2020年10月3日土曜日

原発事故高裁判決 賠償基準の見直し急げ

 いわゆる生業訴訟に関する仙台高裁判決30日)は、国と東電の責任を認める厳しいもので国の「完敗」でした。判決は、原子力安全・保安院(当時)は長期評価に関し「不誠実な東電の報告を唯々諾々と受け入れ」るなど、国は規制当局に期待される役割を果たさなかったと痛烈に批判し、賠償については国が基準を定めた中間指針を超える範囲と金額を認めました。
 ここでの結論が係争中の他の訴訟において有効に作用することを望みます。
 ところで佐賀新聞はこれを取り上げた社説で、賠償の基準について、
「中間指針は賠償の最低限の目安として118月に策定されたものでその後被害状況などに応じ多少は見直されてきたものの、東電などの過失を前提にしていないこともあり、被災者らの間には金額が低すぎるとの声が根強くあり、裁判外の賠償手続きで東電が指針にこだわり、決着を拒む事例も相次いでいるとして、なお多くの人たちが事故前の生活を取り戻せないという実態を見据えた対応が求められる」としています。
 そもそも当初原陪審で定められたこの中間指針自体が東電寄りになっていて、弁護士会等がその改定を求めても門前払い(議題にも載らない)されてきたのが実態で、重要な指摘です。
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社説 原発事故高裁判決 賠償基準の見直し急げ
                          佐賀新聞 2020年10月2日
 東京電力福島第1原発事故を巡り福島県と、隣接する3県で被災した約3650人が国と東電に損害賠償などを求めた訴訟の控訴審判決で、仙台高裁は一審福島地裁判決に続いて国と東電の責任を認めた。とりわけ国には厳しい姿勢を取り、救済範囲を拡大。原告3550人に対し一審の倍となる計約10億1千万円を賠償するよう命じた。
 国の賠償責任の範囲について「二次的で東電の2分の1」とした一審を見直し、東電と同等と指摘するなど、国の「完敗」と言える。避難者らが国や東電に損害賠償を請求した集団訴訟は全国で約30件を数え、原告は1万人を超える。国を被告に含む13件の一審判決のうち7件は国の責任を認め、6件は否定した。

 判断が分かれる中、原告数で最大規模の訴訟において国の責任を明確に認める初の高裁判決が出たことによって、各地の訴訟に影響が及ぶことも考えられよう。高裁判決は原発事故を自然災害ではなく「人災」とする原告側の主張に沿う形で「規制当局に期待される役割を果たさなかった」と国を痛烈に批判した。
 これを重く受け止め、国は東電とともに被災者支援の拡充に一層力を注ぐべきだ。事故から9年半が経過した今も、風評被害や放射線への不安、なかなか進まない生活再建に悩む人は多い。早急に賠償基準の見直しなどに取り組む必要がある。

 仙台訴訟の争点は ▽原発を襲う大津波を予見できたか ▽対策工事で事故を防げたか ▽国の中間指針に基づく賠償額で十分か―など。これまで国の責任を否定した一連の一審判決はいずれも、国は津波発生を予見できたとする一方、実際の津波は想定を大きく上回る規模で事故を回避できた可能性は低いなどとした。
 今回の高裁判決は2002年に政府機関が公表した地震予測の「長期評価」は合理的根拠を有する科学的知見であり、これを基に試算すれば10メートルを超える津波の到来を予見できたとし、東電の対応に言及。「新たな防災対策を極力回避し、先延ばしにしたいとの思惑が目立つ」と指摘した。
 原発の安全を確保するため東電を規制する立場にある国については、原子力安全・保安院が長期評価に関し、「不誠実な東電の報告を唯々諾々と受け入れ、規制当局に期待される役割を果たさなかった」と批判。防潮堤を整備しても津波を防ぎきれなかったとの国の主張を退け「国の規制権限の不行使は著しく合理性を欠き、違法」とした。
 また国と東電が長期評価を基に試算が行われれば対策を講じなければならなくなり、主に東電の経済的負担を恐れ、試算自体を避けようとしたとも述べ、一審で東電の半分とされた国の賠償責任を同等に引き上げた。その上で、空間放射線量を事故前の水準に戻す請求は退けたものの、賠償については国が基準を定めた中間指針を超える範囲と金額を認めた。

 指針は賠償の最低限の目安として11年8月に策定され、被害状況などに応じ見直されてきた。とはいえ、東電などの過失を前提にしていないこともあり、被災者らの間には金額が低すぎるとの声が根強くある。裁判外の賠償手続きで東電が指針にこだわり、決着を拒む事例も相次いでいる。
 なお多くの人たちが事故前の生活を取り戻せないという実態を見据えた対応が求められよう。(共同通信・堤秀司)