2019年4月29日月曜日

「対テロ施設」未完の原発 規制委の停止判断は当然

 24日に原子力規制委が「対テロ施設が期限までに間に合わない原発は、その時点で停止させる」と決めたことを受けて、各紙は一斉に規制委の判断を当然とする社説を掲げました。    (4月25日)対テロ施設未完の原発は停止 規制委 期限延長認めず
 
 各紙のタイトルは例えば下記の通りです。
 25日
原発のテロ対策遅れ 安全に猶予は認められぬ(毎日新聞)
原発テロ 対策規制委の判断は当然だ(南日本新聞)
原発テロ対策 期限延長却下は当然だ(北海道新聞)
 26日
原発テロ対策/危機意識が甘すぎないか(神戸新聞)
原発テロ対策  規制委は厳格さを貫け(京都新聞)
原発テロ対策 安全軽視を繰り返すのか(信濃毎日新聞)
原発テロ対策 問われる危機意識の欠如(新潟日報)
原発テロ対策/電力会社の甘えは許されぬ(河北新報)
 27日
原発テロ対策 安全に甘えは許されない(熊本日日新聞)
不適合 原発 規制委の停止判断は当然(西日本新聞)
原発のテロ対策 規制委の存在も問われる(高知新聞)
原発のテロ対策施設 安全の要 拙速では済まぬ(福井新聞)
 
 業界では、「伊方原発3号機の運転差し止めを命じた17年12月の広島高裁決定以降、原子力規制委はより厳しくなったといわれているようです。
 高裁決定では、「伊方原発3号機が新規制基準に適合するとした原子力規制委の判断は『不合理』である」と指摘しました。同仮処分は期限付きでその後事実上取り消されましたが、原子力規制委は存在意義を問われたわけです。
 動機は何であれ「不適合な原発」に厳しく対処するのは当然のことです。
 
 西日本新聞の社説を紹介します。
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「不適合」原発 規制委の停止判断は当然
西日本新聞 2019年4月27日

原子力発電所の新規制基準は東京電力福島第1原発事故のような過酷事故を二度と繰り返さないために設けられた。その原点に立ち返れば、原子力規制委員会が下した判断は当然だ。
規制委は、原発への設置が遅れているテロ対策施設「特定重大事故等対処施設(特重施設)」について、事業者側が求めた経過措置期間の延長を認めず、5年の設置期限内に完成しなければ「基準不適合」として運転を停止させることを決めた
 
新規制基準下で最も早く再稼働した九州電力の川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)は来年3月に、2号機は来年5月に設置期限を迎えるが、特重施設の完成は1年程度遅れる見込みという。期限後は完成検査が終わるまで運転できない。運転中の関西電力と四国電力の3原発5基も期限内に工事が終わらず順次、運転停止となる。玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)も同様に期限に間に合わず運転を停止させられる見通しだ。
 
特重施設は大型航空機を衝突させるようなテロ攻撃に備える拠点だ。その性格上、詳細は公表されてないが、中央制御室に代わる第2制御室のほか、炉心損傷など重大事故が起きた際に放射性物質の外部放出を抑制するためのフィルター付きベント設備などが含まれる。「世界一厳しい」と政府が強調する新規制基準で義務付けられた。
特重施設がないまま再稼働が認められたのは、規制の適用を猶予されたためだ。当初の期限は「新規制基準施行から5年」の2018年7月だったが、審査の長期化を受け、各原発での再稼働の主要審査終了を起点とする「本体の工事計画認可から5年」に延長された経緯がある。
 
事業者にとっては、想定外の急展開だったかもしれない。
九電の原子力発電本部長など電力5社の原子力部門の責任者が顔をそろえ、施設の完成が「遅れる」と規制委に伝えたのは17日の意見交換会の場だ。特重施設の審査に時間がかかり、工事も大規模になったと訴え、期限延長などの対応を検討してもらう腹づもりだったようだ。
 
確かに期限が来たからといって、直ちに原発の安全性が損なわれるわけではない。しかし、期限が迫ってから突然、「実は間に合いません」と言って、何とかしてもらえると思っていたのなら論外だ。更田豊志委員長が「工事の見通しが甘かっただけでなく、規制当局の出方に対しても甘かった」と苦言を呈したのはもっともだ
 
新規制基準を守らず、原発の安全性向上にきちんと向き合わない事業者に、原発を運転する資格はない。このことを肝に銘じるべきだ。