一時全町避難した福島県楢葉町は、15年9月5日の避難指示解除から6年を迎えます。
町内居住者は町人口全体の61%に達しましたが、このところ若い世代の帰還が、年間の約100人と頭打ちの状況にあるため、これを打開するため、今後、移住・定住の促進や農業再生に向けてサツマイモの産地化や干し芋、パウダー化などの商品開発を進めます。同時に、短期間の移住生活を体験できる食事付きシェアハウスや、移住者と地域住民が交流する拠点施設などを整備し、移住促進につなげます。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
楢葉町内居住は人口の6割 避難解除6年、サツマイモ産地化推進
福島民友 2021年9月4日
東京電力福島第1原発事故で一時全町避難した楢葉町は5日、2015(平成27)年9月5日の避難指示解除から6年を迎える。町内居住者は2137世帯、4131人(7月31日現在)で、避難者を含めた町人口全体に占める割合は61.26%に戻った。町は今後、移住・定住の促進や農業再生に向けてサツマイモの産地化を進める。
町内居住者は避難指示解除直後の321人から10倍以上となった。一方で、若い世代の帰還の動きは鈍く、この1年間の増加数は約100人と頭打ちの状況にある。
町は、本年度スタートさせた今後10年間の施策の最上位計画「第6次町勢振興計画」で移住施策を重視し、年間80人強の移住者を呼び込む目標を掲げる。短期間の移住生活を体験できる食事付きシェアハウスや、移住者と地域住民が交流する拠点施設などを整備し、移住促進につなげる。
町が農業再生に向け、新たな主力作物に位置付けるサツマイモの作付面積は本年度で約45ヘクタールとなった。生産を開始した17年度の1.5ヘクタールから順調に作付面積を拡大している。「干しイモなど加工品の人気が高い」として今後、サツマイモを使ったペーストやパウダーなどの商品開発を進める方針だ。
松本町長、ハード面の復興ほぼ完了
松本幸英町長に町の現状と課題、まちづくりの展望などを聞いた。
―復興の現状は。
「商業と医療、交流施設などを集積した復興拠点の整備などハード面の復興事業はほぼ完了した。今後は新しく整備した施設や既存の観光施設などを生かし、交流人口の拡大につながるよう魅力あるソフト事業に重点的に取り組む」
―課題となっている人口の回復にどう取り組むか。
「町内で暮らす住民は人口の約6割となったが、帰還する住民の増加数は頭打ちの状況だ。楢葉町のファンを増やし移住・定住を促進したい。移住生活を体験できるシェアハウスや移住後に住民と交流できる拠点施設の整備を進める」
―サツマイモの産地化に向けた展望は。
「干しイモや菓子などサツマイモの加工品の人気が根強い。日本のサツマイモのおいしさは海外でも高く評価されている。本年度の作付面積は45ヘクタールに拡大した。今後も収量と品質の向上、生産コストの低減で産地化を進める。パウダーやペーストなど6次化商品の開発にも取り組む」
―重点施策のスポーツ振興の取り組み状況は。
「スポーツ合宿の誘致を進めており、この1年間で延べ約2600人が合宿で訪れた。Jヴィレッジでインターハイ(高校総体)サッカー男子など全国規模の大会の開催が予定されている。受け入れ環境を整備し、近隣の市町村と連携しながら浜通りが『合宿の聖地』となるよう力を注ぐ」