時期は未定。25日に予定していたフル出力運転や9月上旬からの営業運転は遅れる見通しだ。
 
 今月11日に再稼働後、1号機の工程がトラブルで遅れるのは初めて。1号機は2011年5月から長期停止しており、専門家の間でも設備の劣化から生じるトラブルを懸念する声があった。周辺環境への放射性物質の影響はないという。
 復水器は蒸気タービンで使った水蒸気を海水で冷却して水に戻す装置。九電によると、20日昼すぎ、復水器にたまった水を発電系統に送り出す復水ポンプの出口で、水の電気の流れやすさを計る機器の数値が上昇した。九電は復水器の機能の一部を停止したが、大半は正常なため、現在の出力75%で運転を継続するとしている。
 九電は発電系機器の腐食を防ぐため、海水が混じり込まないようにしているが、復水器の配管に小さな穴が開いていた可能性がある。今後、不具合箇所を特定できれば、海水が流れ出ないようにする措置を取るという。
 
 川内原発1号機は14日に発電と送電を開始した。通常は1週間程度でフル出力運転にするが、今回は慎重を期して11日間かける予定だった。九電は「引き続き安全確保を最優先に、一つ一つの工程を慎重に実施する」としている。【遠山和宏、寺田剛】
 
 
川内1号機、出力上昇を延期 2次冷却水に海水混入か-九電

時事通信 2015年8月21日
 九州電力は21日、再稼働した川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)について、2次冷却水に海水が混入した恐れがあるため、予定していた出力上昇を延期すると発表した。点検に少なくとも1週間程度かかる見込みで、25日に予定していたフル稼働は遅れる。
 
 九電は「3台ある復水器のうち、1台に微量の海水が混入していると推定されるが、除去できており運転継続に支障はない」と説明している。
 九電によると20日午後、2次冷却水を循環させる復水ポンプの出口で、水中の塩分濃度を監視する「電気伝導率」の数値が上昇した。発電タービンを回した後に2次冷却水を冷やす復水器内の水を調べたところ、実際に塩分濃度が上昇していた。
 復水器には、冷却用の海水を取り込む細管が1台当たり約2万6000本通っている。九電はこの中のいずれかに穴が開き、海水が復水器内に漏れたとみている。点検で漏えい箇所が見つかれば、その配管を封鎖する。
 同様のトラブルは全国で過去に50回ほど起きているといい、川内原発では初めて。九電では玄海原発1号機(佐賀県玄海町)で1997年、99年の2回あったという。
 川内1号機は11日、新規制基準に基づき全国の原発で初めて再稼働した。出力は16日に50%、19日に75%に到達し、21日に95%に上昇させる予定だった。
 

2015年8月21日金曜日

「川内原発再稼働」への12の疑問 (鈴木耕氏)

 フリー編集者&ライターの鈴木耕氏が、19日の「マガジン9」 風塵だよりに、「「川内原発再稼働への12の疑問」と題する記事を載せました。
 川内原発再稼動に関する問題点がとても分かりやすくまとめられています。
 
 書き出しのところでは安倍談話安保法制について触れていて面白いのですが、紙面の関係で割愛しました(URLで原文にアクセスして下さい)。
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「川内原発再稼働」への12の疑問
鈴木耕 「風塵だより」 2015年8月19日
( 「マガジン9」 掲載)     
     (前 略
 安保法制にも安倍談話にも、言いたいことはいっぱいあるけれど、今週は「原発」について、どうしても書いておかなければならない。
 川内原発再稼働という道に外れた政府・電力会社・原子力規制委員会、それに腐臭漂う原子力ムラの「命よりもカネ路線」についてだ。
 ちょうどお盆休みの真っただ中、しかも、安倍談話だとか安保法制だとか、世の中の目がさまざまにチラついている頃合(8月11日)を狙っての再稼働だ。冗談じゃない。いまさら…と思う方もおられるだろうが、この原発再稼働の問題点、疑問点をできる限り挙げておこう。
 
①火山対策
桜島が噴火警戒レベル4に引き上げられた。桜島から川内原発までの距離は約50キロ。もし破局的大噴火が発生した場合、その影響を受けないはずがない。火砕流などは免れたとしても、火山灰は数十センチも降り積もると予想される。もしそうなれば、換気口などの配管はひどいダメージを受ける。決して無視していいものではない。
むろん、鹿児島市など桜島周辺自治体の損害をいかに軽微にするかという対策がもっとも大事なことは言うまでもないが、再稼働に至った川内原発の備えも重大事であることは自明だ。
だが、九州電力は「桜島噴火に関しては、特段の備えをする予定はない」と平然としたもの。多くの火山学者が「いつどこで噴火が起きるかは、現在の火山学の水準では指摘できない」と言っているにもかかわらず、原子力規制委員会も「川内原発稼働中は近隣の火山で巨大噴火が起きる可能性は限りなく低い」として、火山対策を無視して新基準に適合との判断を下した。だが、口永良部島、諏訪之瀬島など火山噴火が続いた。火山学者たちが言うように「どこで噴火が起きるかは予測できない」のだ。
ほんとうに、川内原発は大丈夫なのだろうか。
 
②避難対策
立地自治体の鹿児島県と薩摩川内市は、過酷事故が起きた場合の一応の住民避難計画を立てたとしているが、少なくとも原発30キロ圏内では、老人施設や病院などの避難計画はほぼ机上の空論。報道によれば、事故の際に避難に使用される予定のバスの運転手たちの多くは「行きたくない」「拒否する」と語っているという。病人や老人、幼児施設や養護施設などの弱者は逃げ場を失うことになりかねない。
問題なのは、避難計画がなくても地元合意があれば再稼働できるという仕組みだ。新規制基準なるものには「避難計画の策定」が義務づけられていない。つまり、避難計画は自治体任せであり、政府も規制委も関与するつもりがない。こんなずさんな避難計画で、過酷事故に耐えられるのか。
 
③世界一厳しい規制基準
安倍首相は、口癖のように「世界一厳しい規制基準に合格した原発から、安全性を確かめながら順次再稼働していきます」と話す。いったい誰が、いつ、この新規制基準を「世界一厳しい」と認めたのか?IAEA(国際原子力機関)もNRC(米原子力規制委員会)もそんな認定をしたとは聞いたことがない。日本の規制委だって、そうは言っていない。
では誰が「世界一厳しい」と認めたのか。安倍首相が自分で言って、自分で納得しているだけではないか。安倍の自作自演、口先ひとつで再稼働されてはたまらない。何しろ「福島原発はアンダーコントロール」と歴史に残るほどの大ウソをついた前例を持つ首相なのだから。
なお、福井地裁は4月14日、この新規制基準について「合理性に欠ける」として、高浜原発の運転を禁じる仮処分を決定している。「世界一厳しい規制基準」が、司法によって一旦は否定されたのである。もっとも、その後の鹿児島地裁「不合理な点はない」として住民の訴えを却下した。上しか見ないヒラメ裁判官はどこにでもいる。
 
④責任の所在
規制委の田中委員長は「我々は、申請された原発が新規制基準に適合するかどうかの審査をするのが仕事であり、それに適合すれば安全だ、などと申し上げたことは一度もない」と繰り返している。「責任は規制委にはない」と最初から言い逃れの道を作っている。
一方、政府は③で指摘したように「世界一厳しい規制基準に合格した原発」と、規制委の判断に責任を負わせる姿勢
地元自治体は「政府の認めた再稼働だから」と口を濁す。
さらに事業主の九州電力は「一義的には事故の責任は私どもにあります」と言うが、ではどういう責任の取り方をするのかについては、明確な答えは何もないまま。
東京電力の凄惨な事故について、いったい誰が責任をとったか?東電も政府も官僚も原子力ムラの御用学者たちも、全員一致でその逃げ足の速いこと。誰ひとり責任など取らなかったではないか。ようやく検察審査会によって、東電の当時の幹部3人が強制起訴されたけれど、それまでは司法(検察)さえ、責任追及をしなかった。九電の言い分は信用できない。
つまり、責任回避の鬼ごっこ。もし過酷事故が起きたって、その責任の所在はまったく不明のままだ。
 
⑤過酷事故対策
事故時に溶けだした核燃料を最終的に受け止めて冷却する装置が「コアキャッチャー」と呼ばれるものだ。ヨーロッパ型では設置が義務づけられているし、中国の新しい原発にも設置されている。しかし、川内原発にはこれが設置されていない
さらに、事故の際に爆発を防ぐために、やむを得ず放射性物質を含む蒸気等を放出するフィルター付きベントも、まだ設置されていない。これは2年後をめどに完成させればいいと規制委が判断したからだという。
もうひとつ、福島事故で対策の最後の砦となったのが「免震重要棟」という施設だったことはよく知られている。しかし、これも川内原発にはない。九州電力によれば「2015年度中には完成させる。それまでは仮設の代替施設で対応する」とのことだが、実はまだ基礎工事さえ終わっていない
もし、フィルター付きベントや免震重要などが設置されないうちに事故が起きたらどうするのか。そんなことは「絶対に起きない」と、神でもない九電や規制委がなぜ言えるのか。それとも、九電や規制委はもはや「神の領域」に入ったのか?
 
⑥世論無視
最近の世論調査やアンケート結果では、国民の過半数が「川内原発再稼働に反対」しているのは一目瞭然だ。反対が5~6割、賛成が2~3割というのが平均的な数字だ。どんなマスメディアでも、これだけは一致している。にもかかわらず、政府はゴーサインを出した。日頃から「国民に丁寧な説明を」と言い続ける安倍政権だが、その白々しさには呆れかえるしかない。
 
⑦廃炉
福島原発の原子炉内部の調査は、まったく手つかず状態。デブリと呼ばれる溶け落ちた核燃料がどこにあるのかさえ、まるで分かっていない。国は「廃炉作業は30~40年」と言っているが、ほとんど不可能な数字だ。
例えばイギリスの原発(無事故で廃炉)は70年でも廃炉作業は完了しない、といっている。
日本でも、東海原発(16.6万kw、日本原電)は1998年に営業運転停止、廃炉作業を開始したが、17年後の今日でもまだ原子炉建屋の解体工事には至っておらず、原子炉本体の解体に取りかかれるのは2019年から(予定では2014年とされていたが、5年延長)とされていて、いつ終了するかは明らかではないが、数十年単位になることは間違いない。合計すれば、百年は超えるかもしれない。しかも、廃炉後の高レベル放射性廃棄物の処理や管理に関しては「数百年~万年単位」というだけである。
比較的小規模で、事故原発でなくてもこの工程である。100万kw級の原発の確実な廃炉工程表をまず示してから「再稼働」を論議すべきである。
 
⑧使用済み核燃料処理と費用
むろん、使用済み核燃料の処理方法や最終処分場は決定しておらず、現状でもあと数年~10年ほどで、原発敷地内の使用済み核燃料保管プールは限界を迎える。
最終処分場に関しては、政府はこれまでの公募方式を改め、政府が候補地を選んで指定、当該自治体に協力を要請することとしたが、各地では反対運動もおこり、まったく見通しは立っていない。
核燃サイクルの要である青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場は1993年に着工したものの不具合が多発し、これまでに22回もの稼働延期を繰り返し、運転開始などほとんど夢物語と化している。
工事費用は当初7600億円程度と見積もられていたものが、すでに2兆3000億円超の費用が投じられている。さらに電気事業連合会(電事連)が2003年に発表した数字では、最終的な費用は11兆円と見込まれている。これが12年前の試算なのだから、むろんもっと膨大な金額になっているのは当然。
同じことが、核燃サイクルのもうひとつの環「高速増殖炉もんじゅ」にも言える。「もんじゅ」もまた、何度稼働を延期してきたことだろう。死傷者も出しした「ナトリウム爆発事故」。そして数々の事故や不具合、数万カ所にも及ぶ機器の点検漏れの隠蔽。ほとんど「不祥事の殿堂」である。ここにもすでに1兆5千億円ほどの費用が使われ、さらに現在も毎日約5500万円の維持費がかかっているとされる。
これらの費用は、結局は我々消費者の電気代や税金から支出される。しかも、その費用を原発電力のコスト計算からは外しているのだから「原発電力は安価」という経産省や電力会社、御用学者たちの説明がいかにウソにまみれているかが分かるだろう。
それでも「核燃サイクル計画」をやめられない。あの新国立競技場問題と似ている。だが、新国立は白紙になった。核燃サイクルも、もはやこれ以上の資金投下は無駄である。白紙に戻すべきだ。誰も責任はとらないだろうけれど。
「核燃サイクル」計画が頓挫すれば、日本の「核政策」自体に大きな影響が出る。それが「再稼働」へ突き進む安倍政権の本音なのだろう。
 
⑨福島原発事故の教訓
福島原発はいまどうなっているか。原子炉内部は依然として高温、汚染状態。とても詳しい調査ができるような環境にない。高濃度汚染水は溜まり続け、敷地内の汚染水タンクはすでに1000基を超えた。まもなく限界に達する。
避難民はなお、福島県内と県外を併せて10万人を超える。とても生活が再建されたなどと言える状態ではないが、政府は強引に「ふるさと帰還」を呼びかける。住民が元の町村へ戻ることによって「事故収束」のムードを作りたいという政府の意図はミエミエだ。
東電と福島県は、次第に避難者への援助を打ち切る方針。これも「帰還圧力」の一環と見ていいだろう。
これらを含めて、川内原発再稼働は、まったく福島の教訓を生かそうという姿勢がない。もう一度、過酷事故が起きなければ目が覚めないのか。それとも、当事者たちは「自分が携わっている間に事故が起きなければそれでいい。後のことも、次世代のことも知っちゃいない」ということか。
 
⑩テロ対策
安倍首相は今年1月、中東へ出かけ、得意満面で「中東支援策として、人道援助、インフラ整備などに25億ドル(約3000億円)。そのうち2億ドル(約240億円)をIS(イスラム国)台頭に伴う難民支援などのために周辺諸国へ供与する」と発表した。我々の税金を、まるで自分のカネのようにばら撒く安倍外交にはほとほと愛想が尽きるけれど、それより問題なのは、この安倍外交が「日本へのテロ」を誘発しかねないことだ。
事実、このとき誘拐されていた日本人2人はその後、ISによって殺害された。直接の原因ではないにしろ、安倍発言がきっかけのひとつになったと考えてもおかしくはない。
実際、イラクで難民支援活動を行っている高遠菜穂子さんによれば「日本へのイメージは、確実に悪化しつつあります。NPOの難民支援活動でも、場所によっては、使用車両に掲げていた日の丸を外すようなこともあります。最近の安倍さんの安保法制の報道も、日本の平和国家イメージを壊しているかもしれません」とのことだった。
それらを考えた時、日本で、とくに原発を狙ったテロが起きないとは言えまい。日本の原発はすべて海岸沿いに立地している。もし狙うとしたら、これほど標的にしやすいものはない。
安倍首相は安保法制論議でしきりに「ホルムズ海峡に機雷が敷設された場合」という荒唐無稽な話を持ち出して、集団的自衛権使用の正当性を力説した。だがそれは、当のイランが対米交渉で軟化、さらにホルムズ海峡迂回パイプライン設置などで、あっさり消え去った。「安倍リクツ」の見事なまでの破綻。すると今度は、具体的に中国の名前を挙げて南シナ海の脅威などを言い出した。とにかく「仮想敵」が欲しくて仕方ない子ども。
だが、もし中国や北朝鮮を仮想敵国とするなら、日本海側にもずらりと並んだ原発を、どうやって攻撃から守るかが問われるだろう。
残念ながら、日本の原発に「テロ対策」はまったくといっていいほどなされていない。本気で「仮想敵国」と対峙するなら、まず全国民の命のかかわる原発への攻撃をどう防御するか。そのことなしに「原発再稼働」を言うのは、安倍自身の「仮想敵国論の破綻」を意味する。
いまベストセラーの『天空の蜂』(東野圭吾、講談社)は、原発を標的としたテロだ。また『東京ブラックアウト』(若杉冽、講談社)にも、原発に対するテロ攻撃が描かれている。『天空の蜂』はいまから20年前の著作だが、小説家の想像力を事実が後追いすることもあるのだ。
安倍首相の一連の政策は「平和国家日本」のイメージをかなりの程度、破壊した。テロが日本を狙う可能性は、以前に比べれば増したといっていい。原発がそれを無視していいわけはない。
 
⑪アメリカ・サンオノフレ原発の例
米カリフォルニア州の電力会社SCE(南カリフォルニア・エジソン)社が運営する「サンオノフレ原発」が2013年に廃炉を決定した。日本の三菱重工業が納入した「蒸気発生器」の配管に異常な摩耗があり、周辺に放射性物質を含む汚染水が漏れた
この事故を受け、再稼働への展望が開けないために、SCE社は廃炉にせざるを得ない、と結論。周辺住民の反対運動も激しく、さらにNRC(米原子力規制委員会)の「原因究明と操業の安全性が確保されるまでの稼働停止」との命令により、稼働断念に追い込まれたのだ。
SCE社は、三菱重工業に対し、総額9300億円にも上る損害賠償訴訟を起こすという。むろん、三菱側は争う姿勢だが、いずれにしてもそうとう巨額の損害賠償に応じざるを得ないだろう。
サンオノフレ原発の蒸気発生器は、2009年に設置されたばかりの比較的新しいものだという。それが事故を起こした。
ところで、川内原発は三菱重工業製だ。サンオノフレ原発と同じ「加圧水型」である。当然のことながら、機器には同じ仕様のものも使用されているといわれている。とすれば、サンオノフレと同じ事故は起きる可能性があるのではないか。
規制委は「機器の審査も新基準に適合した」としているが、果たしてサンオノフレの機器の不具合と照らし合わせた審査を行ったのだろうか
 
⑫損害賠償
福島原発事故を受け、被災者たちへの損害賠償はどうなったか。政府と福島県は被災者支援の打ち切りへ舵を切りつつある。「居住制限区域」と「避難指示解除準備区域」の指定を解除する方向である。つまり、この区域に居住していた人たちへの「精神的損害賠償」を、2018年までに打ち切ると決めたのだ。自主避難者に至っては、避難先の住宅提供も2017年3月には打ち切られる
人々を切り捨てることで、まるで、何もなかったかのように…。こんなことが許されるだろうか。
「原子力損害賠償法」という法律がある。これは1961年に制定されたホコリをかぶったような古い法律である。これがほとんど意味をなさないことは、福島事故で実証された。改正をしなければならないということで、ようやく議論が始まったのがなんと昨年のこと。
あまりに遅すぎる、という批判はさておき、もし原発再稼働をどうしてもするというのなら、最低限、この法律を多くの人たちが納得できるようなものに仕上げてからにすべきではないか
万が一、原発での過酷事故が不幸にしてもう一度起きた場合に、被災者をどう救済するかの備えは、絶対的に必要なはずだ。
こんな法律ひとつ改正することすらできなくて、よくもまあ「再稼働」なんていえるものだと、ぼくは呆れるのだ。
 
 とりあえず、思いつくままに列挙してみた。むろん、ここに漏れている危険な事項もたくさんある。これはあくまで、参考例である。すべてを解決してほしいと、心から思う。
 原発のことを考えただけでも、「アベ政治は許さない」と言い続けなければならない。