東電が22日、柏崎刈羽原発でテロ対策・核物質防護不備問題などについての報告書を規制委に提出した件で、東京新聞が問題点を要約した記事を出しました。
柏崎刈羽原発の再稼働に向けた対策工事に前のめりとなったことで、テロ対策への金と人の投入がおろそかになったというのはその通りで、侵入検知装置の復旧に300日も掛かったというのは要するに優先順序を低くしたという意味と思われます。
保守管理の委託費を削減したのは、総括原価方式のために原価削減意識が希薄になっている電力会社としては画期的なことでしたが、委託会社の反対を押し切って人員を半減して結果的にうまくいかなかくなったのは、長年保守管理を委託していたために東電が作業の総量を正確に把握できなくなったためと思われます。装置類のリース制を止めて、購入することで経費を節減をするという発想自体は評価されるべきでしょう。
「社員は内部脅威になり得ない」は理解しにくい表現ですが、社員であれば通行証不携帯でも例外的にOKとしたことを指しているものと思われます。
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東電の社内改革遠く 柏崎刈羽原発テロ対策で内外の指摘軽視…調査で浮かぶ組織のずさんさ
東京新聞 2021年9月23日
東京電力が福島第一原発事故後の経営再建の柱として再稼働を目指す柏崎刈羽原発(新潟県)と本社の原子力部門は、経営見直しを進める中で危機意識が薄れ、自浄能力を失った。東電が22日公表したテロ対策不備の原因を分析した報告書からは、内外の指摘を軽視し、トップに情報が伝わらない組織のずさんさが浮かぶ。(小川慎一、小野沢健太)
◆原子力部門の膿、想像以上
「他(福島第一、第二原発)でできたことが、なぜ柏崎刈羽でできなかったのか。組織の風通しの悪さは気になるところです」
東電の小林喜光会長=前三菱ケミカルホールディングス会長=は22日の記者会見で、厳しい表情を見せた。テロ対策不備の調査まっただ中の今年6月に就任して改革の必要性を強調してきたが、原子力部門の膿うみは想像以上だった。
発端は、2011年3月の福島原発事故だった。全原発の運転ができず、事故収束費用と被災者への賠償が重くのし掛かり、経営が悪化。その一方で柏崎刈羽6、7号機の再稼働に向けた事故対策工事に前のめりとなったことで、テロ対策への金と人の投入がおろそかになっていく。
◆経営再建の名でおろそかになったもの
報告書によると、福島事故直後、東電はテロ対策設備の保守管理を委託していた日本原子力防護システム(東京)との契約見直しを進めた。事故前は、外部からの侵入検知装置を新しくする費用も含めた契約だったが、これを止めたことで装置の老朽化が進んだ。
装置のリース契約も解除し、16年以降は東電自らによる装置の設置や保守管理に切り替えた。15年度に約13億円だったリース料は、20年度に約1.3億円と十分の一に減った。
費用削減のあおりで、装置の故障が増えていく。福島第一、第二原発よりも5~8年古いためだ。東電側は「故障しても(カメラなどによる)代替措置を取っていれば問題ない」と考え、19年度からは原発内に常駐する委託会社の社員も6人から3人に半減した。
「保守管理がうまくいかなくなる」と委託会社は繰り返し懸念を示したが、東電は応じなかったという。その後、20年3月~21年2月に装置が16カ所で故障。うち10カ所は代わりの措置も不十分だったと原子力規制委員会に指摘される事態となり、一部は復旧に300日以上かかった。
◆実態、幹部に共有されず
「契約変更の実態が発電所幹部に共有されなかった。さまざまな指摘があったのにもかかわらず、生かせなかったことに驚いた」と、小林会長はうつむいた。
原子力部門には、内外の指摘を軽視する姿勢があった。17、18年度の内部監査では、故障した検知装置の復旧に長時間かかっていることが指摘されたが、是正につながらなかった。
規制委事務局の原子力規制庁や他の電力会社との定期的な意見交換では、テロ対策設備の保守管理について経営層が注意を払うように指摘が続いたが、発電所長や本社の原子力部門トップに報告されなかった。
「社員は内部脅威になり得ない」ー。社員らがそう思い込んでいたことが危機管理のずさんさにつながった、と報告書は強調する。
◆「資格ないとの烙印押される」
東電は今後、原子力部門の本社機能を東京から新潟に移し、他社からの人材登用も検討する。人や金の投入を惜しまないという。
「是正措置をやり遂げなければ、原子力事業をやる資格がないとの烙印を押されるととらえ、最後の機会を与えられたものとして取り組む」。小林会長は決意を語ったが、いばらの道が続く。