南日本新聞が、日本原電が、敦賀原発2号機の審査資料を不適切に書き換えた問題の本質を論じる社説を出しました。
原発直下の活断層の有無に関する技術検討文書を、「科学的作法にのっとらず」に書き換えてしまうのは言語道断です。
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社説 敦賀原発審査 中断は不信感の表れだ
南日本新聞 2021/ 9/3
日本原子力発電が、敦賀原発2号機(福井県)の審査資料を不適切に書き換えた問題で、原子力規制委員会は再稼働の前提となる審査の中断を決めた。原電の体制改善が確認できるまで再開しない方針だ。
無断で書き換えられたのは、原子炉建屋直下の断層に関わる重要な部分で、再稼働の可否に直結する。審査の中断は規制委の原電への不信感の表れであり、適切な判断といえよう。
原電は書き換えの目的や経緯を明らかにするとともに、データを隠さず提示し、真摯(しんし)に審査に臨むべきだ。
東京電力福島第1原発の事故を踏まえた新規制基準は、活断層の上に重要施設を建てることを禁じている。敦賀2号機を巡っては、原子炉建屋直下に延びる断層が活断層と認められれば廃炉を迫られる。規制委は、将来の活動が否定できないという有識者調査団の評価書を了承しており、原電は審査で反論しようとしていた。
2020年2月に規制委の指摘で発覚した書き換えは、敷地の掘削調査試料を分析した「ボーリング柱状図」の記述で計25カ所に上る。このうち、18カ所が原子炉建屋直下の断層の活動性を判断する上で重要な地点に関するものに集中。いずれも、最近活動した可能性が疑われる「未固結」から、活動を否定する参考となる「固結」などに変わっていた。
原電は「記載を充実させるため、肉眼の観察結果を顕微鏡によるものに変更した」と意図的な改ざんを否定する。だが、勝手にデータを上書きすることは、自分たちに都合のいい結論に導くため、と思われても仕方あるまい。更田豊志規制委委員長の「科学的作法にのっとってもらわないと話にならない」との批判は当然だ。
審査は問題発覚後に中断したが原電が生データを示したことで20年10月に再開を決めた。だが今年7月、書き換えの経緯などを調べる規制委事務局が原電の業務管理に問題があったと中間報告し、あらためて中断を検討していた。
原電の社内調査によると、書き換え方針は審査担当グループと地質調査会社の打ち合わせで決定。方針を上司と共有しないままに審査資料を作成していた。企業統治の在り方にも大きな問題があると言わざるを得ない。
原電の行為は、過去の規制委の審査に対しても、疑念を生じさせかねない。
書き換えを行ったグループは、18年9月に審査に合格した原電の東海第2原発(茨城県)の資料も作成していたという。更田氏は「今の時点で判断に疑いを持つ状況にはなっていない」と述べるが、再点検も必要ではないか。
国民の信頼が得られなければ原発に携わる資格はないことを、原電は肝に銘じてもらいたい。