福島県農民連は27日、原発事故による農産物被害への賠償をめぐり、個別に請求した農業者への賠償が、農協などを通じて請求した人より低く抑えられていた問題で、政府、東京電力と交渉しました。
日本ナシ、ブドウなどで、農民連の支援を受けるなど個別に請求した人の場合、農協などを通じて請求した人に比べ、指数に2倍以上の開きや、賠償額が10倍近い差が生じました。
東電側は誤りを認め農家には差額をさかのぼって支払うことを約束しました。
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不公正な賠償ただせ 農産物被害で交渉 福島県農民連が東電、政府と
しんぶん赤旗 2021年9月28日
福島県農民連は27日、東京電力福島第1原発事故による農産物被害への賠償をめぐり、個別に請求した農業者への賠償が、農協などを通じて請求した人より低く抑えられていた問題で、政府、東京電力と交渉しました。
この問題は、農民連の指摘で発覚。参加者は「まったく不公平、不正なやり方だ」とし、社会への公表、差額支払い、対象者へ周知などを求めました。
農産物被害の賠償について東電は、2019年度以降、卸売市場での価格をもとに「全国平均価格変動指数」を決め、事故前の単価に同指数をかけた「基準単価」と請求対象月の実際の単価との差額に、販売数量をかけて賠償額を算出しています。
今回、農民連の指摘で、日本ナシ、ブドウなどで、農民連の支援を受けるなど個別に請求した人の場合、農協などを通じて請求した人に比べ、指数に2倍以上の開きが生じています。
東京の参院議員会館とオンラインで、根本敬会長、佐々木健洋事務局長、ナシ生産者の阿部哲也さんらが参加。
根本会長は「事故から10年たつなか、ずっと公正な賠償を求めてきた。なぜこうなったのか明らかにするべきだ」と述べ、阿部さんは「過程もわからないやり方で加害者が計算している。不条理だ」と批判。参加者からは「このやり方を決裁したのは誰か」などの声が上がりました。
東電福島原子力補償相談室中央・団体相談グループの平澤朋部長は「誤りだった」としたものの、「指数」について誰が決めたのかは回答を拒否。一方、経済産業省担当者は「農民連の今回の申し入れ書を見て初めて知った」と答えました。
日本共産党の紙智子、岩渕友の両参院議員が同席。紙氏は「ここまでの経過と責任を明らかにするべきだ」と指摘し、岩渕氏は「この事態を招いた国の監督責任は重大だ」と述べました。
原発事故の果樹賠償、東電がルールよりも少額提示 10倍差も
毎日新聞 2021/9/28
東京電力福島第1原発事故に伴う風評被害に対する賠償で、個人で請求した果樹農家に対し、東電が事前に決めたルールより少ない額を提示していたことが明らかになった。賠償額に10倍近い差が出たケースもあり、福島県農民連は27日、国・東電とオンラインで交渉し、「記者会見して説明を」などと訴えた。【高橋隆輔】
東電は、2019年に果樹の一部について賠償の仕組みを変更。事故前5年の平均に、その年の全国的な価格変動を係数にして掛け合わせて基準価格を設定し、実際の販売価格との差額を被害と認定することにしていた。
この際、取引量の少ない月は正確な係数を計算できないため、調整しない取り決めだったが、個人請求した農家には、取引量の多い時期も調整しない月があった。基準価格が低くなったため実際の販売価格との差額も小さくなり、結果的に賠償額も抑えられた。
東電によると、半分以下や2倍以上など極端な係数になる場合は不正確と判断し、市場価格が跳ね上がった月も調整しなかったという。一方で、農協を通じた団体請求者には調整をしており、賠償額に10倍近い格差が生じたケースもあった。
この日の交渉で、農民連側は、団体交渉との間で格差が生じている点を追及した。東電側は「2倍を超えて相場が上がることに備えがなかった」と陳謝。故意性は否定し、農家には差額をさかのぼって支払うことを約束した。一方で、「各団体の個別の交渉への言及は控える」として、団体請求と対応が違う理由は説明しなかった。
農民連側からは不信感をあらわにする声が続出した。交渉後、根本敬会長は「東電は少数者をないがしろにしている。被害はきっちり賠償させる機運を高めたい」と話していた。