福島第一原発で最近、汚染水の浄化設備や廃棄物保管のずさんな管理が相次いで明らかになっています。過去のトラブル情報を社内で共有せず、場当たり的な対応をしてきた結果で、事故から10年半が過ぎても繰り返し姿勢の甘さを露呈しました。
東京新聞が取り上げました。
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福島第一原発、ずさん管理相次ぐ 東電の危機意識に被災者は不信感
東京新聞 2021年9月20日
東京電力福島第一原発(福島県大熊町、双葉町)で最近、汚染水の浄化設備や廃棄物保管のずさんな管理が相次いで明らかになっている。過去のトラブル情報を社内で共有せず、場当たり的な対応をしてきた結果だ。事故から10年半が過ぎても繰り返し姿勢の甘さを露呈する東電に、被災者は不信感を募らせる。(小野沢健太)
◆汚染水の浄化設備でフィルターに穴
「明らかに設計上の問題がある。自発的に説明がなかったことは遺憾だ」。事故収束作業を議論する13日の原子力規制委員会の検討会で、規制委事務局の原子力規制庁の安井正也特別国際交渉官は強い口調で東電を批判した。
東電は8月末以降、汚染水を浄化処理する多核種除去設備(ALPS=アルプス)で排気中の放射性物質を吸着するフィルター全25基のうち24基に穴が開いたことを確認したと規制委に報告した。だが、2年前に全基が損傷した際に原因を調べていなかったことについてはこの日、安井氏に聞かれるまで説明しなかった。
なぜ2年前に対策を怠ったのか。東電の担当者は「設備内の放射能濃度に変化がなかったので、そのままにしてしまった」と弁解。不具合情報はトップまで伝わらず、小野明・福島第一廃炉推進カンパニー最高責任者は「2年前の全損は報告がなく、びっくりした。今回の損傷は防げたはずだ」と釈明した。
◆放射性廃棄物は計画地外に放置
「問題の根本には東電の姿勢がある」。この日の検討会では、東電によるずさんな放射性廃棄物の保管状況も判明。規制委の伴信彦委員は憤りの声を上げた。
規制庁によると、東電は今年1月以降、作業で出たコンクリートや金属など大量のがれきのほとんどを、計画で定めた敷地内の場所に搬入していない。その代わり、敷地内に180カ所も点在する仮設集積場所に置くようになった。
仮設集積場所はパトロールが3カ月に1回と、計画地の週1回に比べて管理が緩い。廃棄物入りのコンテナが山積みの場所もあるが、東電は毎月公表するがれき保管量に計上せず、全体量は「不明」としている。
仮設集積の保管が増えているのはなぜか。東電によると、本来の計画地について斜面などを考慮せずに保管容量を定めた結果、当初の想定よりコンテナを置ける場所が少なかった。敷地造成やコンテナの並びを変えて容量を確保する必要が生じ、1月から計画地の多くが使えなくなった。
◆計画の破綻を認める
さらに計画地整備は、同じく廃棄物管理のずさんさが招いた事故で停滞した。長期間損傷が見過ごされていたコンテナで3月、放射性物質を含む水漏れがあり、コンテナ約5300基の総点検に余分な人手がかかった。
東電は仮設集積を減らす計画を示したが、前規制庁長官の安井氏は「そもそもがれきの発生量に対して計画の収容量が足りない。短期的に対処できる話ではない」と一蹴。東電の小野氏は「経営層が気づかなかった。抜本的に考え直す」と計画の破綻を認めた。
東電は2023年春以降、汚染水を浄化処理した後の水の海洋放出を目指す。放出に反対する漁業関係者など地元の理解を得られるかが最大の焦点だが、今年2月の福島第一での地震対応や柏崎刈羽原発(新潟県)のテロ対策不備など不手際が相次ぎ、改善の兆しはみえない。
検討会に参加した双葉町復興推進協議会の田中清一郎理事長は嘆いた。「大事な時期なのに大変残念。東電社員の危機管理意識がまだまだ浸透していないと、地元住民は思うだろう」