2021年9月17日金曜日

「原発」立場の違い鮮明 核燃料サイクルと新増設で 自民総裁選候補

 自民党総裁選で原発政策が大きな争点の一つになっています。「脱原発」が持論の河野は原発再稼働を容認しましたが、「核燃料サイクル」には否定的な考えを明確にしました。総額が約144兆円もかかるのに、近海を含めた外界を極度に放射能で汚染させるだけで何一つメリットがない核燃料サイクルを止めるのは余りにも当然のことですが、それでも自民党内では大騒ぎになるとは、自民党が原子力ムラの牙城であることを示しています。
 岸田氏と高市氏は原発賛成を明らかにしていますが、野田氏はHPで「原発事故を起こした国として、持続可能なエネルギー需給モデルの実現」を訴えているということです。
 西日本新聞が報じました。
           ~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「原発」立場の違い鮮明 核燃料サイクル、新増設…総裁戦の論戦注目
                           西日本新聞 2021/9/17
自民党総裁選で、原発政策が大きな争点の一つになっている。「脱原発」が持論の河野太郎行政改革担当相は原発再稼働を容認したが、使用済み核燃料を再利用する「核燃料サイクル」には否定的な考えを明確にした。原発推進派が多い自民党内や経済界に警戒感が広がる中、岸田文雄前政調会長と高市早苗前総務相は立場の違いを鮮明にする。
「河野氏は原子力について現実路線に転換したと言われるが、将来的にはゼロにするという考え方で、核燃料サイクルも否定している」。15日、自民党の原発リプレース(建て替え)を推進する議員連盟が急きょ開いた会合。あいさつに立った会長の稲田朋美元防衛相は、こう語気を強めた。
会合では、核燃料サイクルの堅持や原発リプレースを求める提言を、総裁選の各候補者に申し入れることを決議した。議連のメンバーは約60人に上り、総裁選の候補者に原発推進の政策を迫る思惑がある。出席した議員の一人は「原子力問題は一大争点だ」と語る。
稲田氏が名指しで批判した河野氏は「脱原発派」で知られる。東京電力福島第1原発事故後の2012年、超党派の議員連盟「原発ゼロの会」を立ち上げた。原発を重視する政府の姿勢に批判を繰り返してきた。
自民党内だけでなく産業界や電力業界も注目する中で開かれた10日の出馬会見。河野氏は「安全が確認された原発を当面は再稼働していくのが現実的」と述べ、再稼働を容認した。政権運営を不安視する声を和らげようと、現実路線にかじを切ったとの見方が広がった。しかし、河野氏は翌日、原発政策の重要な柱である核燃料サイクルを見直すことを明言した。
核燃料サイクルは、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出し、再び原発の燃料に利用する政策。日本原燃の再処理工場(青森県六ケ所村)の建設計画は、相次ぐトラブルで大幅に遅れている。再処理の総事業費は、約14・4兆円に膨らむ見通しだ。
河野氏は8月に発売した新著で、巨額の費用や安全性などの課題を挙げ「これ以上、再処理をして余剰なプルトニウムを取り出す必要がないことは明らか」と主張している。
一方、河野氏と対照的なのが岸田氏だ。8日の記者会見で、原発は二酸化炭素(CO2)を排出しない電源として、脱炭素社会の実現に向け「一つの選択肢として考えなければならない」と述べた。核燃料サイクルについても「維持しなければならない」と明言した。
高市氏も「原子力の平和利用は必要」との立場だ。核燃料サイクルについてこれまで言及していないが、9月に発売した新著で、小型炉や核融合炉など新型炉の開発推進を訴えている。
16日に立候補を表明した野田聖子幹事長代行は原発政策についてまだ言及していないが、自身のホームページで「原発事故を起こした国として、持続可能なエネルギー需給モデルの実現」を訴えている。
菅義偉首相は、50年の温室効果ガス排出実質ゼロを宣言し、エネルギー政策を大転換させた。中長期の政策方針を示す「エネルギー基本計画」の改定案は、10月に発足する新政権が閣議決定する見通しだ。脱炭素社会の実現が大きな課題となる中、原発を含めたエネルギー政策に正面から向き合う論争が求められる。 (石田剛)